第七話
…前回のあらすじ、ルドルフとリーネは外で酒を飲んだ帰り道に突然リーネが吐き気を催してしまい他に休めるところもなく仕方なくラブホテルで一時的に休憩することとなった。
一方でその一部始終を偶然魔王軍四天王補佐である『ハートリア』に目撃されてしまい、ハートリアはスクープと称してムエルタにその写真を見せてしまった、案の定ムエルタはルドルフに浮気をされたと勘違いして絶望の縁に立たされてしまったのだった。
【魔王城 医務室 兼 ハートリアの控室】
「…ぐすん、ぐすん」
「…なるほど、事情は理解したわ…まさか、魔王軍で誰よりも軍に忠実で冷酷非情とまで言われていたあなたがねぇ…にわかには信じ難いわね」
「…ぐすん、すみません…でも、本当に嬉しかったんです…私のことを、普通の女の子として好きになってくれたのなんてルドが初めてだったんで…」
「そっか…」
「あの、こんなことを言うのは図々しいって思うかもしれないんですけど…どうかこのことは誰にも」
「言うわけないでしょ、大体魔族と人間が付き合っちゃいけないなんて法律はないんだし…それにサキュバスであるアタシに言わせれば誰が誰を好きになろうと自由なんだから!」
「ハートリアさん…」
「それでなんだけど、知らなかったこととはいえあなたには申し訳ないことをしたわね…ごめんなさい」
「い、いえ!ハートリアさんは何も知らなかったわけですし、今回ばかりは悪気はなかったんですよね?気にしないでください」
「そ、そう…それはそうなんだけど、問題はあなたの彼氏が本当に魔導士リーネと浮気してるかどうかなのよねぇ…」
「……っ」
「まぁ、もうス魔法も壊れて写真もなくなっちゃったし…もう本人に直接聞くしかないわねぇ」
「直接、ですか…」
「ムエルタちゃん?」
「…真実がどうなのか気にはなります、けど…それ以上にやっぱり怖いです、もし本当にルドが浮気してたらって思うと…私」
「…信じてあげなさいよ、好きなんでしょ?彼のこと」
ハートリアの問いかけに無言で頷くムエルタ
「なら、勇気出して自分で聞いてみなさいな…」
「うぅ…でもやっぱり怖い」
「もう、仕方ない娘ねぇ…まぁ後は自分次第よ、この後どうするのかは自分で決めなさい」
「はい…」
・・・・・
【翌日】
「うーん…」
「ん?どうかしたのか?深刻な顔して」
「あ、ラミレス…いや、なんでもないよ」
「??」
「…ちょっと、外走ってくる」
「お、おう…気を付けてな」
外へ出ていくルドルフ
「ふあ~あ、おはようラミレス…」
「ああ、リーネ…おはよう、なぁ一個聞いていいか?」
「ん?何よ?」
「なんかルドの様子がおかしいんだよ…なんか知らないか?」
「ルド?さぁ?昨日一緒に飲みに行った時は全然普通だったけど?」
「そっか…」
「きっとあれじゃない?例の彼女のことでなんか悩んでたりして…」
「彼女?ああ、そういやルドの奴彼女できたとか言ってたよな…そういうことだったら俺にでも相談乗ってくれればいいのに、親友なんだし」
「とか言ってアンタ、他人の恋愛相談乗れるほど経験あんの?」
「バ、馬鹿にすんなよ!俺にだって恋愛経験の一つや二つ…」
「へぇ、詳しく聞かせてもらおうじゃないの?」
「…はぁ、どうしたらいいんだ?」
一人悩んでトボトボと歩くルドルフ
「あら?ルドルフさん」
「ハーミア…」
「どうかされたんですか?少しお元気がないように窺えますが?」
「…聞いてくれる?」
「はい、悩み相談であればお任せくださいませ…人の悩みを聞いて導いてあげるのも聖職者としての大事な役割ですから」
