第二話
…前回のあらすじ、魔王軍幹部である『悪魔騎士 ムエルタ』に一目惚れしてしまった勇者パーティーの重戦士の『ルドルフ』
勇気を出して告白するもムエルタは何か裏があると思い込みルドルフに刃を振るうが、ルドルフはそれでも一歩も引かずにムエルタへの想いを告げる
ルドルフの想いが本物だと確信したムエルタは、彼の想いを受け止めめでたく交際することになったのであった。
【魔王城】
「さぁ野郎ども!出撃だ!」
「お待ちくださいイフリート様!今日の出撃、私も同行してもよろしいでしょうか?」
「ムエルタ…ま、まぁついて来るのは構わんがいいのか?お前今日確か非番だったろう?ホントにいいのか?」
「ええ、構いません!どうか私もお供させてください!」
「わ、分かった…お前のやる気を買ってやろう!よし、では改めていくぞ野郎ども!」
「おぉー!」
・・・・・
「フハハハハハ!恐れ慄け人間ども!」
「キャー!!」
「そこまでだ!魔王軍!」
颯爽と現れる勇者パーティー
「皆さん逃げてください!」
「ゆ、勇者様だ!」
「あらら、今日は例の悪魔騎士もいるのね…」
「悪魔騎士か、イフリート一人でも厄介なのだがな…」
「みんな!ムエルタは俺が引き受ける!」
「ルド!」
「心配するな!俺なら平気だ!」
「いいだろう、今日こそ決着をつけてくれる!場所を変えるぞ、ついてこい!」
場所を移す二人、みんなから見えなくなったところで…
「………」
「…ここまでくれば、問題なさそうだ」
「あぁ」
互いに兜を外して素顔を出す
「ふぅ、やれやれ…二人きりで会うのも一苦労だな」
「そうだな、なぁ…ルドルフ?」
「ん?」
「ルドルフは…その、『ス魔法』は持っているか?」
説明しよう、『ス魔法』とは…正式名称『スマート魔法通信機器』という離れた相手とも通話やメッセージのやりとりなどができる便利なマジックアイテムなのだ。
「ああ、もちろん持ってる」
「なら、私とアドレス交換しよう!」
「そうだな、よし!そうしよう!」
「やった!えっと、まずは互いのス魔法のQR紋章を読み込ませて…」
と、互いに連絡先を交換する
「ん、これでできたはず」
「うん!バッチリ!これでいつでも連絡が取れるな!」
「ああ!」
「あ、後それとなルドルフ…」
「ん?」
「その、お前ってさ…仲間達から『ルド』って呼ばれてるよな?」
「ああ、まぁそうやって呼ぶのは幼馴染であるラミレスかリーネさんぐらいだけど」
「そっか、それでなんだけど…わ、私も呼んでいいか?ル、ルドって」
「!?、も、もちろん大歓迎だ!じ、じゃあ俺も君のこと『ルタさん』って呼んでいいかな?」
「ル、ルタさん!?」
「嫌か?」
「ううん!全然嫌じゃない!」
「よ、よかった…じゃあ、早速…ル、ルタさん」
「ルド…」
「ルタさん」
「ルド」
「ルタさん!」
「ルド!」
するとその時だった…
“チュドーンっ!!”
「「!?」」
「くっ!やるではないか貴様ら…」
「これでトドメだ!『ムーンライトセイバー』!!」
「ぐあぁぁぁぁ!」
ラミレスに斬り伏せられるイフリート
「き、今日のところは一先ずこれくらいにしといてやる!お、覚えてろぉ!」
手下達を引き連れて撤収していく
「…なんか、あっちももう終わっちゃったみたいだな」
「みたいだな…一先ず、私も退散した方がいいっぽいな」
「そうだな、ここにいたら色々マズイ…」
「そ、そうだな…じゃあまた!」
「うん、また!」
そう言って去っていくムエルタ
「おーい!ルドぉ!」
「お、おうみんな…」
「大丈夫か?ムエルタは?」
「あ、ああ…すまない、取り逃がしてしまった」
「そ、そうか…まぁでもお前が無事でよかったよ」
「ラミレス…」
「さ、帰ってメシにしよう!腹減ったぁ!」
「そうだな」
・・・・・
【勇者パーティーの宿】
『“ルドへ、早速テスト送信してみたぞ!ちゃんと届いたか?”』
『“あぁ、バッチリ届いているぞ!”』
互いにス魔法でメッセージのやりとりをする
『“そっかよかった!ところで話は変わるんだけど、実は明日は魔王様が不在で襲撃お休みなんだ…だからもしよかったら二人でどこか出かけようか?”』
『“もちろんいく!もしかしてこれって、世に言うデートのお誘いというものなのでは!?”』
『“デート…なんか、そう考えると途端に緊張してきたな…男の人と二人きりで一緒に出掛けるなんて初めてだから…”』
『“俺も初めてだ、そんな初めてを共に迎えられることを俺は誇りに思うよ!”』
『“まったく大袈裟だなルドは…じゃあ明日九時に『ガーゴイル公園前』で待ち合わせで”』
『“了解した、今から楽しみで仕方ないよ!”』
『“私もだよ、じゃあまた明日!ルド大好き♡”』
「…明日か、待ち遠しいなぁ…フフフ」
「ねぇ~ルドぉ!ちょっと聞いてよぉ!」
「どわぁ!リ、リーネさん!?」
「さっき魔法学校時代の友達に誘われて合コン行ってきたんだけどさぁ、イケメンいっぱいいるって聞いて張り切って行ったのにいざ行ってみたらゴブリンみたいなキモメンしかいなくて騙されたんだけどぉ!」
「そ、それは災難だったね…」
「てなわけでちょっとアタシのヤケ酒に付き合いなさいよ!」
