彼女との出会い
「危ない!」
通学路を歩いていると突然後ろから声がした。
ドカン!!
激しく強い衝撃が俺を襲う。地面に倒れ伏した俺が最後に聞いたのは、救急車のサイレンだった。
「はっ!はあっ!目が覚めると俺は体を動かせない状態になっていた。てっきり病院のベットのようだが違う。手を挙げるとそれは今までの年頃の男の子の手ではなく柔らかく丸い赤ん坊の手だった。
「一体どうしたんだ。俺は一体」
叫び声を挙げると何故か自然と泣けてきてほぎゃあほぎゃあと泣き喚いた。
「どう様れましたか。ディオス様」
すると中年の優しげな女性が俺を抱き上げる。ゆらゆらと揺らされると俺は眠くなってまた眠りについてしまった。
翌朝目覚めると目の前には銀髪の美しい女性が立っていた。
「まあ。ディオスが目覚めたわ。なんて可愛いのかしら」
その女性は俺を抱き上げると優しく頬擦りをした。
「なあ俺にもだっこさせてくれ。このあとは執務で起きている時間に会えないのかだら」
「あらあら。陛下は困ったお方ですね。ディオス」
(俺はもしかして転生したのか、しかし、ディオス.なんだかどこかで聞いた名前だ)
不審に思いながらも俺は殿下と呼ばれた父に抱かれる。サービスをしておこうとニコニコと笑い手を伸ばした。すると殿下と呼ばれた男はデレデレと微笑み俺を押し潰さんばかりで抱きしめた。
「殿下。ディオスが潰れてしまいます」
「ああ!すまん。あまりの可愛さについ。じゃあ私は執務に行くよ、またねディオス」
俺は第一王子。唯一の王太子として大切に育てられた。その間にも記憶を保持していたので、幼子にできないことをして天才児としてもてはやされた。だが知らないことお多い。帝王学や剣術、弓の稽古。乗馬の稽古とやることは山積みで俺が10歳になるまですっかり悪役令嬢のイルナ・シェラザードのことはすっかり忘れていた。
俺には親友とも呼べる伴のものが一人ついていた。アベル・ガルム自慢ではないが俺は銀髪に碧眼の絶世の美少年だったが、アベルは黒髪の男らしい少年だった。
「ディオス、明日はあなたの婚約者のイルナ・シェラザードに面会するから礼儀正しくするのですよ」
「はい。母上」
ついに悪役令嬢に対面することになった。ついにゲームのスタートなのだな。俺は「バラの花さく園」の全容をしているわけではないが、その存在とイルナが悪役令嬢になることは知っていた。
「明日あってみてどんな子か判断しよう」
そう思いながら眠りについた。
翌日、よく晴れた庭園に美しいアフタヌーンティーの用意がされた。
初めて会ったイルナ嬢は美しく優しげだった。何が間違って彼女が悪役令嬢になるのか皆目検討もつかない、俺は一目で彼女に恋をした。
「あの…この度はお招きいただきありがとうございます。イルナ・シェラザードと申します」
綺麗な挨拶をする彼女を見ると厳しい訓練を受けていることが一目見てわかった。カップを持つ角度や所作など、同年代の少女のそれではなかったからだ。
(俺が彼女を守らないと…)
絶対に彼女を断罪などさせない。そう決意した。