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第一話 とあるギルドの一室から

僕たちはいつも何かを平らげている。


美味しい食べ物やあいつの笑顔、あの子のちょっとした仕草とか、どうしようもない現実。


そして思うんだ。美味しいとか、幸せとか、可愛いとか、恥ずかしいとか、苦しいとか。


僕らは抗えない。目の前に出されたそれらを食べずにはいられないんだ。だから変わらずにはいられない。


くだらないことでバカ笑いしたり、未来について語り合ったり、夕日とあの子のコントラストに魅入ったり。


そんな日常が永遠に続けば良かったのにと、全て食べ尽くしてから思う。俺はバカだから。

胸からあふれる言葉、伝えたくなったときには、相手はもういない。


時計の針が動く限り、僕らは変わらずにはいられない。


停滞は後退と同義だという言葉があるけど、そうだとは思わない。時には停滞が前進につながることだってあるだろう。


でもただ一つ確かなことは、どんな手を使っても、そこにとどまり続けることはできないってことだ。


嗚呼、人生は難しい。ーーーーーーーー




「ねえねえ、何書いてるのー?」


「お、おい!勝手に見るんじゃねえよ!」


ノックもせず俺の部屋に侵入し、俺の至福の時間を阻むは、幼馴染という名の宿敵スピカである。


燃えるような赤い髪に端正な顔立ち、そこにどこか儚げな雰囲気を纏う美少女。とかギルドの中で言われてるらしいけど、俺はそうは思わんね!!


俺は目の前に広げたノートを必死に手で隠した。だが、その行為はよりあいつの知識欲、いや、いたずら心を掻き立てる。


「見せろおおおおおおお!うおおおおおおお!!」


そう、スピカはこういったものが大好物なのだ。


あいつはいつもの馬鹿力を発揮し、俺からノートを強引に取り上げた。


「ふむふむ、ふふふ、素敵なポエムですこと。」


「このヤロー!思ってねえだろ!」


強引かと思えば、お淑やかな口調。


人を馬鹿にしていない限り、こんなに口調が行ったり来たりすることはない。


「ところで、あの子ってのは私のことでいいの?私と言えば夕日だもんねーーー!」


「なわけねえだろバーーーーーカ!!そんなノスタルジーなもん、お前には1000年早えよ!」


「何をー!じゃあこんなポエム、あんたには10000年早いわ!!」


「ガルルルルルルルルル……」


「ガルルルルルルルルル……」


「おいおい、またいつもの喧嘩かよ。おアツいねー。メルト、明日は早えんだからもう寝ろよな。」


当たり前のようにノックもせず侵入し、俺たちを冷やかすこの銀髪ノッポ。


こいつはカインだ。腐れ縁でよく兄貴面をしてくる仕事仲間だな。


「分かってるよカイン。これ書いたら寝ようと思ってたんだ。それでコイツが邪魔してきたんだよ!」


「何をー!私はちょっと覗きに来ただけじゃない!」


「あ、またいつものポエムか?アレ、マジでかっこいいよな。フフッ。」


「おい!何だよその語尾のフフッは!無性に腹が立つからやめろ!」


「まあいいだろ何でも。ちなみにエマはもう寝てんぞー。」


「ははっ。エマ、もう寝てんのかよ。アイツらしいな。」


そう、明日は依頼で隣の村に行って、荒くれ者退治をしなくちゃならない。


村人や町人の依頼に答え治安を維持するのは、ここら辺の地域を包括する自警団的な意味合いを持つうちのギルドにとって一番重要な仕事だ。


依頼には地味なものも多いが、ここを疎かにすればうちのギルドは成り立たない。


明日のメンバーは、俺、カイン、ちっちゃくてかわいいマスコット的な感じで、ギルドでも可愛がられてるエマの3人だ。


まあ、ただの荒くれ者退治に3人もいらないとは思うが、何が起こるか分からない。念には念をだな。


「俺もエマを見習って、早めに寝るとするかな。」


「おやすみ、メルト。明日は気をつけてねー。」


「ああ。まあ、大した任務じゃないと思うけどな。」


「俺もそう思う。だが、油断は禁物だぜ。じゃ、時間になったらエマが起こしに来るからそれまでは寝てていいぜー。」


「分かった。じゃあ、また明日。」


***


「…………ようございまーす!」


「ん……。うう……。」


「おっはようございまーす!!」


「……!?どわああああああああ!!」


なんだこの揺れは!?敵襲か!?


