先ほど惚れかけた学校の先輩の美少女が、実は生き別れの実姉だなんて、誰得展開ありですか?
短くなってしまいましたが投稿します
「この子。生き別れの実姉で紫陽の学校の先輩。中鉢日葵さんよ。」
......は?
母の言葉に僕は絶句した。
まさか?ラブコメ展開的な、そのヒロインってやつを期待してたのに結婚してはダメな存在、ましてや恋していい相手じゃないじゃないですか、なんですかそれ、流石にアニメ展開とは言ってもこれは良くないんじゃないですか?。
目の前にある美しい顔、ヤダボクハアキラメナイ。アキラメナイゾ。
「紫陽?どうしたの?」
母が僕が頭おかしくなったのじゃないかと心配してくる。そりゃそうだ。僕は気が付かなかったがSNSにあげれば100いいねをもらえるくらいの変顔をしてしまっていたのだから。
母も、実姉とかいうやつも半笑いで僕を見てくる。当時の僕は自分の顔が見えてるわけでもないので単にその馬鹿にしたような顔に苛立ちを覚え心の中で盛大に悪態をついていた。流石に知らない人の前で態度に出すのもどうかなって感じなので仕方なく我慢してやった、偉いだろ。......じゃないじゃない。
こうして、僕の初恋は打ち砕かれ、僕は不幸せな人生を送るのでした。
ーーーーーーーーーーー完ーーーーーーーーーーーー
まあ、そんな都合よく終わるような物語ではないんだけど。
「紫陽大丈夫?頭馬鹿になってるんじゃない?」
母親の口から心配に見せかけた悪口がとんでくる。
「紫陽くんどうしちゃったんだろ?」
日葵さんはこちらを見てにやにやしてくる。何もかも見透かしたような目で。
なんかすごく敗北した感じだ。悔しい。
口をぶっと膨らませてみたが笑顔でよしよししてくる2人、ガキ扱い、許せない。母親に関してはマジで許せない。日葵さんは、ちょっと、得した気分。
ちょっとの間大人しくしていると、母親が思い出したように言った。
「そういえば、日葵ちゃんは今日から隣の部屋で暮らすのよね。」
日葵さんは少し驚いたような顔をした。
「そうですね......。でもまず私たちの関係とか、そんな話をすると思ってたんですけど。」
母は少々暗い顔をした。
「まあ、それはそうだろうけど。さ。そういう話はゆくゆくで良いんじゃない?どんな関係って、姉と弟。それだけなんだから。」
うちは母子家庭で父がいない。どんな理由で父がいないとしても、母にとってはあまり思い出したくない過去なのだろう。これ以上この話を続けるのは良くない。そう僕達は悟った。
「じゃ、じゃあ。その。私はとりあえず家に帰りますね。」
日葵さんが話を切り出すと母は驚いた顔をした。
「あら、そうなの?うちでご飯食べていけば良いのに。もう結構良い時間よ?」
そう言われ僕達は時計の方に振り返る。時計の短針は7をさしていた。
「美味しいです!母親の味っ!て感じで。」
結局日葵さんは僕の家でご飯を食べることになり、3人で夜に、ラーメンを食べていた。それもテーブルにのっているのは激辛ラーメンと辣油とレモンソーダのみ。うちの母親は常人とかなり感覚が離れているので
辛いものや酸っぱいものがとにかく美味しいらしくいっつもばっか食べしている。
その激辛ラーメンに日葵さんはがっついている......。
2人でずるずると麺をすすっている姿にようやっと親娘を感じた。やはり日葵さんは実姉なんだな、と。
僕自身には全然似ていないのだけれど母親は元モデルであり、友達によく、美人だと言われている。それを考えると確かに、彼女の子供だと言われても不思議がない。
にしてもなんでそんなに激辛を食べられるのだろう。今世紀最大の謎だろ?
