第四話
ルドルフとムエルタの交際が始まってからそろそろ一ヶ月が経とうとしていた
二人は最高の記念日にしようと綿密にデートの計画を練っていた。
【一ヶ月記念日 前日】
「もしもしルタさん?いよいよ明日だね…」
『うん、そうだな…まさか一ヶ月もこうして続くなんて思わなかった』
「そうだね、でもまだまだこれから…二ヶ月、三ヶ月、それから先もずっとずっとルタさんと一緒にいたいな…」
『ルド…それってもうほとんどプロポーズだぞ…』
「あ、そっかごめん!まだそういうつもりじゃ…変に期待させてごめん」
『フフフ、いいよ…じゃ、明日楽しみにしてるから!』
「うん、じゃあおやすみ…」
『おやすみルド…大好きだよ♡』
「俺も…大好きだよ、ルタさん」
・・・・・
【翌日】
デートの当日、待ち合わせ場所に早く来てそわそわしながらムエルタが来るのを待つルドルフ
(ルタさん、早く来ないかな…ワクワク)
が、しかし…待ち合わせの時間になってもムエルタは現れなかった。
「遅いなルタさん、何かトラブルでもあったのかな…?」
するとその時だった…。
“ヴヴヴ、ヴヴヴ…”
「ん?通話…あ、ルタさんからだ!もしもし?」
『あ、ルド?ごめん…もう、そっちは待ち合わせ場所に着いちゃってるよな?』
「うん、いるけど…どうしたの?」
『ごめん、今日のデートなんだけど…行けそうもないや』
「えぇっ!?、ど、どうかしたの!?」
『実は、今朝からすっごくお腹が痛くて…とても動けそうもないんだ』
「そ、そんな…大丈夫なの!?」
『大丈夫、心配いらない…ごめんな折角の記念日だってのに』
「いいよ、気にしないで…ルタさんの身体が第一だからさ、ゆっくり休んでよ」
『うん、ごめんな…またちゃんと埋め合わせはするから』
と、言い残して通話が切れた
「ルタさん…」
ただその場に呆然と立ち尽くすルドルフ
(…大丈夫かなルタさん、心配はいらないとは言ってたけどやっぱり心配だ…こういう時、彼氏だったら本来はお見舞いに行くべきなんだろうけど、魔族領じゃ行くに行けないしな…でも、今もルタさんが苦しんでいるんだとしたらたとえ何もできなくても俺が傍について励ましてあげたい…もう迷う必要は、ない!)
そう決意したルドルフは単身魔王城に乗り込むことにした。
・・・・・
【魔王城】
魔王城の敷地内では、魔王軍の構成員の為の寮が完備されており構成員達の衣食住が賄われている
もちろん『女子寮』もちゃんとあってムエルタを始めとした女性の構成員はここで暮らしている。
「…はぁ、やっと薬が効いてきたかも…にしても、なんでこんなタイミングかな?」
“ドゴォォォォン!!”
「ふえぇ!?何!?何の音!?」
『緊急事態発生!緊急事態発生!魔王城内に侵入者が現れた模様!各員は速やかに対処せよ!繰り返す、緊急事態発生…』
「し、侵入者…こんな時に、あイタタタ…」
ベッドから起き上がるムエルタ、するとその時下っ端の構成員がムエルタの部屋のドアを慌てた様子でノックする。
「ム、ムエルタ様!一大事です!」
「ど、どうした!?」
「侵入者が…勇者パーティーの重戦士 ルドルフが単身で攻めてきました!」
「えぇっ!?」
下っ端からの報告に耳を疑うムエルタ
(ルドが?なんで!?しかもたった一人でなんて…まさか、私の為に?)