尋常じゃない揺れだ。俺の内臓がカクテルになるような感覚。いったい何が起こっているんだ!?


「……って、お前が揺らしてんのかああ!!エマああああ!!!」


揺れで焦点が全く定まらないが、この透き通るような水色の髪に短い手足、愛らしい瞳。


エマに違いないだろう!


「……?そうですよー?早く起きてくださーい!!!」


「ごわあああああああ!!!」


し、死ぬ……。朝からこの揺れはまずい。このままでは、俺の胃の内容物がすべてぶちまけられてお陀仏だ。な、何か手を……


「はっやく起きてくださーい!!久しぶりに一緒なんですから、いっぱい話したいことあるんですよー♪」


「うごおおおおおおお!!!お、起きてる……。起きてる、から……」


「もうー!寝坊助さんなんだから♪ほら、起きてくださーい!」


あ、これ死ぬやつだ。


「ぶるああああああああああああああ!!!!!」


***


あー、死ぬかと思った。てか、死んだ。もう俺の内臓は原形をとどめていないだろう。マティーニか、カルーアミルクにでもなっているだろう。


それで、俺たちは半ばエマに引きずられる感じで村に来た。……が、


「ねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむい」


「でねー、昨日ね、町に洋服を買いに行ったの!そしたらね、エマのこと知ってる店長が、アクセサリーをおまけしてくれるって言ってくれたの!それでね、月と星型どっちがいいかって聞かれてね、エマは迷いながら……」


なんだこの地獄は。左からは怨嗟の声、右からは情報量の暴力だ。


カインはまだ同情の余地がある。おそらく俺と同じで、エマのハイパーゆさゆさ地獄の被害者なのだろうから。


だがエマはどうなっている!?朝からずっとこの調子だ!久しぶりって言っても、二週間ぶりとかだろう!だが、こいつは30年ぶりに再会した親友並みのトーク量を平然と放っている。


「ねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむい」


「でねー、銀河膀胱伝説っていう本を買って読もうとしたんだけど、内容が難しくてやめちゃった!それは置いといてねー、おとといの話なんだけど、ギルドの調理のおばちゃんが、私に試作品を食べないかって言ってきたのー!エマ、食べるの大好きじゃん?だから……」


おいおい、銀河膀胱伝説の話をもっと聞かせてくれよ。一番置いといちゃいけねえ話題だろ。


うーん、そうだな、子供は刺激が多いから一日が長いっていう話があるけど、エマはそういうことなんだろうな。だからこの情報量を二週間で得ることができているのだろう。


……エマって俺の一コ下だから、18とかじゃないのか?エマの成熟スピードはエルフ並みなのか?ちっこいのもそういうことなのか?


深く考えても無意味だな。膀胱伝説について考えたほうが、100倍有意義な時間を過ごせるだろう。そうだ、そうに違いない。


「ねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむいねむい」


「そうだ!一週間前に、お部屋の模様替えをしたんだった!そしたらね、ずっと探してたぬいぐるみが出てきたの!名前はパフちゃんっていうんだけどね、パフちゃんさみしそうな顔してたんだよー。だから私が、ごめんねパフちゃん、って言ったんだー。そしたらね、パフちゃんがね……」


というか、どこに荒くれものは居るんだ?そもそも、本当に居るのか?今6時半くらいだろ。


荒くれものって、普通もっと夜更けとかに湧いてくるもんなんじゃないのか?俺たち、割とこの村歩いてるはずなんだけどな……


「あ!あそこに、荒くれてる人がいます!」


「何!?」


エマが指さした方向を向いてみると、、いた。見るからにガラの悪そうなのがいるじゃないか。


「おーれは荒くれもん♪健康な朝の荒くれもん♪いうなれば俺は朝くれもん♪おーれは朝くれもん♪」


「おい、メルト、こいつは見なかったことにして帰らねえか……?」


「ああ、そうだな……」


どう考えても危ない人だ。できれば関わりたくない。


その男は奇っ怪な歌を歌いながら、村の花瓶や樽を壊して回っている。


荒くれものといえば、女性に変な絡み方をしたり、弱そうな人に難癖をつけて金をぶんどったりするものだと思うのだが、なんせこんな朝っぱらだ、絡むやつが誰もいないのだろう。


