推しアイドルにハグされたんだが、いったいどうすれば良いんだ!?
穂状との話を終えた俺は、昼食を取り、観客席の方を散歩していた。言えることを全て言えたせいか、自分の中のモヤは消えていた、だが、一つだけ彼女がどう判断するかだ。
そんな様子で歩いていると、突然俺の手を引く者がいた。何だと思い俺が後ろを振り向くとそこに居たのは宝条だった。
「宝条か、どうした?」
「ちゃんと穂状さんと話したの?」
「あぁまぁ話したけど、穂状がどう決断するかは分からん」
俺の言葉を聞いてなにか察したのか、宝条は「わかった」と言った。それを言い終えた俺がその場を離れようとするが、宝条は俺の手を離さない。
「どした? なにか他に俺に用事でも——」
「私、神島くんに謝らないといけないの」
「——いや謝らなくていい」
「へ? なんで? 私、神島くんの告白を断って貴方の青春をおかしくさせてしまったのに?」
「まぁ宝条の謝りたい気持ちも分からんでもない。でもな、宝条、俺は君に青春をおかしくさせてもらったお陰で穂状や宝条と出会えた気がしたんだ。だから、俺は逆にお前に感謝したいくらいなんだ。だからありがとな、俺と関わってくれて」
俺はつい緩んだ表情で言った。そんな俺を見た彼女は驚いた顔をしていた。
「神島くんらしいね」
宝条は驚いていた表情を変え、笑った様子でそう言った。
「そうだろ? ……俺そろそろ行ってくる」
「分かった、応援してるね」
宝条がそう言うと、彼女は握っていた俺の手を離した、そして次の瞬間、宝条は俺にハグをした。
「——ちょ、ちょ! ちょっと?! 宝条さん?」
「頑張ってね」
宝条はハグをしたまま、俺の耳元でそう囁くと、パッと体を離し、俺に手を振った。突然の彼女の行動に理解ができない俺は、気合いを入れ直すために両頬を2、3回叩き、彼女に背を向け走った。
※
神島くんを見送った私が帰ろうとした時、
「おやおやぁ? スミスミー、チミも奥手ですなぁー」
「なっ!?」
聞き覚えのある声が聞こえたため、後ろを振り向くとそこに居たのは、アカネだった。
「そんなにあの子が気に入ったのかねぇー?」
アカネの他にもミゾレやカスミも顔を出してきた。
「く、来るなら連絡してよね!」
「えぇー、連絡したらサプライズにならないじゃーん?」
「もぉー!」