「え、えぇ…やだよ、リーネさんのヤケ酒に付き合うと長いんだもん…それに俺明日予定あるから」
「何よ、アタシと一緒に飲むのが嫌だっての!?」
「そ、そうじゃないけど今日ばかりはその…」
「問答無用!とにかく今日は朝まで付き合ってもらうわよ!」
「ひ、ひぃ~!」
…結局その後、ルドルフはリーネのヤケ酒に無理矢理突き合わされて朝までリーネの愚痴を聞かされ続けたのでした。
【翌朝】
「ん?もう朝?…って、こんなことしてる場合じゃない!早く行かなきゃ!」
急いで出掛ける準備をするルドルフ
用意ができたところでダッシュで待ち合わせ場所へと向かう
「んん~?あれ?ルド…?すぴぃ~」
・・・・・
【ガーゴイル公園】
公園の前で一人ルドルフの到着を待つムエルタ
(ルド…遅いなぁ、何やってんだろ?メッセージ送っても全然既読にならないし…)
「ル、ルタさぁぁぁぁん!!」
「!!?」
全速力で走ってきたルドルフ
「ご、ごめん!待ったよね!?ホンっトにごめん!」
「い、いや…そこまで待ってないから大丈夫だぞ?…何かあったのか?」
「ああ、実はかくかくしかじかで…」
と、遅れた訳を説明するルドルフ
「プッ!アハハハハ!それは災難だったな!ルドもリーネも!」
「でしょ?とんだとばっちりだよこっちは…おかげで大切な人生初デートに遅刻するし」
「大丈夫だよ、私はちっとも気にしてないから…そう落ち込まないで」
「ルタさん…うぷっ」
「ル、ルド?」
「ごめん、なんか今になって急に吐き気が…うっ」
「はわわわ、し、しっかりしろルド!…かの者の体を蝕みし魔をここに払い除けん、『キュアエナジー』!」
と、魔法の呪文を唱えてルドルフにかける
「こ、これは…『解毒魔法』?」
「大丈夫か?二日酔いに効くかどうかは試したことないから分からないが…」
「ああ、なんか大分楽になった気がするよ…ありがとう」
「そ、そうか…」
「ふぅ、ごめんね…重ね重ね迷惑かけちゃって…」
「いいんだって!私は全然迷惑だなんて思ってないから!」
「ルタさん…」
「そ、それより気分はどうだ?」
「ああ、もう吐き気は治まったよ…けど、まだちょっと気持ち悪いや」
「そっか、これじゃデートどころじゃないな…今日のところは大事をとってもう帰った方がいい」
「うん…」
「大丈夫、そんな残念そうな顔をするな!今日がダメでも、いつか必ずリベンジしよう!二人の人生初デート!」
「うん、分かったよ…こんな調子でデートしたところでちっとも楽しめないもんね」
「そういうこと、一人で帰れそうか?」
「うん、なんとか…」
「そっか、じゃあまた!」
「うん」
【勇者パーティーの宿】
「…あー、気持ち悪い」
「大丈夫ルド?ごめんねー、アタシが昨日無理に飲ませすぎたばっかりに」
「いや、いいんだって…はぁ」
「あ、そうだ…シドウが薬作ってくれたよ、シノビ一族に伝わる秘伝の薬なんだって、めっちゃ苦くてすっごい不味いけどこれを飲めば二日酔いなんてイチコロだってさ」
「あ、ありがとう…いただきます…」
と、薬を手渡され飲んでみると…
「ゴクッ…っ!?、ぐっ!ごはぁっ!?」
あまりの衝撃的な不味さに気を失ってしまったルド
「ル、ルド!?ちょっと、大丈夫なの?ねぇルド!ルド~!」
【夜】
「あー…ひどい目にあった」
「ふむ、どうやら少々成分が効きすぎたようだな…」
「まったくとんでもないな、シノビ一族の秘伝の薬…」
「そういうな、拙者の生まれた国の諺で『良薬は口に苦し』という言葉がある…不味くて苦いのは良く効く証拠、現にもう何ともないであろう?」
「え?ああ、うん…寝て起きたら嘘のようにスッキリしてたけど」
「あらあら、効果は本物のようですわね…それでは私のお株を奪われてしまいそうですわ」
「いやいやいや!あんな気絶するくらい不味い薬飲まされるのはまっぴら御免こうむるって!」
「そうだよ!アタシ達にはハーミアが必要なんだよ!」
「あらあら…フフフ」
「そ、そこまで嫌がらなくても…」
その後、部屋に戻ってムエルタとス魔法で通話する
「…てなことがあったんだよ」
『…アッハッハッハ!ホントに面白いなルドのパーティーは!』
「ああ、まぁな…最高の仲間達だよ…」
『そっか、まぁでも良かったな…すぐに良くなって』
「うん、と言ってももう二度とあんな不味い薬飲むのは嫌だけどな…」
『そうだな…ところでさ、初デートのリベンジいつにしようか?』
「そうだな、来週の土曜日とかは空いてる?」
『土曜?土曜は、えっと…あ、ダメだ…その日は魔王軍幹部定例会議の日なんだ』
「そっか、忙しいんだな…」
『うん、こっちも四天王補佐に昇格してやることが山積みでな…あまりゆっくり休みもないんだ』
「うん、分かった…忙しいなら仕方ないね、大丈夫!あまり無理にとまでは言わないからさ」
『ルド…』
「じゃあ、またお互いの予定が合ったら改めてデートしよう」
『うん!楽しみにしてる!』
「じゃあ、またね…おやすみ」
『うん、おやすみ…あ、ルド!』
「うん?」
『…大好きだよ、ルド』
「うん、俺も…好きだよ、ルタさん」
To be continued...