「ダメですよ二人とも―!ちゃんとお仕事はこなさないと!ご飯食べられなくなっちゃいますよー。」


「ああ、そうだな。って、え!?」


「朝起きる俺は健康体♪俺一人だけの演奏会♪道にこんなのあったらめんどくさい♪って、この荷車さすがに結構重たい♪」


「おいおい、マジかよ……」


男は、奇っ怪な歌を引き続き口ずさみながら、箱や樽が大量に積まれた荷車を持ち上げていた。


アレをたたきつける気か?どうやら笑い事ではなくなってきたな……


「ちょっと待て!そこの荒くれもの!その荷車を下ろせ!」


「……あ?誰だよおめえ?」


「俺はメルト!太陽の(アポロン)ギルド所属のものだ!」


「あぽろんギルドー?そいつが俺に何の用だ?」


「村の人々に依頼を受けて、お前を拘束しにきた。おとなしく捕まってくれれば、手荒な真似はしない。」


「拘束だぁー?舐めたこと言いやがって。早起きしてるって点ではお前らを褒めてやりてえが、俺から至福の時間を奪おうってんなら、容赦はしねえぞ!」


案の定、平和的解決は無理か。こうなったら武力行使もやむを得ないが、問題は誰がこいつの相手をするか……


「おーい、メルトー。こういうやつはお前の得意分野だろ。お前に任せる。俺はなーんもしねーぜ。」


「もうっ!カイン!……でも、カインの言う通りですね。メルトさん、お願いできますか?」


「ああ。」


やっぱり俺になるよな。こういうシンプルな奴への対応は、俺の専売特許といってもいい。


俺は仕事道具の手袋をしっかりと右手にはめた。


「言うことに従わないなら、武力行使をさせてもらう!覚悟しろ!」


「上等じゃねえか。俺のこぶしが、てめえの朝飯じゃあああああああああ!!おはようございまああああああす!!!」


男が俺に殴りかかってくる。


俺はこの男に触れさえすればいい。荒くれものとはいえ、なんか憎めないやつだ。できれば傷つけずに拘束したいが……


「オラァ!オラァ!」


得意分野とはいえ、この男のパンチをまともに食らえば、俺は昇天間違いなしだ。

慎重にタイミングを見計らわねば……


「ちょこまかと鬱陶しいんだよ!避けてるばっかでつまらねえ!」


「当たりたくても当たれないんだよ。お前のパンチが遅すぎてさあ。お前、もしかして朝弱いタイプなんじゃないのか?」


「なんだとおおおおお!!!俺は毎日目覚まし無しで起きてんだよ!!!」


よし、挑発に引っかかってくれた。大ぶりのパンチだ。

これをうまく避けて……


今だ!!

俺は男の胸に手を当てた。


魂の行方(ソウル・リバース)


「終わったな。」


「はい、終わりですねー。」


「ぐわあああああ!!!!!!!」


「……って、何も起きねえじゃねえか。変なハッタリかけやがって。オラァ!!」


パシッ


俺は、男のパンチを片手で受け止めた。


「……!?なっ、なんだと!?お前、俺より力が強い……?こぶしが、、離れねえ!離せやオラ!」


俺は、もう片方の手で繰り出されたパンチも難なく受け止めた。


「分かったか?勝負は終わったんだ。おとなしく拘束されろ!!」


「ありえねえ!これは何かのマチガイだ!俺が力で負けるわけがねえんだ!」


男は何とか俺の手を振り払い、傍にあった樽に手をかけた。


「パンチは受けられても、この樽は受けられねえだろ!これでてめえの顔をぶんなぐって、二度と朝飯を食えねえカタチにしてやるよ!うおおおおおおおおお!!!」


「あれ……?樽が、持ち上がらねえ?そんなはずはない!!俺ならこんなもん、片手でも余裕なはず……だろ?」


俺は困惑している男の腕をつかみ、手錠をかけた。


「おい!やめろ!……クソッ!!なんでこいつ如きの手も振り払えねえんだ!?」


「どうなってんだよ……?悪い夢でも見てんのか俺は?おい!どういうことなんだよ!」


この男、本当に何も知らないんだな。聖具(せいぐ)についての知識があれば、ある程度この状況についての予測は立つはずだ。


まあいい。説明ぐらいはして……


「……!!そうか、わかったぞ!」


何!?聖具についての知識もなしに、この状況に対する答えを出せたのか!?いや、そもそもこの男は聖具を知って……


「恋だ!!」


「……え?」


「そうだ!これは恋に違いねえ!だって、お前が俺の胸に手を触れた瞬間から、俺は力が出なくなって、胸もドキドキして……。間違いねえ!メルト!……くん。俺はお前に、恋して……ます。」


なにいいいいいいいいいいいい!?違う!絶対に違うだろ!


