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聞き上手のキッテ様【連載版】  作者: 原雷火
孤児院に慰問に行ったけど不思議な出来事に遭遇した話
66/82

66.どんどん見つけてしまうのだから

 さてと。


 かくれんぼマスターの私の見立てで、だいたいどこに隠れるか相場は決まっているのよね。


 孤児院は他にいくつかの部屋と、職員の部屋。炊事場などの生活に必要なスペース。それから大きな木が生えた庭があった。


 サクサクと見つけていっちゃいましょうね。


 まずは隣の部屋へ。どうやら誰かの寝室ね。二段ベッドが二つ並んでいて、女の子たちで使っているのかしら。


 私はさっとベッドの下を確認した。


「げえッ! もう見つかった!? マジかよ」

「ふふん♪ 先生をあまりなめないことね。けど、女の子の部屋のベッドの下に男の子が隠れるのはいけないわよ……ジャック」

「チクショー!」


 悪ガキっぽい子の一人ね。簡単簡単。


「はい、見つかった子は食堂に戻りなさい」

「ちぇー。絶対見つからないって自信あったのに。けどキッテ先生。俺は四天王の中でも最弱だから」

「はいはい、戻って戻って」


 残り十人か。この寝室にはもう誰もいないわね。


 次の部屋は職員控え室ね。大きな窓と長いカーテン。視線を下に向けると、女の子の靴がちょこんとはみ出していた。


 カーテンを開くと。


「キャ! 見つかっちゃった」


 快活な感じの女の子。確か……デイジーね。


「はいデイジーも捕まえた」

「先生早いよー! 見逃してくり!」

「だーめ。見つかった人は食堂ね」

「はーい!」


 明るい子ね。素直に従って彼女は食堂に向かう。


 あと九人。部屋を出ると二階に続く階段があった。階段下に扉がついている。だいたい、こういうところって物置になってたりするのよね。


 扉を開こうとすると、向こう側から開かせまいと激しい抵抗があった。


「出てらっしゃい。もう居るのはわかってるんだから!」

「いねぇって! いねぇから!」


 口調は荒いけど声は女の子。たぶん――


「残念だったわね。でも諦めなさいカミラ」

「ったくよぉ……なんでバレたし」


 ベリーショートの女の子が物置の中から姿を現した。


「はい、じゃあ食堂に戻ってね」

「オレ何位だった?」

「三位よ」

「マジで!?」

「下から数えてだけど」

「なんだよぉ! 八位じゃん!」


 あら? 数え間違いかしら。カミラは不機嫌そうにほっぺたを膨らませると、いそいそと食堂に戻っていった。


 背中を見送りつつ、あと八人。夕方からの予定も詰まってるし、ペースアップしないといけないわね。


 次は……っと。厨房へ。作業台のテーブルの下でしゃがみ込んでいる髪の長い女の子を見つけた。


 隠れているつもりなのかしら。確かこの子は。


「ヒラリーさん。見つけたわ。けど、それで隠れているつもりかしら」

「かくれんぼなんて大人の私はしないんです」


 彼女はテーブルの下でキリッとした顔をする。


「けど、一応は隠れてくれているのよね?」

「棒立ちでは王妃様に失礼と考えました」

「もう少し楽しんでもいいと思うわよ。けど、ありがとうね。気を遣ってくれて」

「と、とんでもないです」


 真面目な子なのね。いつもヤンチャ系の男の子たちに振り回されてるんじゃないかしら。


 テーブルの下に手を伸ばすと、一瞬とまどったけどヒラリーは握り返してくれた。


 引っ張り出して立たせて「はい、じゃあ食堂で待っててね」と、彼女に告げる。


 ヒラリーも「わかりました」と素直に従った。


 これであと七人。いい感じに見つけていってるわね。


 次に目に付いたのは建物二階にある共有スペース。大きなクローゼット(職員用?)と本棚とソファがそれぞれ怪しかった。


 本棚の隙間にはまり込むように小柄のメガネの男の子を見つける。


 文字の読み書きが一番得意だったのよね。


「フレッドは本が好きなのね」

「うう、見つかっちゃいましたか」

「隙間に収まるだけじゃバレちゃうわよ」

「無念です」


 男の子たちの中だと最年少っぽいのに、言葉使いがしっかりしてるわね。


 続けてクローゼットを開く。恐怖の館を徘徊する化け物なら、こういった場所を調べたりしないのだけど、相手が悪かったわね。


「見つけたわよグレン」

「んだよ、絶対バレないと思ったのに。つーかジャックはもう見つかってる?」

「ええ、一番最初に見つけたわよ。女の子の部屋のベッドの下で」

「あいつほんとバカでしょ?」

「仲が良いみたいね」

「まぁな」


 ジャックとグレンは悪ガキコンビって感じね。どっちかといえばグレンの方がお兄さんかしら。


 最後にソファーの裏にゆっくり回り込む。と、影がこそこそと私から逃げようとした。


「そこまでよ! イリス! 小さなお尻がはみ出てるわ」

「はうぅ……見つかっちゃいました」


 気弱そうで華奢な女の子がゆっくり立ち上がった。本当に小柄だから、ソファーの裏でも案外見つからなかったかもしれないわね。


 けど、かくれんぼマスターの私は見逃さないわよ。


「それじゃ三人も食堂に戻ってね」

「「「はーい」」」


 まとめて見つけて残るは四人。だんだんクライマックスが近づいてきたわね。


 残っているのは――


 快活なリーダー格の男の子のアレン。がっちりした太っちょな男児のボブ。あんまり自己主張しなかったけど、ゆるふわっとした雰囲気の女の子のエマ。


 最後に……ちょっと気難しそうな色白の男の子……キールね。

 院内は一通り見て回ったけど、人の気配は感じなかった。


 これはきっと、外ね。庭を見に行ってみましょう。

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