第十六話
【年末 大晦日】
今年も残すところ後僅かとなった頃、ラミレス達勇者パーティーは王家主催の忘年会に招待され城に来ていた。
「よく来てくれた、勇者諸君!今宵は貴殿らの日頃の労を労う宴でもあるのだ、今宵は無礼講じゃ!心ゆくまで存分に楽しんでいくがよい!」
「ありがとうございます、国王様!」
国王の粋な計らいで城のお抱えシェフが作った豪華な料理に舌鼓を打つ
「うっま!これうめぇぞ!」
「ん~!このお酒も美味しい~!いくらでも飲めちゃうわぁ~!」
と、忘年会を楽しんでいると…
”ヴー、ヴー、ヴー”
(ん?おっと、ルタさんから通話だ…)
「あら?ルドルフさんどちらへ?」
「ああ、ちょっとルタさんから通話きてちょっと話してくる」
「そうでしたか、ごゆっくりどうぞ…」
「ああ」
と、一旦宴の席を外してムエルタと通話するルドルフ
「もしもし?」
『もしもしルド?スマンな年末の忙しい時に急に連絡なんか寄越してしまって…大丈夫だったか?』
「全然大丈夫だよ、ルタさんは今何してるの?」
『私は今は魔王軍の忘年会の最中なんだ、ちょっと休憩がてらふとルドと話したいなぁって思って…』
「へぇ、そっちも忘年会やってたのか…やっぱ人間も魔族も考えることは一緒なんだな」
『そっちもってことはルド達も忘年会か?』
「そうだよ、しかも王家主催の忘年会に招待されちゃってさぁ…食べたこともないような高級な料理とか高そうなお酒とかいっぱいでさ、ラミレスとかリーネさんも大喜びでさぁ」
『フフ、そっかそっか…何だか簡単に想像がついたな』
「そっちの忘年会はどう?やっぱ魔王軍の忘年会ってだけあって結構豪華なんじゃない?」
『まぁな、魔王軍全軍総出での宴は魔王様のお誕生日と忘年会ぐらいしかないからな…毎回みんな飲んで騒いでのどんちゃん騒ぎだよ…』
「ハハハ、それこそ容易に想像できそうだな…」
『あ、そうだ…ルドは年始の予定はどうなんだ?もし良かったら少しでもいいから会えないか?』
「あーゴメン、年始は色々と忙しいから厳しいかも…」
『そっか、いいんだいいんだ!ゴメンな無理言って…』
「いやいいって、落ち着いたらまた会おう」
『そうだな、じゃあそろそろ切るな…ルド大好き♡』
「俺も、大好きだよ♡ルタさん」
『それじゃあまた…』
通話が切れる
「ふぅ…さてと、俺も戻るか」
【魔王城】
一方その頃、魔王軍も時を同じくして盛大に忘年会を開催していた。
「フハハハハハ!さぁさぁどんどん飲めや歌え!今宵は宴じゃあ!フハハハハハ!」
ルドルフとの通話を終えて戻るムエルタ、するとそこへ…
「やぁ、ムエルタ…」
「…?、あっ、『リオ』」
魔王軍特別幹部 技術開発部隊 隊長“リオ”…戦闘部隊の武器や装備などの開発や整備を担当する裏方部門の責任者であり、ムエルタとは同期で数少ない対等に話し合える間柄なのである。
ちなみに爽やかで中性的なルックスから女性構成員達からの人気も高い
「やっぱり、君はこういう集まりとなるといつも決まってこうして一人でポツンといるね…」
「…べ、別にいいだろ、どう過ごそうが私の勝手だろう」
「フフッ、そういうところ変わんないね…最近は忙しくしてるみたいだけど、調子はどう?」
「まぁ、ぼちぼちってとこ…」
「そっか、そういえば…こないだ発注してきたあの新しいスーツ、使い心地はどうだった?」
「うん、まぁ…悪くはなかったわね」
「それは良かった、でもあのデザインは正直ボクもどうだろうとは思ったけどね…なんかあまり魔王軍っぽくないっていうかさ…」
「ちょ、それに関しては一切詮索しないでって言ったよね!?」
「ハハハ、ゴメンゴメン…そう言えば風の噂で聞いたよ、最近彼氏ができたんだって?」
「んなっ!?」
「当たりだね?」
「そ、そうだよ悪いか!?私が彼氏作っちゃ!」