力が出なくなったのは俺の聖具の能力で、胸のドキドキはそれに対する動揺だろ!!


エマ、カイン!!黙ってないで何か訂正を!訂正をおおおおおおお!!


「そうかもしれないですねー!恋っていうのは、いつどこで生まれるかわからないものです。だからこそ素敵なんです。あなたはその気持ちを、大切にしてあげるんですー。」


「ああ、エマはいいこと言うな。俺もそう思うぜ!」


終わった。


エマは天然で言ってるとして、カインは絶対分かって言ってんだろ!この状況を楽しんでやがる!!何が”俺もそう思うぜ!”だよ!黙ってろよ!


見える、見えるぞカイン!その真顔の裏に隠れたニヤケ面が!!ドブ以下の畜生面が!!


くそっ!カインがマトモな説明をするとは思えん。ここはエマに説明を頼もう。


「ふざけんなあああ!!おいエマぁ!ちゃんと説明するんだよ!後で二週間分愛でてやるからよお!」


「え!?いいんですか!?やったー!……約束ですよ?」


「ああ。だから早くこの悪い夢を覚ましてくれ。」


「はい!じゃあ、今から分かりやすく説明するので、荒くれさん、頑張ってついてきてください。」


「お、おう。」


「ちぇー。つまんねー。」


カイン。あとで君の顔を、朝飯を食えねえカタチにしてやる。


「まず、この世界には聖具というものが存在するんです。聖具は、生成士さんの持つ特殊なスキルによって、人生に一度だけ、心臓から生成することができます。私たちのギルドは、聖具を持っている人がたくさんいて、それを日々の治安維持などに活用していますー。」


「でも、生成士さんさえいれば、誰でも聖具を生成できる、というわけではないんですー。聖具の生成には資質があって、ある程度の資質がない人の心臓からは聖具が生成できないんです。あちらのカインは、資質がない側なので、聖具を持っていません。かわいそうですねー。」


「おい!俺は必要ねえから生成しねえんだよ!憐れむんじゃねえ!!」


いいぞ、エマ。もっとカインに恥を与えてやるんだ。


「逆に、資質がありすぎる人の場合、生成士さんを介さず、聖具が生成されることもあります。寝て起きたら、手のひらに聖具が握られていた、というような事例もあるみたいですー。」


「なるほど……。そんなもんがこの世に存在してやがったのか。」


「そうなんですー。次は、聖具の詳細について説明しますー。聖具の形と能力は十人十色で、様々なものがあります。例えば、私の聖具はこの胸のブローチで、メルトさんの聖具は右手につけてる手袋ですー。」


「私の聖具の能力は……秘密なんですけど、荒くれさんの疑問の核心、メルトさんの聖具の能力について今から説明していきますねー。」


「ああ、頼む。このままじゃ気になりすぎて朝も起きれねえよ。」


夜も眠れねえよ、だろ。


「メルトさんの聖具の能力名は魂の行方(ソウル・リバース)。簡単にいえば、聖具である手袋で対象に触れたとき、自分と相手の能力の一つを入れ替えられる能力ですー。」


「能力ぅ?」


「はい。当たり前ですが、人間には能力というものがあります。力とか、早さとか、知能とか、体力とか、魔力とか。他にも様々なものがありますー。」


「メルトさんは、そういったものを一つ、入れ替えてしまうことができるんです。今回の場合は、あなたとの間で力を入れ替えたんです。だからあなたはメルトさんに力負けし、樽を持ち上げることもできなかったんです。」


「なるほど。そんなからくりがあったとは驚きだぜ。道理でなんか体がおかしいと思ったんだ。でも、だったら戦いの後半の俺の力は本来メルトくんのものってことだろ?ここらの治安を守るような奴が、樽一つも持ち上げられないってのは大丈夫なのか?俺が言えたことじゃねえけどよ。」


