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聞き上手のキッテ様【連載版】  作者: 原雷火
青い宝石をめぐる事件簿のお話
37/82

37.名探偵か迷探偵か運命の分かれ道にさしかかりました

 ほどなくして――


 来賓リストと客の人数が合わないことが発覚した。


 いないのは……宝石好きのジョエル伯爵ね。


 私は「すぐに探してください。城内だけではなく、中庭なども念入りに」と衛兵に指示を出した。


 名探偵(?)のシャーロットが私に訊く。


「王妃様? 中庭ですか? もし……陛下を襲った犯人がジョエル伯爵なら、逃げ場の無い中庭に隠れているとは思えないのですが?」

「念のためよ。それよりも第一発見者だからと、彼を疑ったことを謝罪なさい」

「うっ……ま、まだわかりませんから。共犯の可能性もありますし。捜査の基本は疑うことです」


 最初にレイモンドが倒れているのを見つけて、すぐに報告してくれた衛兵に私は言う。


「もう下がっていいわ。ええと、お名前は?」

「は、はい! 自分はその……エリックと申します!」

「ありがとうエリック。陛下をすぐに見つけてくれて。疑いが晴れたらきちんとお礼をさせてくださいね」

「と、ととととんでもないです!!」

「今夜は念のため、王宮には残っていてください。また、貴男の証言が必要になるかもしれませんから」

「しょ、承知いたしましたッ!!」


 ビシッと敬礼をして衛兵エリックは持ち場に戻った。


 シャーロットは不満そうね。


「王妃様はお優しいんですね」

「疑い始めたらキリがないもの」

「ところで、肩のそれは? 小鳥……ですか?」

「あ、あら。どこから紛れ込んだのかしら?」


 と、ごまかしつつ、私は指をルリハに近づける。ぴょんと乗った青い小鳥はシャーロットをにらみ付けると「キッテ様をいじめるな!」と抗議した。


 もちろん、私以外には小鳥がチッチとさえずるようにしか聞こえていない。


 すると――


 会場にエリックとは別の衛兵がやってきた。


「王妃様! 中庭に……ジョエル伯爵が……その……し、死んでいるようです」


 死んでる? いったいどうして?


 指先でルリハが言う。


「あのねあのねキッテ様! 他の子が見てたんだけど、さっきテラスで大きな人と、黒い人がもみ合いになってたよ!」


 いったいどういうことかしら? 大きな人って? 何か特徴があれば知りたいけど、ここでルリハに話しかけると私が不審者かも。


 けど、目の前には赤いドレスの少女が立っている。


「ねえ、ええと……貴方。犯人について他に何か気づいたことはないかしら?」


「まだ現場の状況を見ていないからなんとも……ですが、ジョエル伯爵が死んでいるなんて……状況によっては……ともかく、調べてきますね」


 いてもたってもいられず、シャーロットはホールを出る。


 指先で遊ぶルリハは片翼を上げた。


「はいはーい! 大きな人がね! えいって黒い人の首を曲げてね! それから青いキラキラを胸につけてあげたの! 最後にテラスからポイーって。あとね! 大きな人は大きな大きな鞄を持ってたかも!」


 犯行現場は王宮二階のテラス。

 なぜだかわからないけど、そこにジョエル伯爵と……宝飾品職人のスミスがいた。


 ルリハの話だと、二人はもみ合いになった。スミスが……ジョエル伯爵の首を折った? のかしら。


 そして、二階のテラスから投げ落とした。


 一番意味がわからないのは、スミスが青いキラキラ……ブルーダイヤ徽章をジョエル伯爵の胸に着けてから、遺体を中庭に捨てたこと。


 いったいどういうことなのかしら?


 私は衛兵を呼ぶと「宝飾品職人のスミスを探してちょうだい」とお願いした。


 ルリハのおかげで犯人がわかっちゃいましたけど、いったいどうしてこうなったのか、さっぱりね。


 ただ一つ言えることは――


 スミスがジョエル伯の首を折ったということ。明確な殺意の現れだった。


 困ったわね。


 ルリハが現場を目撃したけど、証拠にはできないわ。



 シャーロットが捜査を終えて戻ってきた。


 再びステージに上がって、脚光と来場者の視線を集める。


「皆様にご説明します。今回の事件の全容と全貌を。つまびらかに、それでいて大胆に。アイスクリームの食べ過ぎで頭が痛くなった時、薄いサクサクのゴーフルでその頭痛が治るように。事件がアイスクリームの氷山なら、わたくしがそのゴーフルになりましょう」


 推理ショーの第二幕開演に、会場中から拍手が巻き起こった。相変わらず例え話の癖が強いわね。


 赤いドレスの裾をふわりとひるがえして。


「まず、レイモンド陛下を襲った犯人ですが……残念ですけど……亡くなったジョエル伯爵です」


 そういう結論になってしまうのね。


 ここはきちんと聞いていかないといけないわね。間違ったらきっと、事件は迷宮入りしてしまう。そんな気がした。

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