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第十二話 エマよ!鳥になれ!!

「だから、シャル姉がエマをぶん投げるんだ。作戦名はそうだな……”エマよ!鳥になれ!!作戦”としようか。」


「……噓でしょ?」


「え、私鳥になっちゃうんですか?」


「もうふざけてる時間はねえぞ……。」


みんながそう思うのも無理はない。だが、俺は至って本気で言っているのだ。


「ふざけてなんかないさ。……作戦名は適当だけど。」


「じゃあメルト、あなたの言う通り私がエマちゃんを投げるとするわ。それでも、()()に届かせることは到底無理よ。私が能力で身体強化しても半分の高さにも満たないと思うわ。」


「分かってる。だから、そこをエマの能力でカバーするんだ。」


エマの聖具の能力は<韋駄天(いだてん)>だ。


彼女の能力はシャル姉以上にシンプル。自らを加速させ、高速での移動を可能にするというものだ。

戦闘や移動、少年を助けたように人命救助等にも活用できる万能な能力である。


頭を使う必要がなく、とりあえず発動させておけば雑に強いのもいい。

トリッキーな聖具なんてエマには使いこなせないだろうしな。


そして今回は、そんな彼女の能力が一番のカギになる。


「私の能力ですかー?羽生やすとか、空を走るとかはできませんよー!?」


「知ってるよ。お前は難しい事を考える必要はない。ただ、シャル姉に投げられた瞬間に能力を発動してくれればいい。」


「ええ?それだけでいいんですかー!?」


「ああ。そうすれば、お前は()()の元までたどり着けるはずだ。」


「……どういうことなの?」


みんなの顔が疑問符で埋め尽くされている。


当たり前だ。俺は今回、かなり特殊な能力の使い方をさせようとしているからな。


「俺さ、前一緒に任務をしてて、エマが能力を使った時に気づいたんだよ。エマの能力は、自分自身を概念的に加速させるものだってことにな。」


「ちょっと何言ってるかわからないですー。」


「……俺は今まで、お前の能力は自身の脚力を強化するものだと思ってたんだ。脚力を強化することで素早い移動を可能にする、そんな能力だと思ってた。」


「だけどそれは違うみたいだった。ほら、前にお前が能力使って大ジャンプして、空飛ぶ魔物ぶっ殺した時があったろ?ナイフで切り裂いてさ。」


空から血の雨が降ってくるあの光景はかなり刺激的だった覚えがある。その時に俺は気づいたのだ。


「ありましたねー!サンダーバードでしたっけ?」


「ああ。で、あの時お前2,30メートルくらいは軽く飛んでたろ。そんでお前が空から落ちてくる時、俺は思ったんだ。”あれ?なんか落ちてくるスピードが速くないか?”ってな。」


「通常の人間が2,30メートルの高さから落ちてくる場合、2,3秒ほどの時間がかかるはずだ。だがあの時のエマは、1秒にも満たない時間で地面に着地していた。少なくとも、2,3秒は絶対にかかってなかったんだよ。」


「えー?そうでした?」


彼女はそんなこと1ミリも気にしていないだろうからな。気づかないのも仕方ない。


「エマの能力が脚力を上げるものだったとしたら、それはおかしいだろ?いくら脚力が高くても、落下のスピードは変わらないはずだ。とすると、エマの能力による加速は……」


「概念的なもの、という訳ね。」


「そういうこと。察しが良くて助かるよ。」


流石シャル姉、理解が早いな。


「そう、エマの能力は、自身の速度を直接加速させるものだと考えられる。だったら、それをシャル姉の腕力と組み合わせることもできるはずなんだよ。」


「……つまり私がエマちゃんを投げることによって与えた速度を、エマちゃんが能力で倍にすることで、飛距離も倍にしてしまうってことね。」


「その通り!それでエマ、お前能力使えば何倍くらい加速できんだっけ?」


「え!?……うーん、10倍とかですかねー?調子良いと20倍くらいいけるのかなあ?」


「流石だな。だったら、シャル姉が全力で投げて、エマが能力を発動すれば単純計算で飛距離は10倍以上。十分()()にも届きうる!!」


()()は村の破壊を始める前、かなり高度を落としていた。


今考えれば、それは特定の区だけを正確に破壊するために行われていたのだろう。そこを逆手に取り、高度が最低になっているタイミングに合わせれば、より確実に届くはずだ。


「なるほど……。かなり無茶だけど、できるにはできそうね。」


「よく分かんないけど、シャル姉ができるって言うならできるんでしょー!!」


エマは理解できないだろうと思っていた。だが、俺の作戦を信じてくれさえすればいい。


「届けばあとは成り行きだ。()()の中に人が入っているなら、どこかに入り口があるはず。そこをこじ開けて中に入り制圧してくれ。制圧後は、持ち主に()()を操らせて安全に着陸するんだ。」


仮定に仮定を重ね、更にエマの能力に頼り切った作戦だ。正直俺もやらせたくはない。


でも、これ以上のものを考える時間はもうない。村を守りたいならやるしかないのだ。


「待ちなさいよ!……アンタの言うことは分かったわ。でも、失敗したらどうするのよ!!飛距離が届かなかったり、()()から振り落とされたりしたら即死じゃない!!そんな危険なこと、エマが許しても私が許さない!!」


スピカの怒りはよく分かる。そりゃ、こんな不安定な作戦に仲間の命を懸けさせることはできないよな。


それは俺も同じだ。策は用意してある。


「もちろん、失敗した時の策はあるさ。俺の能力を使うんだ。」


「アンタの能力?」


「ああ。失敗した時はエマが生身で落ちてくる。それを何とか出来ればいい。だからまず、シャル姉に俺を抱っこしてもらう。それで……ん?」


なんだこの空気は。急に冷たい空気が流れだしたぞ。


違うぞ、俺は真剣なんだ。決してシャル姉にバブみを感じてオギャりたい訳ではない。


「……続けなさいよ。」


そんな目で俺を見ないでくれ。邪な気持ちは無いんだって。

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