「いや、悪いとは一言も言ってないよ?ただ、あの冷酷非道と恐れられる悪魔騎士と付き合う男がどんな相手か少し興味があってね」
「…喧嘩売ってる?」
「いや滅相もない!単なる好奇心ってやつさ、で?どんな人?」
「フン、誰が教えてやるもんか…お前のような奴なんかに」
「ツレないなぁ、でもそんなところもとびきりチャーミングなんだけどね…子猫ちゃん♡」
と、ムエルタの顎をクイっと持ち上げるリオ
「くっ、すぐそうやってからかうのやめろ!」
「おっと、フフフ…でも怒った顔も可愛いよ君は」
「う、うるさい馬鹿っ!」
「あ、あのムエルタ様にあんな軽口叩くなんて…なんて命知らずな」
「あの人、ムエルタ様と同期で開発部隊の隊長さんだってよ?しかも女子からも滅茶苦茶モテモテらしいぜ」
「う、羨ましいな…」
「あ、あのリオ隊長…」
「ん?なんだい子猫ちゃん達?」
「その、良ければあっちで私達と飲みませんか?」
女性構成員達から誘われるリオ
「てことだけど、いいかな?」
「別に、私の許しなんていちいち要らないでしょ?勝手に行ってくれば?私はこっちで勝手にやってるから…」
「ん~、素っ気ないねぇ…」
「あの、リオ隊長?お邪魔でしたら私達は別に…」
「いや、問題ないよ…行こうか」
「あ、ありがとうございます!きゃ~!!」
「…っ、やれやれ」
・・・・・
大晦日の夜が明けて迎えた新年の朝、ルドルフは実家に帰省していた。
「ただいまー」
「おかえりルド」
「ただいま母ちゃん」
「わぁい!ルドおいちゃーん!」
と、玄関まで走って出迎えるルドルフの甥っ子姪っ子達
「おぉお前ら!みんなしばらくみねぇ内にえれぇデカくなっただなぁ」
「さぁさ、早くお上がりよ…おせちもあるでたんと食べな」
「おう」
一家で食卓を囲みおせち料理を堪能する
「今年は姉さん達もみんな帰ってこれたんだ」
「ほうだよぉ、相変わらず元気そうで安心したわ…」
「ルドルフはいつまでこっちにいるの?」
「ああ、今日一泊したら帰る予定…」
「あーらそうなの、残念ねぇ…」
「えー、オラもっとルドおいちゃんと遊びてぇよぉ」
「オラもオラも!」
「あたちも!」
「お前達…」
「ねーねーおいちゃん!オラ都会のデパートさ行きてぇだ!」
「ん?デパート?まぁ、たしかにここいらじゃデパートみたいな大きい店なんてないからな…精々ちょっと大きめのスーパーぐらいしかないしな」
「うん!デパート行ってこれみてぇだ!」
と、ルドルフに一枚のチラシを手渡す
「ん?『救世戦隊ブレイブファイブ』、へぇヒーローショーかぁ…懐かしいなぁ」
「それ、ウチの子達が大好きな子供向けの特撮番組のヒーローショーなんよ…ルドも子供の頃お父ちゃんに連れてってもらったっけねぇ…」
「あぁ、そうだな…これ見たいのか?」
「うん!」
「よし、じゃあおじちゃんが明日連れて行ってやろう!」
「ホント!?わーい!」
「いいの?悪いわね…」
「いいっていいって、普段からあんまりこの子達と遊んであげられる機会だって少ないんだし…たまにはイイ叔父さんだって思われたいんだよ…」
「ルド…」
「じゃあ明日はみんなでおじちゃんとお出掛けだー!」
「イエーイ!!」
【翌日】
ルドルフは甥っ子姪っ子達を連れてデパートへやってきた。
「いいかみんな、ルドおいちゃんとこれだけは絶対にお約束!迷子にならないように勝手な行動はしないこと!他のお客さんとかに迷惑になるから走り回ったり大きな声で騒いだりしないこと!ワガママ言っておいちゃんを困らせないこと!みんなは良い子だから当然、守れるよね?」
「はーいっ!!」
「よし、いいお返事だ!さてと、ヒーローショーの時間までまだしばらく時間あるな…ちょっとデパートの中をみんなで探検しよう!」
「するー!」
「よーし、じゃあみんなで手繋いで出発しよう!」
