第八話
…季節は夏真っ盛り、連日猛暑が続く今日この頃…今日も変わらず魔王軍と勇者パーティーによる熱い戦いが繰り広げられていた。
「くらえ!『獄炎ブレス』!!」
灼熱の火炎放射を放つイフリート
「凍りつきなさい!『ブリザードブラスト』!!」
強烈な氷の魔法でイフリートのブレスを押し返す
「ぐぬぬ、小癪な…」
「負けないわよ!!」
熾烈な攻防戦を繰り広げているそんな中、ルドルフとムエルタは…
「…最近、めっきり暑くなってきたね」
「そうだな、ふぅ…こんな暑い日に鎧なんか着込んで剣振り回しでもしたらソッコーで熱中症になっちゃうな」
涼しい木陰で二人して座って談笑していた。
「…はぁ、こんな日は海にでも行って泳ぎたいなぁ」
「海かぁ、いいなぁ…私は海行ったことないんだよなぁ…」
「そうなの?魔族領にだって海はあるでしょ?」
「うん、あるにはあるんだけど…人間界の海とは全く違ってさ、凶暴なモンスターとかもうじゃうじゃいるし、入ったら確実に死んでしまう猛毒の海とかそんなんばっか…誰も好き好んで行こうとする場所じゃないんだよ…」
「そ、そっか…」
「でも人間界の海はちょっと憧れるな…青い海、白い砂浜、眩しい太陽…夏の定番デートスポットだって雑誌に書いてあった」
「そっか、じゃあ次のデートは海水浴デートにでも行こうよ!きっと楽しいよ!」
「い、いいのか!?」
キラキラと目を輝かせるムエルタ
「ああ、二人で最高の思い出を作ろうか!」
「うんっ!楽しみだ!」
・・・・・
翌日、人間界のとある百貨店にて…ムエルタはデートに着ていく水着を選んでいた。
「す、すごい種類がいっぱいあるな…ルドは一体どれが一番好みなんだ?うーん…」
と、一人悩んでいるところへ…
「あれ?ルタちゃん?」
「えっ?あっ…」
そこへ偶然勇者パーティーの大魔導士のリーネと鉢合わせたのだった。
「やっだぁ!こんなところで会うなんてすっごい偶然じゃない!アッハッハッハ!」
「は、はぁ…リ、リーネ…さんは、買い物、ですか?」
「そうそう、まぁ折角夏だし新しい水着でも見ていこうかなぁ~?って思ってた矢先、まさかルタちゃんまでいるなんて思ってなかったからびっくりしちゃった!」
「うん、私もびっくりしたな…」
「ところで、ここにいるっていうことはルタちゃんも水着買いに来た系?」
「っ!?」
「どうやら図星のようね?」
「ま、まぁ…でも種類が色々ありすぎてどれを選べばいいのか悩んでて…」
「うーん、すっごい分かるぅ!結構こういうの悩んじゃうわよねぇ…」
「ええ」
「よしっ!ここで出会ったのも何かの縁!ここはアタシも一緒に選んでしんぜよう!」
「えっ!?そ、そんな…悪いですって」
「遠慮しなさんなって、どうせあれでしょ?ルドとのデートに着ていく水着なんでしょ?ここはアタシがプロデュースしてあげるよ!」
「え、えっと…じゃあ、お言葉に甘えて」
ということで、リーネに水着を選んでもらうこととなったムエルタ
試着室でリーネのチョイスした水着を片っ端から試着していく。
「んー、やっぱルタちゃんスタイルイイからどの水着もバッチリ似合っちゃうわねぇ」
「そ、そうですか?」
「そうよぉ、ゆーてアタシもスタイルにはそこそこ自信あるって自負してる方なんだけど…ルタちゃんの“これ”には勝てる気がしないわ」
と、ムエルタの胸を下から持ち上げるようにして揉みしだくリーネ
「ちょ、そ、そんなに揉まないで…」
「いいじゃない、女の子同士なんだもの…にしてもすっごい、何カップよこれ?」
「ちょ、ダメですって…」
と、リーネのセクハラ攻撃を受けながらもなんとか水着を選んで購入した。
「これで水着はバッチリね!それでルドの奴をへにょへにょの骨抜きにしてやんなさい!」
「は、はい…ありがとうございました」
【海デート 当日】
「ルド、お待たせ!」
水着に着替えて現れるムエルタ、黒を基調とした胸元にフリルがあしらわれた大人っぽいセクシーなビキニ
「…っ!?」
「ルド?や、やっぱり似合わなかったか?」
「違うよ、寧ろその逆…似合いすぎて逆に神々しい」
「フフフ、相変わらず大袈裟な奴…ルドもその、すごい筋肉だな…前に腕だけ触らせてもらったことあるけどやっぱ全体像で見ると違うな」
「そ、そう?まぁ結構鍛えてるからな、筋肉を褒められるのは嬉しいな」
「ああ、それじゃあ改めて行こうか?」
「ああ!」
…てなわけで、念願の海デートを満喫する
「そぉれ!」
「うわっ!冷たい!やったな~、お返しだ!それそれ~!」
互いに水をかけ合ってキャッキャウフフと楽しむ二人
「う~ん、やっぱ海の家で食べるかき氷は格別だなぁ~」
「ルドのはそれ何味?」
「宇治金時味だよ、ルタさんのは?」
「いちごみるく味だ、いちごシロップと練乳がかかってて甘くて美味しいんだ」
「へぇ、ねぇそっちも一口もらっていい?」
「ああ、いいぞ!ルドの方も一口頂戴!」
「いいよ、はい…」
と、お互いのスプーンでかき氷を食べさせ合う
「うん、これは美味し…あっ」
「ん?」
「これって、何気に”関節キス“だね…」
「っ!?」
真っ赤になって俯くムエルタ
「あっ、ご、ごめん…今のは忘れて!」
「…もう、馬鹿っ」
そんな二人が海デートを満喫しているのと時を同じくして…