「嬉しいわ。紫陽は全然食べてくれないから日葵ちゃんが美味しそうに食べてくれて凄く元気になったわ。」
まあ、だって辛いんだもの。
「それはよかったです。それにしても紫陽くん。食わず嫌いはダメだよぅ。」
彼女はレンゲに乗せたスープをこちらに向けてくる。
「えっ......とこれはどういうことですか?」
彼女はさらにこちらに向けてくる。
「あーんっ。どーぞ。」
されるがままに口を開いてしまった。だってほんと可愛すぎる。これが実姉ってふざけんな、いっそ殺してくれ。
......なんかいつもより美味しく感じる。日葵さんのおかげかな。スープの中に混ざるなんらかの物体が舌に当たった。なんだこれ。
舌に当てているとどんどんと舌が熱くなる、......っ。何これ、こんなの食べたことないんですけど。
「「紫陽!今すぐ吐き出して!」」
日葵さんと母が真面目にそう言ってくる。どうしたんだ君たち別にそんな日葵さんのあーんを吐き出せるわけないだろう?
「口、唐辛子入ってる。」
......あ。
舌にのっている物体の正体にやっと気づく。
このヒリヒリとしたものは唐辛子。らしい。
理解した瞬間更なる痛みが舌を襲い、僕は吐き出した。とにかく氷水を口に入れ必死に口を冷やし、落ち着かせてやっと息を飲んだ。いや痛ったまじ生きた心地しないわ。日葵さんと母は本気で心配してくれていたようだったが僕がやっと落ち着くと爆笑し始めた。
「おねーちゃんのあーんだからって普段はおにぎりとか自由に食べてんのに珍しいもの食べるからそうなるんだよ。」
「ほんっと紫陽くん面白いなぁ。」
にこにこ見てくる彼女達に、僕はついに苛立ちを覚えた。
翌朝7時、まだ寝たがっている重い体をなんとか起こす。
昨日はつい遅くまで起きてしまった。夜母以外の人と話す機会が珍しかったからだろう。
同年代の女性と話すというのはいくら実姉と言えど楽しいものだ。姉弟だし、ちゃんと気があって、趣味が合うから話がつかなかった。
ずっとひとりっ子だったから初めての感覚で僕はそれだけでとにかく嬉しかった。
「おはよ。」
「おはよ。」
母は朝から煎餅を食べていた。この人いつも煎餅食ってるんだよな。そのくせに痩せてるし僕はなんでこの人に似なかったのかな。ぼけっとそんな顔をしていると母は疑いの目でこちらを見た。
「どうしたの?なんか気になることでもあった?」
「いや、別に。」
昨日とは違って当たり前の生活に戻ったなって感じがしただけで。
「そうよね。昨日は楽しかったものね。今日の学校が憂鬱なのも分かるわ、でも行きなさい。」
母は弁当を指さす。そこには2つ弁当があった。
「紫陽には日葵さんに弁当を届ける義務があるからね。
あんた隣の家なんだから届ければ良いじゃないか。
そうは思ったが面倒くさいことになるだけなのは分かっていたので僕はそっと口をつぐんで家を出た。
「あ、紫陽くん。おはよー。今ピンポン押そうとしてたの、丁度良いね。さ、一緒に行こうか。」
彼女は僕の手を掴む。距離感おかしいだろ?こんなんが実姉ってまじ耐えられないって。走るようにすたすた歩く彼女に引っ張られるようにして通学路を辿った。
「どういうことなの?紫陽?なんであんたが日葵先輩と歩いてるの?」
そうして、学校に着いて教室に入るなり、隣の席の美少女、笠谷桜に話しかけられた。というより、迫られた。
どうしたんだよこいつ。いつもは僕に興味なんかなさそうなのに。もしかしてこいつはJR部関係者だから僕が日葵さんと登校したことに興味をもってるのか?そんなわざわざ話しかけるようなことかよ。
「まあまあ、紫陽はそういう話に疎いところがあるんですよ。そんなに迫らないでやってください。」
