ファーストキスを推しアイドルに奪われたんだが、いったいどうすれば良いんだ!?
「もう私から離れないで、翠星私は貴方が好き、だからもう我慢できないの、どんどんと貴方が私の元から離れていくのが」
彼女の指の強さが皮膚からひしひしと伝わる。
「……宝条、お前も穂状と一緒に弁当食べないか?」
「え……」
「今穂状に誘われててな、一緒に食べないか?」
「じゃあ、今私とベロチュウして、それじゃないと私は行かない」
彼女は俺の胸をなぞるように触る。それに対し俺はゴクッと固唾を呑んだ。その時の俺にはもう自我はなかった、ただ俺は彼女の肩を持ち、唇を宝条の唇に近づける。
何をやってるんだ……俺は……ダメだ理性を保て! 自分を保て……保……て。
階段の裏で人気がないせいか、周りは静寂にだった。彼女の魔性の雰囲気に負けていた。自我のなくなった俺の体は勝手に動いていた。
「あれー? 神島いる〜?」
階段の方から俺を探している穂状の声が聞こえた。まるでその声が彼女の魔性を解くように、体が自由になった。そして、自我を取り戻した俺は咄嗟に俺の体から宝条を優しく引き離した。
「あ! ようやく見つけた、もう遅いから探したんだよー? ん? スミミもいんじゃん! ……スミミも一緒に屋上でお弁当食べない?」
「……うん、食べる」
「良かった! じゃあ一緒に行こ!」
彼女はニコッと笑いそう言うと、宝条の手を握り「神島も早く!」と言い残し、先に屋上へ行ってしまった。
さっきの彼女の雰囲気はなんだったのだろう……それよりも、俺のファーストキス奪われたんだが……。