「そっか、じゃあ聞いてくれる?」
「はい…どうぞ」
「実はさ、ルタさんから連絡が返ってこないんだ…」
「まぁ…」
「うん、いつもならメッセージ送ってもすぐに既読つくしちゃんと必ず返してくれるのに昨日から全然既読もつかなくて、通話で呼びかけても出てくれなくて…」
「そうなんですの…心配ですわね」
「うん、俺…ルタさんのことが心配でさ、でもこないだもルタさんが体調を崩したかもしれないって聞いて俺は居ても立っても居られなくて魔王城に乗り込んで迷惑かけたばっかりだし、でもやっぱり何かあったんじゃないかって思って心配で心配で…」
「そうですわね…何かお心当たりなどはありませんこと?」
「それが、まったく…何か怒らせるようなことでもしたのかな?俺、もしかしたら無意識のうちに彼女のこと怒らせるようなことしてたのかも…」
「…だとしたら、誠心誠意を持って早目に謝罪するのがいいと思いますわ…きっと心から謝ればムエルタさんも許してくださることでしょう」
「そうか、でも一体何を謝ればいいんだろう?ホントに何も身に覚えがないんだ…」
「ふむ、そういえば…連絡が取れなくなったのは昨日からとおっしゃいましたね?昨日あった出来事の中にヒントがあるのでは?」
「昨日あったこと…?うーん…」
と、昨日あった出来事を必死に思い出すルドルフ
「…昨日は実家の手伝いから戻った後、リーネさんと夕飯がてら飲みに行って…で、その帰りでリーネさんが泥酔して…」
「ふむふむ…」
「で、もう動けないって言うから近くにあったラブホテルで仕方なくリーネさんの介抱して…」
「ん?今、何て?」
「えっ?リーネさんがもう動けないって言うから仕方なくラブホテルで…」
「そこですっ!」
「えぇっ!?」
「きっとそれですよ!お二人がラブホテルに入っていくところをもしやムエルタさんのお知り合いか誰かに目撃されていて、その方経由でムエルタさんはその事実を知ってしまいショックを受けていたとしたら…」
「そ、そんな…でも、俺達やましいことなんて何も…」
「確かに事実はそうかもしれません…けど、現時点でムエルタさんと連絡が着かないということはやはりムエルタさんはルドルフさんが浮気をしていると勘違いしてかなりご立腹だということに違いありませんわ!」
「確かに、何もなかったとはいえ傍から見たら男女が二人でラブホテルに入るなんてそういうことだもんな…嗚呼、俺は、俺はなんてことをしでかしてしまったんだぁぁぁぁ!!」
地に四肢を着いて激しく落ち込むルドルフ
「過ぎたことを悔いてもどうにもなりませんわ…ここは誠心誠意持って誤解を解くべきかと」
「でも、どうすれば…?連絡だって着かないのに」
「であれば、私の方から連絡をしましょう…私からの連絡であれば多分問題なく返事が返ってくることでしょう」
「そっか、てかいつの間にルタさんの連絡先を…」
「以前、二人でお茶した際に交換したんですの…」
「へ、へぇ…」
「…これでよし、後はムエルタさんからの連絡を待つだけですわ」
「ハーミア、ありがとう…恩に着るよ」
【魔王軍女子寮】
(…はぁ、どうしよう?ス魔法にルドからいっぱい着信とかメッセージ来てるけど、どう話を切り出せばいいか分からない…はぁ)
と、一人もやもやと悩んでいる
”ぴょこんっ♪“
「ん?ハーミアからメッセージ?」
『“ご機嫌麗しゅうムエルタさん、今週の日曜日はお暇でしょうか?もしよろしければまたあの喫茶店でお茶でもしませんか?“』
(ハーミアからお茶のお誘い…あんまり気分じゃないけど、気分転換には丁度いいかな?)