お、榎、珍しく口を挟んだな。よく分からないけどそんなに興味の湧くような話題なのだろうか。まずなんで僕らが一緒に登校したことを知っているのか気になるが、まあそれは教室の窓から見えていたとかだろうか。
「よお、榎。どういうことなんだ?」
榎が間に入ると大人しく隣の席に座った桜を見てから榎に話しかける。彼は決まりが悪そうに苦笑いをした。
「まあこんなとこで話すような話題では無いんだよ、JR部関係者しか知らないような話だから。」
榎は関係者なのだろうか?よく分からないが核を隠されて話をされるのは何だか嫌なものだ。僕はまあこれ以上興味を示すことはしまいと思ったが彼は少々気にしたようで「まあそういうことだから。」と笑顔で去っていった。榎は正直掴みづらい、話をするなら桜だな。今日JR部部室に着いて行こうと密かに1人、決心するのだった。
「あんた、部室に来るの?」
放課後桜に話しかけると桜は想像していたよりずっと大きくリアクションした。そんなに驚くことだろうか、一応あなたに部活に入るように言われたのだけれど。
「まあ良いわ、よく分からないけれど来てくれるのならありがたい。一緒に行きましょう。ついてきて。」
彼女が驚く理由がわからずぐるぐると思考を巡らせていた僕に桜が話を切り出した。自分がよく分からないことをしていることに気づいたのか少し恥ずかしそうに見失ってしまいそうな速さで歩く彼女に何だか自然と微笑んでしまった。
「紫陽。どうしてここに?」
JR部部室に行くと見慣れた顔があった。
「榎。まじお前JR部部員だったの?」
彼は首をぷるぷると横に振る。
「いや、ちょっと縁があってお邪魔させてもらってるだけ、僕がサッカー部所属なのも知っているだろう?」
たしかに、うちの高校に兼部制度はない。彼が2つ部活に入っているとしたらそれはおかしな話だ。
じゃあ、どういうことだ?
「彼はね。中学校からの持ち上がりなの。」
そこで、1番偉そうな椅子に座った女の先輩、日葵先輩が僕に話しかけた。
「どういうことですか?」
彼女はう〜んと悩むと1人納得したように手を叩いた。
「今日は部活の説明を聞きに来てくれたんだよね?良い機会だししっかり説明するよ。」
そういってちょっと待ってね?と奥の部屋に歩いていってしまった。先輩、知らない人だらけの場所で晒されるのは気まずいんですけど。
ふと桜を見てみたが、彼女は僕と日葵さんとの関係が気になるのだろう。とても僕と話してくれそうになかった。
「君が紫陽くんか。良いね、外見も良いし優しそう。合格できるよ。」
(ん、え?可愛い。)
そこで沈黙した空気の中、日葵さんの隣の席に座っていたピンク髪でお団子をしている小さくて愛らしいタイプの美少女が声をかけてくれた。
「合格?ってどういうことですか?」
彼女は首を傾げた。
「桜、もしくは日葵から聞いてない?今日はJR部に入れるかどうかの試験をやる予定なのだけれど。」
彼女は苦笑いをしながらそう教えてくれる。え、まじか?強制入部って聞いたんですけど?
隣を見ると桜が、ボーっと頬杖をついていた。
彼女は一切こちらを見てはいなかったが、僕は何となく睨んでみてから「そうなんですね〜。」と先輩に相槌をうった......ところで日葵さんが戻ってきた。
「花蓮ありがと、場繋いでくれて。それじゃJR部の説明始めるよ!」
机に資料を置く彼女。急に決まった試験の予定に少々緊張はあったが、元気いっぱいに今日中に消費し切れるか分からない大量の資料を持ってきた彼女の笑顔に頷くのであった。
とりあえず量が書けるように、と思います。
ストックはないのでなるべく早く投稿できるようにしたいと思います