「ああ。それはわざとなんだ。俺の能力はあくまで”入れ替える”ことだからな。相手の長所を奪うだけじゃなく、同時に自分の低い能力を押し付けるような使い方をしたいからそうしてるんだ。」


「別に力が無くても、ナイフや剣みたいな武器があれば相手は無力化できるしな。俺が鍛えてるのは、聖具発動に直結する魔力と早さくらいなもんだ。」


「おい、さっきから気になってたんだが、その魔力ってのは何なんだ?お前ら、魔法みてえなもんも使えるのか?」


「いえいえ、そんなものは使えないですよー。魔力っていうのは、聖具の能力を出力するためのエネルギーみたいなものです。つまり、魔力が高ければ高いほど、聖具の能力が強まったり、能力の持続時間が長くなったりするんですー。」


「火を出す聖具だったら、火の勢いが強くなり、火を出していられる時間が長くなる。メルトさんの聖具だったら、入れ替えた後の能力にかかる倍率が高くなり、入れ替えていられる時間が長くなる。といった感じですねー。カインには関係ない話ですねー。」


「おい!なんで急に俺を刺してくるんだよ!俺は黙って聞いてたじゃねえかよ!」


ざまあ。


「な、なるほど。世の中には俺が知らねえことがいっぱいあったんだな。こんな田舎の村で粋がってた自分が、なんだか小さく見えてきたぜ。」


「これに懲りたら、もうこんなことはやめるんだな。お前の身柄は村の自警団に引き渡しておくから、そこでしっかり罪を償うんだぞ。」


「ああ、分かったよ。」


「おっと、そうだ。そういえばお前、”天空龍の宝玉(ドラゴニック・オーブ)”について知ってることはないか?」


「”天空龍の宝玉(ドラゴニック・オーブ)”?なんだ、それ?」


「知ってるわけないよなあ……。ま、忘れてくれ。」


「お、おう。……ところでメルトくん!!」


「なんだ?」


「俺が罪を償って、牢屋から出ることができたら、俺と一緒にデートして……くれますか?」


あ、恋はしてる感じだ。


「前向きに考えておきます……」


***


「ふぅー。やっと戻ってきたぜー。」


「全くだ。てか、メルト。こいつを黙らせる方法はないのか?」


「でねー!エマはねー!この前の任務でおばあちゃんを助けてあげたの!ババ・アンアンっていうおばあちゃんなんだよ!それでね、ババさんは、私にお礼がしたいって言ってきかなかったの!だから、エマはお言葉に甘えて、ババさんの家でクッキーを焼いてもらったの!それがまた絶品でね……」


結局、あの荒くれものを引き渡してからも、ずっとエマはこんな感じだ。


この無尽蔵のトークを身に受けながらなんとかギルドのロビーまでたどり着いたが、任務の完遂を受付嬢のフィルさんに伝えてからも、この拷問は続くのだろう。


俺は、二週間分愛でてやるなんて言ったことを後悔していた。


勢いで言ってしまったが、なんだ二週間分愛でるって。とりあえずギルドに戻ってくるまで、ずっとエマの頭をなでているが、こんなものでいいのだろうか。


長距離走などでもそうだが、ゴールやゴールへの目印もない状態で走り続けるのはなかなか精神に来るものがある。ああ、もっと見返りを具体的にしておけばな……。


「な、なあエマ。昼食は何食べる?俺はその話をしたいなー、なんて。」


「あ、ああ。メルトの言うとおりだ。朝からなんも食べてねえからな。腹が減……」


「メルト!カイン!エマ!ちょっと話があるの!」


カインの言葉を遮る突然の呼びかけに、俺たちは声の主の方向を探る。


「あ!シャル姉!」

初めまして!電波工房と申します!

ここまでお読みくださいまして、本当にありがとうございます!

もし楽しんでいただけましたら、感想・評価・ブクマ等よろしくお願いします!!

とても励みになります!!


ひとまず1週間は1日4話投稿を続け、そこからは1日1話投稿に移らせていただこうと思います!

カクヨム様の方で最新話の先行配信もさせていただいておりますので、ご興味がありましたらそちらも是非!!

ということで、これからよろしくお願いします!! 

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