第六話
【魔王城】
「…えーそれではこれより、魔王軍定例幹部会を始めます…本日の司会進行はこの私、四天王レヴィアタン補佐官である『ディアブール』が務めさせていただきます…」
魔王軍 四天王補佐 ディアブール…魔王軍きっての頭脳を持ちどんな時も冷静沈着に振舞い、物腰柔らかでスマートな立ち振る舞いから『悪魔紳士』の異名で知られている。
「では早速本日の議題ですが、勇者パーティーについて今後の対策を練りたいと思うのですが…何か意見のある者は?」
「フンっ!まどろっこしい作戦なんか必要ねぇ!要は勇者どもをギタギタのメタメタにすりゃいいんだろう?だったら力でねじ伏せれば問題ねぇ!」
そう発言したのは四天王ベヒーモスの補佐官である『ガロモン』…四天王補佐官にして亜人部隊の軍隊長を務める”ワーウルフ“で武人としては優秀だが頭が弱いのが玉に傷の所謂脳筋バカである。
「ガロモンさん、少しは真面目に考えてください…単純な力押しだけでは通用しないことぐらい少し考えたら分かるでしょう?」
「あん?うっせーな!俺はまどろっこしいのは嫌いなんだよ!」
「ふぅ、やれやれ…これだからただ力任せに暴れるしか能のない野蛮な亜人風情は…」
「おいテメェ!今俺のことバカにしただろう!?オモテ出ろゴラァ!今日こそテメェのそのすかした面ボコボコにしてやる!」
「まぁまぁ落ち着きなさいよガロモンちゃん、今は大事な会議中よん」
ガロモンを宥める艶っぽい女幹部、四天王 アラクネの補佐官である『ハートリア』
男を惑わす”夢魔“であり、魔王軍の医療部隊の部隊長も務めている優秀な女医でもある
「そうですよガロモンさん、今は大事な会議中…お静かに願います」
「あんだと?テメェ悪魔騎士、新入りのクセにこの俺に意見しようとは生意気な…」
「新入りであろうとなかろうと、私達四天王補佐は互いに平等…上も下もありませんよね?」
「うるせぇ!俺に偉そうに指図するんじゃねぇ!」
ムエルタに殴りかかるガロモン、それに対してムエルタも剣を抜いて応戦しようとする
「お止めなさい!」
「っ!?」
「っ!?」
一触即発寸前でディアブールが二人を一喝して喧嘩を止める
「そこまでにしていただきましょうかお二人とも、我々は志を同じくとする仲間なのです…このような無用な争いはいけません!少しは頭を冷やしなさい」
「…申し訳ございません、ディアブール殿」
「チッ!興醒めだぜ、やってらんねー」
席を立ち勝手に出て行くガロモン
「お待ちなさい!まだ会議は終わって…はぁ、全くやれやれ」
「ホント、相変わらず自分勝手なんだからガロモンちゃんは…」
「ええ、よくあれで栄えある魔王軍の幹部が務まって…イタタタ」
と、急にお腹を抑えて苦しみだすディアブール
「ディアブール殿?」
「いえ、ここ最近少しばかり胃の調子が悪くて…イタタ」
「それは、お気の毒に…」
「大変ねぇ、後で良く効く胃薬処方しといてあげるわ」
「ありがとうございます…申し訳ございませんが今回の会議はこれにて終了とさせていただきます」
「は、はい…お疲れ様でした」
「ええ、お疲れ様でした…イタタ」
お腹を抱えながら出ていくディアブール
「ふぅ、さてと…思いのほか早く終わったことだし、ムエルタちゃんこの後一緒にランチにでも行かない?」
「えっ?よろしいので?」
「いいのよ、前々からあなたとは少しじっくりお話したいって思ってたところだし…」
「は、はぁ…」
「というわけで、ランチにレッツらゴー!」
【魔王城 食堂】
「いっただっきまーす!」
「いただきます」
兜を脱ぎ食事を始めるムエルタ、そんなムエルタの顔をじっと見つめるハートリア
「…何ですか?さっきから私の顔じっと見つめたりなんかして」
「いいえ、普段兜で顔隠してるからどんな顔か分かんなかったけど意外と可愛い顔してるのね…」
「え、あ、ありがとうございます…」
「んふ、ねぇねぇムエルタちゃんって彼氏とかいるの?」
「ぐふぉっ!?」
いきなりの唐突な質問をされ飲みかけていたスープをブッと吹いてしまうムエルタ