「うおぉぉぉ!!」
「なんとしても取り押さえろ!絶対に城の中に入れてはならん!」
「なんてこった、よりによって魔王様のご不在の時に…」
「フッ、どうやら我らの出番のようだな…」
と、颯爽と前に出る四天王達
「おぉ!四天王が全員勢揃いだ…」
「フン、どいてろ三下ども…怪我しても知らんぞ」
【獄炎の悪魔 イフリート】
「あれしきの人間一匹、我輩がひと飲みにしてくれようぞ」
【大海の悪魔 レヴィアタン】
「パオーン!某が一撃で踏みつぶしてくれよう!」
【剛力の悪魔 ベヒーモス】
「うふん、美味しそうな子ねぇ…食べちゃいたいわ」
【蜘蛛の悪魔 アラクネ】
「さぁ来い重戦士!我ら魔王四天王が相手だ!」
ルドルフの前に立ちはだかる四天王達、だが次の瞬間…
「邪魔だぁ!どけぇぇぇ!!」
「あべしっ!」
「ぶべらっ!」
「ひでぶっ!」
「たわばっ!」
なんと四天王を四人いっぺんに蹴散らしてしまった。
「な、なんてことだ…四天王の方々をあんな一瞬で屠ってしまうなんて」
「こいつ、こんな強かったのか?」
四天王を蹴散らして魔王城内に入っていくルドルフ
「…ハァ、ハァ、どこにいるんだ?ルタさん…」
するとそこへムエルタから通話が入る
「あ、ルタさん!もしもし?」
『ちょっとルド!これは一体どういうことだ!?一人で殴り込みなんて何考えてんだ!?』
「ご、ごめん…やっぱり居ても立っても居られなくてつい…」
『つい、じゃないよ全く…とにかく、今から言う場所まで来て』
「う、うん、分かった…」
ムエルタから場所を指定され二人は落ち合うことにした。
「えっと、ここかな…?」
「ルド!こっちこっち!」
「あ、いた!」
「もう、心配したんだぞ!」
「ご、ごめん…あ、そうだ!これ…」
「これは?」
「シドウにもらった腹痛によく効く丸薬だよ、これを渡したくて…」
「えっ…じゃあわざわざこれを渡す為に?」
「うん…でもやっぱり余計なお世話だったかな?」
「ううん、その気持ちだけで十分嬉しいよ…ただ」
「??」
「私のこの腹痛なんだけど…別に病気でもなんでもなくて…その、ただの『生理』、なんだ」
「…へっ?せ、生理って、あの?女の子の、月イチで来るっていうあれ?」
「うん…」
「じゃあ、病気とかじゃないってこと?」
「うん」
「…っ、はぁ~っ、よかったぁ~!」
安心して力が抜けてその場にしゃがみ込むルドルフ
「ご、ごめん…ちゃんと言えばこんな大事にならずに済んだのに…」
「ううん、俺が勝手に病気だって早とちりしただけだから…」
「ルド…」
「じゃあそういうことだから俺はこれで帰るよ…」
「う、うん…気を付けてな」
「あぁ、じゃあまた」
「…あ、ルド!ちょっと待って!」
「ん?どうかし…」
すると次の瞬間、ムエルタはルドルフの頬にチュっとキスをした。
「っ!!?」
「今日は、来てくれてありがとう…一応これは今日のお礼」
「ル、ルタさん…」
「ほら、早くみんなに見つかる前に早く帰りなって!」
「そ、それもそうだな…じゃあまた!」
・・・・・
【一週間後】
今日は改めて二人の記念日デート、洗面所で身だしなみを整えるルドルフ
「あら、ルドルフさん…おはようございます」
「あ、ハーミア…おはよう」
「…そのお召し物は、どこかへおでかけですの?」
「ん?あぁ、まぁね…おっと、もう出ないと!それじゃ!」
「はい、お気をつけて…ん?」
「??、どうかした?」
「いえ、なんでもありませんわ…」
「そう、じゃあ…」
ルドルフを見送るハーミア
(…気のせいでしょうか?今一瞬だけルドルフさんから魔族の気配のようなものを感じたような…嫌な予感がしますわね)
【デート待ち合わせ場所】
「あ、ルタさーん!」
「ルド!待たせたな!」
「ううん、俺も今来たところだから…もう体調は大丈夫?」
「うん、もう平気…心配かけて悪かったな」
…二人が話している陰でハーミアが変装して二人の様子をこっそりと伺っている。
(…おや?いつになく念入りにめかし込んでいるかと思えばデートですか、そういえば前にリーネさんが話してましたわね…“ルドに彼女ができた”、と…通りでここ最近一人で出かけることが多くなったり、あんなに無頓着でしたのに身だしなみにも気を使うようになったり…こういうことでしたの…)
「…き、今日の服も、か、可愛いね」
「そうだろう?記念日デートの為に思い切って奮発して買ったんだ!褒めてもらえて嬉しいな♡」
(……あの女性がルドルフさんのお相手の方ですか、たしかにすごく可愛らしい…あんな素敵な女性と一体どこで出会ったのでしょうか?まぁ、このご時世出会いの場はいくらでもあるとは思いますが…)
「じゃあ行こうか」
「そうだな」
移動する二人、二人の後をこっそりとつけていくハーミア
二人がやってきたのは遊園地
「わぁ、ここが遊園地…」
「ハハッ、そっか…魔族領にはこういう娯楽施設ってあんまりないんだよね…」
「ああ、まぁな…でも、魔族領だって中々悪くはないんだぞ?人間界みたくあんまりごたごたしてなくて静かで過ごしやすいし、温泉とかもあるんだよ?」
「へぇ、温泉かぁ…いつか行ってみたいな」
「そうだな、その頃には人間も魔族も仲良く暮らしていることだろうな…」
「ああ」
(…よく聞こえなかったけど、今“魔族”がどうとか?もしかして…あの女性魔族なのでは!?間違いありません、きっとルドルフさんはあの女にたぶらかされているに違いありませんわ!)