「おー!!」
…一方、時を同じくして
「なぁ、なんでお前まで一緒についてくる?」
「まぁいいじゃん、ボクも新春初売りセールで色々買いたかったし…」
「だからって、同じ店に来なくてもいいじゃない…アンタと一緒にいるとやたらと目立つのよ」
「ん?そうかな?」
ムエルタとリオもデパートに買い物に来ていた
道行く女性のほとんどがリオの美貌に見惚れて思わず振り向くか足を止めている。
「ねぇ、あの人カッコ良くない?」
「ねーマジでイイよね!背高くて顔もシュってしててモデルみたい」
と、リオはそんな女性達に向けてパチっとウインクをする
「きゃあぁぁぁ!!今の見た!?」
「ちょ、アンタやりすぎ…」
「いやぁ、美しすぎるのも罪だね…」
「……」
…一方その頃、ルドルフは子供達とおもちゃ屋を見ていた。
「へぇ、おもちゃ屋とか久しぶりに来たな…」
「ねーねールドおいちゃん!これ買ってぇ!」
「ん?うわっ…子供のおもちゃってなんでこんなに高いんだ、これはちょっと買えないなぁ…」
「えぇ~買って買ってぇ!」
「ダ~メ!おいちゃんとのお約束なんだったっけ?」
「うぅ、勝手な行動はしない、ワガママ言わない、他の人には迷惑かけない…」
「ん、じゃあ戻してきなさい…」
「はぁい…」
「…っと、そろそろヒーローショー始まる時間かな?みんなー!そろそろ時間だからいくぞ!」
時間になったのでヒーローショーの会場まで行くルドルフ達
「た、助けてぇ!ブレイブファイブー!」
「ブレイブファイブー!!」
「そこまでだ!悪者め!ブレイブファイブが相手だ!」
「キッシッシッシ!ここが貴様らの墓場となるのだぁ!」
「がんばれー!」
夢中でヒーローを応援する子供達
(いいなぁ子供は無邪気で…俺も子供の頃父ちゃんと一緒になって熱く応援してたっけ?そういや、俺もラミレスもガキの頃からずっとヒーローに憧れてたっけな、今じゃ立派に魔王軍と戦う勇者と重戦士…感慨深いな)
一人感慨にふけていたルドルフ、するとその時だった…。
(ん?この感じ…まさか、近くにルタさんがいるのか!?きっと間違いない!)
注意深く辺りを見回すと、ヒーローショーをやっている裏のカフェテリアでリオとカプチーノ片手に談笑しているムエルタがいた。
(っ!?、な、誰だあのシュっとしたイケメンは!?ルタさん、何故そんな奴と楽しげに語らっているんだ!?)
目が血走るほど嫉妬の炎に駆られているルドルフ
…そして、ヒーローショーが終わった後
(ルタさんは、もういない…くっ、どこへ行ったんだ!?)
「…ルドおいちゃん?どちたの?」
「ん?ああ、なんでもないよ…ごめんな」
子供達の方へ向き平静さを取り戻すルドルフ
(落ち着けルドルフ!今はこの子達の面倒で手一杯なんだ…流石にこの子達をほっぽいていくわけにもいかないし、かと言って連れていくわけにもいかないしな…)
暫し悩んでいると…
「あれ?もしかして、ルドか?」
「っ!?、ル、ルタさん!?」
偶然ムエルタと鉢合わせたルドルフ
「ん?ムエルタの知り合い?」
「え、えっと…私の彼氏」
「へぇ、君がそう…」
(マズイ、まさかこんなところでルドと鉢合わせるなんて…ルド見つけて嬉しくてつい声かけちゃったけど、でもリオ達後方支援の部隊は私達と違って勇者パーティーと直接顔を合わせる機会もほぼないから顔も知らないはず、ていうかそうであってほしい…)
「初めて、彼女の同僚のリオです…よろしく」
(同僚?てことはコイツ、魔王軍か?でも、俺の顔見ても何の反応も示さないのは妙だな…一応俺が勇者パーティーのメンバーだということは悟られないようにした方がいいな)
「あ、ああ…ルドルフだ、よろしく」
…突如始まってしまった急展開、果たして運命や如何に?
To be continued...




