過去の自分はただの強がりだった
中学の頃、俺は好きだった子にフラれた。ずっと一途に彼女のことを思ってきた。でも、そんな願いが叶うことはなかった。
「ねぇちょっとアレ見てよ、神島くんだよ、あの宝条菫ほうじょう すみれさんに簡単にフラれたんだってさ!」
「やぁば! 超かわいそう!」
「てか神島に告白された宝条さんこそかわいそう」
「マジそれな〜」
廊下を歩いていれば周りから聞こえてくる俺を蔑む言葉の数々。
「なぁー、お前宝条さんにフラれたんだってー? 超笑えるわ〜。ま、安心しろよ宝条さんは俺がもらってやるからさ」
「——クッ!」
同級生の男から言われた言葉に、俺は思わず爪が皮膚に食い込むほどに拳を強く握ってしまった。
「お、怒った怒った!」
俺のその様子を見て笑い茶化す男共。
帰り道でも奴らは俺を逃してくれやしなかった。聞こえてくる俺を侮辱する声、蔑む声、耳をちぎりたくなるくらいの痛々しい言葉を言うヤツだっていた。
「スイちゃーん、そろそろ出てきな〜……ご飯ここに置いとくからね」
部屋の外から聞こえてくる親や姉の声に耳を傾けず、俺は必死にゲームやネットの世界に逃げ続けた。
小学の頃の友達も中学の友達も消えた俺には何も無かった。そう何もかもなくなったんだ……幼稚園の頃はどうだったんだっけ。
ふと、俺は部屋の片隅に置いていた小学の卒業アルバムや、幼稚園を卒園した時に貰ったアルバムを開けた。
幼稚園のアルバムをペラペラとめくっている時だった。ふと、俺の目に自分がいた幼稚園のクラス写真があった。あぁ、懐かしいな……穂状瑠衣すいじょう るい……懐かしいな昔よく遊んでたっけ……。
幼稚園の頃よく俺は穂状瑠衣と遊んでいた。仲良くなったきっかけは、よく穂状をいじめていた女の子と男の子がまた彼女をいじめていた時に、俺が穂状を助けたのがきっかけだったっけ。
「お! 神島じゃん! 幼稚園ぶりじゃん!」
高校で彼女のことを忘れていた時、穂状が話しかけたのは正直驚いた。彼女のことを忘れていた俺に対し、穂状はちゃんと俺の事を覚えていてくれた。
ハハッ、俺何してんだ、俺はずっと一人だった、だから一人強がって誰とも関わろうとせず一匹狼でありたかった。でも本当は人と関わりたくて穂状や宝条が絡んでくることが嬉しかったんだ……それなのに俺は……酷いこと言ったな、ちゃんと謝らないと。