ということで、ムエルタはハーミアからのお誘いをオーケーしたのだった。
…そして迎えた日曜日
「いらっしゃいませ…」
「あの、待ち合わせなんですけど…」
「ああ、ハーミアさんの…あちらです」
と、ハーミアの待つ席へ案内される
「こんにちは、ムエルタさん」
「どうも…」
「随分と浮かないお顔をされておりますわね…もしかして、ルドルフさんのことで何かお悩みでも?」
「っ!?」
「やはり、そういうことですのね…」
「うん、実は…」
と、自分が悩んでいることを正直に打ち明けるムエルタ
「と、いうわけなんだ…」
「ふぅん、やはりあなたは…ルドルフさんが浮気をしていると誤解していたようですわね」
「…どういうことだ?」
「…それはまったくの誤解ですわ、本人にもちゃんと裏は取ってありますので」
「えっ…じゃあ」
「ルドルフさんは浮気だなんてしておりませんわ…これだけは断言できます」
「で、でもじゃあなんでルドはラブホなんかに?」
「聞くところによると、リーネさんが泥酔してしまってそこで一時的に休憩する為に仕方なく入ったそうですわ…」
「そ、そっか…ルド、浮気なんてしてなかったんだ」
「ええ、後で本人達から聞けば分かりますわ…」
「えっ?来るのここに?ルドとリーネが?」
「はい、もうそろそろ来る頃かと…」
と、丁度その時…ルドルフとリーネがやってきた。
「いらっしゃいませ…」
「お?いたいた!おーいハーミア!」
「!?、ル、ルド!」
「ル、ルタさん…」
ルドルフとリーネも一緒にテーブルに着く
「初めてだよね?アタシ、コイツらと一緒に勇者パーティーのメンバーやってる大魔導士のリーネ!よろしくね!」
「ど、どうも…」
「ルタちゃんだっけ?へぇ、話に聞いた通り可愛い娘じゃない…」
と、ムエルタの顔をまじまじと見つめるリーネ
(バ、バレてないよね?今はしっかり擬態してるし、顔だって戦場ではいつも兜かぶってるからこの二人以外知らないはず…)
「リーネさん、まずは最初に誤解させたことを謝らないと…」
「あ、そうだった!ごめんねルタちゃん…アタシのせいで変な誤解させちゃったりなんかして」
「俺の方からも、本当にごめん!俺が軽率だったばっかりに…ルタさんにいらぬ心配をかけてしまって、本当に申し訳ない!!」
二人してムエルタに深々と頭を下げる
「も、もういいって!誤解は解けたんだから、頭上げて!」
「ああ、でもこれだけは言わせてくれ!俺は、八百万の神々に誓ってルタさん以外の女に浮気しないとここに誓う!俺は、ルタさんを心のそこから愛してる!!」
「ル、ルド…」
「どうやら、上手く丸く収まったようですね…」
「あら、マスターさん…」
「こちら、お店からのサービスです…」
と、コーヒーを四つテーブルに並べるマスター
「あ、ありがとうございます…」
「では、ごゆっくりどうぞ…」
「随分と、粋なマスターなのね…」
「ええ、じゃあ冷めないうちにいただきましょうか?」
「そうね」
「はいルド、お砂糖とミルク」
「ありがとうルタさん…」
と、ルドルフは角砂糖を10個ほど掴んで入れ、ミルクもたっぷりと注いだ。
「うげぇ、ルドあんた…そんなに砂糖もミルクも大量に入れたら最早コーヒーじゃなくて別物じゃない…」
「だって、コーヒー苦いじゃん…こうしないと飲めないし」
「フフフ、図体ばっかデカいクセに舌はお子様なんだから…」
「い、いいだろ別に…ねぇルタさん?」
「ああ、そうだな」
と、ムエルタもルドルフと同じように角砂糖とミルクを大量に入れて飲んでいる
「うん、美味しい…」
「…あらあら、うふふ」
「もう、何もツッコまないわよアタシ…」
と、すっかり蟠りも解けて四人はコーヒーを楽しみ、その場を解散する。
「いやぁ良かった良かった…これにて一件落着ってね!」
「もう、これに懲りたらお酒はほどほどにしてくださいませ…」
「分かってるよぉ…にしてルタちゃん、すっごいイイ子だったわね」
「そうですわね」
「んー、でもアタシ…ルタちゃんの声どっかで聞き覚えある気がするんだけど…」
「き、気のせいじゃありませんこと…?」
「そっか、だよね~!」
「………」
To be conntinued...