「レヴィアタン様、準備が整いました…」
「そうか、ご苦労…」
ビーチから少し離れた沖合にて、作戦の準備を進めている四天王レヴィアタンと補佐官のディアブール
「では始めよう!海水浴に浮かれた人間どもに恐怖を与えてやれ!」
「はっ!では出でよ!『クラーケン』!」
魔方陣から召喚される巨大イカのモンスター クラーケン
「さぁ!いけ!クラーケンよ!」
「ぬるぅ~!」
突如として海水浴場に現れるクラーケン、人々に瞬く間に襲い掛かる
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「バ、バケモノだぁ!」
「ん?なんか騒がしいな…」
「ルド!アレを見ろ!」
「んん?ア、アレは!?」
「クラーケン、魔族領のモンスターがなんでここに…もしかして、近くに魔王軍が」
「何だって!?すぐにラミレス達に連絡を…って、ス魔法は今ロッカーにあるんだった…今日は剣も鎧もないし…」
「ルド…」
「安心して、君のことは俺が体を張ってでも守ってみせる!」
するとルドルフはすぐ傍にあったヨットのオールを手に取って構える
「…ま、これでもないよりはマシか」
「まさかルド、クラーケンと戦うつもり?無謀だよ!」
「大丈夫、俺が必ず守る!ルタさんには指一本触れさせやしない!うおぉぉぉぉ!!」
捨て身の覚悟で立ち向かっていくルドルフ
(ルド、私に何かできることは…でも、近くに魔王軍の誰かがいるかもしれないし、下手に出て行ってしまえば私だって気づかれるかも…でも、ルド一人に戦わせるわけには…っ!、そうだ!)
オール一本でクラーケンと渡り合うルドルフ、だがやはりそれにも限界がありオールがポッキリ折れてしまった。
「!?、し、しまった!」
「ぬるぬるぅ~!」
長い触手でルドルフを捕らえグイグイ絞め上げていく
「く、苦しい…ぐはぁっ!」
必死に脱出を試みるも絡みついて一向に離れることができない
「マズイ、もう…意識が」
最早万事休すかと覚悟したその時だった…。
「『ウインドスラッシュ』!!」
「っ!?」
そこへ駆けつけたのはリーネとハーミア、魔法でクラーケンの触手を斬り刻みルドルフを救出する。
「大丈夫ルド!?」
「ルドルフさん!おケガは?」
「ハーミア、リーネさん…なんで?」
「ルタちゃんから連絡もらって慌ててすっ飛んできたわよ!まさか、クラーケンが相手なんて思いもよらなかったけど」
「ルタさん…」
「すぐに治療します、そのままじっとしててください…」
「さぁて、この後イケメンとの合コンがアタシを待ってるんだから!ちゃっちゃとケリつけるわよ!」
「二人とも、ありがとう…」
「ぬるぅ、ぬるぬる~!」
襲い掛かるクラーケン、リーネは焦らず呪文を詠唱する
「…凍てつく息吹を我が手に宿せ!『アブソリュートゼロ』!!」
絶対零度の氷の魔法で周りの海水ごと瞬く間にクラーケンをカチコチに凍らせていく
「フフン♪いっちょあがり!」
「…相変わらず容赦ないですわね」
「まぁね!この後合コンなんだから傷なんて作るわけにはいかないもの」
「まぁ何にせよ助かったよ二人とも、ありがとう」
「ううん、お礼だったら連絡くれたルタちゃんにでも言っといて!」
「そう言えば、ムエルタさんは?」
「ん?そういえば…多分アタシ達に連絡だけ寄越して安全な場所に避難したんじゃない?」
「そうですわね…」
「ア、アハハ…」
…斯くして、今日も人々の平和は保たれたのであった。
「…まさか、クラーケンが」
「己ぇ、勇者パーティーめぇ…次こそは必ず!」
「ここは一先ず引き上げましょう…」
・・・・・
「ルド!」
「ルタさん…」
「良かった無事だったんだな!大丈夫か!?どこも怪我とかしてないか!?」
「大丈夫、死ぬかと思ったけどハーミアが全部治してくれたから…」
「良かった…」
「それよりも、ルタさんが二人のこと呼んでくれたんだよね?恩に着るよ、ありがとう」
「ああ、急いでロッカーに飛び込んで慌ててス魔法で連絡したんだ…間に合って良かった」
「ハハッ、にしても…とんだ海デートになっちゃったね」
「だな、改めて仕切り直すとするか!」
「うんっ!」
…こうして改めて海デートを再開する二人、日が暮れるまで二人きりで思い切り海を堪能した。
「あー楽しかった!」
「いっぱい遊んだね」
「…あっ」
「ん?どうかした?」
「見て、すごい綺麗…」
「え?あっ…」
夕日が海を照らしキラキラとオレンジ色に光っている
「素敵…人間界の海ってこんな素晴らしい景色が見られるんだな」
「そうだね…なんかロマンチックだな」
「フフフ、そうだな…いいものが見れて良かった!」
「うん」
「あ、そろそろ帰らなきゃ…じゃあ」
「あっ、ルタさん待って!」
するとその時、ルドルフは後ろからムエルタを強く抱きしめた。
「ル、ルド!?」
「ごめん、もう少しだけこのままでいてもいい?」
「もう、しょうがない奴…」
…そのまましばらくの間、二人は抱き合っていた。
「…ありがとう、もう大丈夫」
「そっか、じゃあまたな…ルド大好き♡」
ニコっと微笑みかけて去っていくムエルタ
「…フッ、さてと…俺も帰るか」
To be continued...