「げほっ、ごほっ!い、いきなり何てこと聞くんですか!?」
「いいじゃないの、女の子同士だもの…単なる恋バナよ」
「こ、恋バナ…ですか」
「で?どうなの?彼氏いるの?」
「え、えっと…」
ここでムエルタは悩んでいた、彼氏はいるにはいるがいると答えてしまえば根掘り葉掘り色々聞かれてしまいボロを出してしまうかもしれない…けど、たとえ嘘であったとしても愛するルドルフとの関係を自分で否定してしまうのはどうにも心苦しい…そういったことを考えて真実を伝えるべきか否か葛藤していたのだった。
「う、う~ん…」
「ムエルタちゃん?どうかしたの?」
「い、いえ!何でもありません!」
と、答えに困ったムエルタは自分の食事を速攻で食べ終えて席を立った。
「あーそうだー、私この後イフリート様に急ぎの用で呼ばれてるんでしたー、なのでこれでお先に失礼させてもらいますー、ではでは…」
あからさまな棒読みの口調でそそくさとその場を去っていくムエルタ
「…?」
(…はぁ、どう答えていいか分からなくて思わず逃げてしまった…絶対変に思われた、どうしよう…う~ん)
・・・・・
【人間界】
一方その頃、ルドルフは…
「…よし、これでここは終わりと」
「おーいルドルフやー、そろそろ昼にすっぺよー」
「おーう、今行くでよー!」
ルドルフは実家の農園の作業を手伝いに来ていた
普段勇者パーティーのメンバーは魔王軍の襲来がない時などはこうして各々で地道に働いている。
ラミレスは王国の騎士団の”特別剣術指南役“として騎士達に剣術の指導をしており、リーネは魔法学校の非常勤講師として若者達に魔法を教えており、シドウはシノビとしての足の速さや身軽さを生かして配達業をやっており、ハーミアは教会にて聖職者として働いている。
ルドルフはこうして実家の農園の手伝いをしている…ルドルフの実家の農園は、広い規模の農地を持っており品質も国の中で最高峰と名高く、貴族や王家へも献上している。
「ふぅ、やっぱしルドルフがいてくれた方が作業が捗り易いっぺさ…」
「そったらことねぇって、まだまだ父ちゃんには敵わんっぺよ」
「ガッハッハッハ!しかしのう、オラももういいかげんイイ歳じゃ…身体も最近思うように動かん」
「ほうかぁ、父ちゃん今年でいくつんなるだ?」
「もう64だべ…いっそのことお前が農園継いでくれたらのう…オラものんびり隠居できるもんだがのう」
「何言ってんだっぺ父ちゃん、それに俺は魔王軍と戦ってこの国ば守らんとイカンのだで…」
「分かっとるよ、でもせめてよぉ…孫の顔ば拝ませてくれんね?」
「ぶふぉっ!?ま、孫!?」
父から唐突にそんなことを言われて溜まらず飲んでいたお茶を吹き出してしまうルドルフ
「そうじゃ、早う嫁っこさこさえて孫ば見せてくんろぉ」
「バ、馬鹿言うでねぇで父ちゃん!それに孫だったら姉ちゃん達んとこにいっぱいおるらに…」
ルドルフには三人の姉がいていずれも余所に嫁いでおり、三人合わせて八人もの子供がいる
「そらぁよオメェ、孫は孫でも”外孫“と”内孫“じゃえれー違いだで?それにここ最近は三人ともほとんど帰ってこんもん…母ちゃんもいっつも寂しいわぁっちゅうてぼやいとる」
「…そっか、姉ちゃん達の嫁ぎ先もそこそこ大きい農家だからねぇ…最近はどこも人手不足でてんてこ舞いみたいだでなぁ…」
「んだ、このままじゃ先祖代々から続くウチの農園が途絶えてしまうべ…せめてイイおなごぐらいおらんのか?ん?」
「いや、彼女は…一応、いるっちゃいるけどさ」
「何っ!?オメェいつの間に彼女なん作っとっただぁ!?」
「いや、いちいち報告する義務なんねぇっぺよ…」
「いんや!こりゃ一大事だべ!今すぐそのおなごと籍ば入れろ!そして今すぐ農園を継げ!」
「ちょ、父ちゃん落ち着けって!いくらなんでも話が急過ぎだ!」
「こうしちゃおれん!今日は宴じゃ!ルドルフの初彼女を祝って親戚一同集めて盛大に祝おう!」
「ちょ、やめてくれ父ちゃん!彼女ができたぐらいで大袈裟な…」
【勇者パーティーの宿】
「ただいま…」
「おうルド!お疲れぇ!」