「おっ、向こうでソフトクリーム売ってるよ!」
「あ、それ知ってる!冷たくて甘いスイーツだろう?」
「うん、よく知ってるね…魔族領にはあんまりないはずなのに」
「ス魔法の検索機能で調べた、デートの計画立ててる時にルドと一緒に行きたい場所とか食べたいものとかリストアップしといたんだ」
「へぇ、流石はルタさんだ」
(…なんだか、すごく楽しそうですわ…まるで本物のカップルみたいですわ、いやまだ油断はなりませんわ!目一杯油断した隙を突いてルドルフさんの首をかくつもりなのかもしれませんわ!もう少し様子を見ましょう…)
…その後、ハーミアは二人のデートの様子をずっと観察し続けた
だが二人は只々純粋にデートを楽しんでいるだけなのであった。
(…結局、今日一日普通にデートしているだけでしたわね)
「今日は楽しかったぞ!また来たいな!」
「うん!また一緒に来よう!約束だ!」
「じゃあまたね!」
「うん、また!」
と、何事もなくデートはお開きとなった。
(…結局、何もなかったですわ…いやでも、彼女の正体が悪魔であることは確実なはず!絶対に化けの皮を剝がしてやりますわ!)
と、今度はムエルタの尾行を開始するハーミア
【魔族領】
(…やはりここは魔族領、一応変装しているとはいえ私の正体がバレないように気をつけなければなりませんわね)
引き続きムエルタの尾行を続行するハーミア、そしてとうとう魔王城まで到着してしまった。
(…魔王城まで来てしまいましたわ、まさか彼女…魔王軍の関係者とでもいうのですの?)
すると、城の手前でムエルタは一度立ち止まり変身魔法を解除して本来の悪魔の姿に戻る
(やっぱり悪魔でしたのね…魔族の分際で人間であるルドルフさんと交際するなんて何を企んでいるのかしら?)
「…あ、おかえりなさいませ!ムエルタ様!」
「ああ、今帰った…」
(…っっっっ!!?、ム、ムムム、ムエルタ、ですって!!?ムエルタといったらあの四天王補佐である悪魔騎士のあのムエルタ!?こ、これは由々しき事態ですわ…)
・・・・・
【翌日】
「フハハハ!今日こそは決着をつけてくれる!勇者ども!」
「望むところだ!」
「あれ?なんかイフリートちょっとケガしてない?」
「ん?あぁ、これか?実は身に覚えがないんだ…先週ぐらいだったか、何故か四天王全員いつの間にか大怪我を負っていてな…」
「な、なんじゃそりゃ…」
説明しよう、あの時ルドルフが帰った後にムエルタは四天王及び構成員達の記憶を魔法で消して証拠を隠蔽したのである。
「まぁそんなことはどうでもいい!勝負だ!」
「望むところだ!みんないくぞ!」
「おう!」
両者入り乱れての乱戦となる、その最中ルドルフとムエルタはこっそりと抜け出して二人きりになった。
「ふぅ、やっと二人きりになれたな…」
「ああ…」
「あ、そうだ…実は今日お弁当を作ってきたんだ!」
「えっ!?ルタさんの手作り!」
「うん、まぁ何度も練習して漸く形になったからルドに是非食べて欲しくて…」
「食べる食べる!彼女の手作り弁当かぁ、俺はなんて幸せ者なんだ…」
「もう、弁当一つで大袈裟だな…じゃあ、はい」
お弁当の蓋を開けてルドルフに手渡す、その中身はルドルフの顔を模したおにぎりとミニハンバーグ、ブロッコリーやミニトマトなどが入った可愛らしいお弁当だった。
「なんて愛らしいお弁当なんだ…食べるのが勿体ない」
「まぁ気持ちは分かるけど折角作ったから食べてよ」
「それもそうだ、じゃあ…いただきます!」
お弁当を一口食べるルドルフ
「ど、どうだ?」
「…うぅ、世界一美味しいよぉ…こんなに美味しいお弁当は初めてだ」
「ホ、ホントか?良かった、一生懸命練習したんだ…美味しくないなんて言ったら三枚に卸すところだった」
「そ、そんな!言うわけないじゃないか!でも本当に美味しいよ、特にこのハンバーグが一番美味しい」
「そうだろうそうだろう、今日のはとても良くできたんだ」
「うん、美味しい美味しい…うぐっ!?」
「ほら、そんなに慌てないでゆっくり食べなって!弁当は逃げやしないよ!」
「へへへ、面目ない…」
「フフフ…」
と、二人幸せな時間を過ごしていたその時だった…。
「…やっぱり、そういうことでしたのね」
「っ!?」
「ハ、ハーミア!?」
「…さぁ、どういうことか説明していただきましょうか?」
To be continued...