「リーネさん、ラミレス達はまだ帰ってないんだ…」
「うん、みんな今日は遅くなるってさ」
「そっか…」
「それよりお腹空いたぁ、ご飯にしよ!」
「分かったよ、でもラミレスもシドウもいないし…俺もリーネさんもあんまり料理は得意じゃないしなぁ」
「うーん、じゃあたまには二人で外に食べに行く?」
「まぁ、そうするしかないね…」
と、二人して外食をすること…やってきたのはリーネの行きつけの居酒屋
「とりあえずアタシはビールにしよっと、ルドは?何飲む?」
「えっと、じゃあジャスミン茶で…」
「えー、一緒に飲もうよー」
「…いいよ、何回も言ってるけど俺そんなにお酒強くないんだって」
「ちぇー、付き合い悪いわね…いいもん、アタシだけ飲んじゃうから」
「…まぁ、ほどほどにね」
と、それから二人は食事をしてその後二、三軒ほど店をはしごしてすっかり夜中になっていた。
「ちょ、リーネさん…しっかり立って、帰るよ」
「えー、やぁだぁ…まだ飲みたいよぉ、ひっく」
「ダーメ、もうフラフラじゃないか…だからあれほどほどほどにしてって言ったのに…」
「うひひひ、あれぇ?上手く立てにゃい、ルド抱っこしてぇ~」
「な、何言ってんの!?ほらちゃんと自分で歩いて立って!肩ぐらいは貸すから…」
「にへへへ~」
リーネに肩を貸しながら夜の道を歩くルドルフ、するとその時だった…。
「…うぅ、気持ち悪い」
「ちょ、大丈夫?しっかりして、宿までなんとか我慢して!」
「無理無理、もう動けない…うぅ」
「…弱ったな、タクシー拾うにしても深夜料金で高いしなぁ」
「ん~、ねぇ少しでいいからどっかでひと休みしたい…」
「どっかって、こんなところで休めるとこなんて…」
「大丈夫、一個だけ心当たりがあるから」
「??」
と、リーネに教えられてやってきたのはなんと『ラブホテル』だった。
「ちょ、リーネさんここって…」
「大丈夫、こういうとこってちょっと休憩するだけでも使えるから」
「いや、でも…」
「大丈夫、だって…何もしないからさ、それよりもう限界…吐く」
「わ、分かったってば!もう少し辛抱して!」
と、仕方なくラブホへ入るルドだった…
だがしかし、次の瞬間だった…
「んー!たまには人間界で飲むのもいいもんねー!魔族領と比べるとちょっと値は張るけど自分へのご褒美だと思えば…ん?あれって」
二人がラブホに入ろうとしたところを偶然見てしまったハートリア
(わぉ、あれって勇者パーティーの重戦士ルドルフじゃない?しかもあそこって…おほほほ、思わぬところでとんだスクープだわ…)
と、早速ス魔法でこっそりと撮影する
【翌日】
「ねぇねぇムエルタちゃん!これ見て!」
「…何ですか?」
「昨日偶然激写したスクープ写真よ!まぁ見て見て」
「…んー、っ!?」
写真を見たムエルタは思わず驚愕した、それもそのはず…そこに写っていたのはルドルフが別の女と一緒にラブホに入ろうとしているところだったのだから
「こ、これって…」
「すごいっしょ?勇者パーティーのメンバー同士の大熱愛スキャンダル!これパパラッチにでも売りつければ結構儲けられるかしら…」
「や、やめて…」
と、ムエルタはハートリアからス魔法を取り上げると容赦なく真っ二つに斬り裂いた。
「あーっ!アタシのス魔法ー!」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
「どうしてくれんのよ!?これ最新モデルで高かったのに…って、ムエルタちゃん?」
ムエルタは青ざめた顔をして荒い息をして脂汗をかいていた
「そんな、嘘よ…まさか…ハァ、ハァ」
「ム、ムエルタちゃん?大丈夫?顔色悪いし、少し落ち着いた方が」
「うぅ、嫌…いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と、大粒の涙を流して泣き崩れてしまった
「ちょ、ムエルタちゃん!?お、落ち着いて!どうしたのよいきなり!?」
「うぅ、うえぇぇぇん!!」
To be continued...




