カスミさんの正体があの人だったんだが、どうすれば良いんだ!?
ゲーム上、終焉の支配者とも呼ばれたミルゼ・ナーヴァ。現在、奴を倒した事例は数少ない。俺はそのモンスターを倒すために数々のモンスターを倒し、装備を揃えてきた。
そう今こそ、その努力が報われる時が来た。
『覚悟は良いですか?』
チャットでカスミさんからメッセージが来た。俺はそのメッセージに『覚悟は出来てます!』とだけ返信した。
ミルゼ・ナーヴァ、全ての攻撃への対応、頭や胸部の弱点以外の部位に攻撃を当てても回復するだけ。集中的に弱点部位に攻撃することを強いられる。
「やってやるさ!」
こうして俺とカスミさんとの、ミルゼ・ナーヴァ討伐が始まった。ミルゼ・ナーヴァは空高く飛ぶと、こちらへ広範囲かつ高火力のブレスを吐いてきた。当たれば即死は免れない、だが、ミルゼ・ナーヴァよ、俺は何度もお前に葬られてきた、だからこの位の技見切れるさ!
俺はその広範囲ブレスの範囲から瞬時に離れると、自分の使っている武器でミルゼ・ナーヴァの元へ飛び、奴の頭めがけて大剣を振るった。
すると、奴は苦しみの声を出しながら、地上へ落ちていく。その瞬間だった、カスミさんは落ちてくるミルゼ・ナーヴァの胸部に数百ものの斬撃を当てる。
カスミさんの装備それはランキング上位の人間しか持てない超火力の武器や装備をしているため、ミルゼ・ナーヴァの体力はみるみると減っていく。
あっという間に奴の体力の半分が削られた時、ミルゼ・ナーヴァは額から第三の目を開眼した。
すると、バトルフィールド全体に数々の巨大な目が現れ、その瞳から大量の広範囲のブレスが吐かれる。
その広範囲の攻撃が俺に向かって放たれる。その時だった、俺の前に盾を持ったカスミさんが駆け寄る。
寸前のところでカスミさんは盾を構え、俺を守ってくれた。俺は守られている間に攻撃コマンドを素早く打つ。
「これで終わりだァ!」
相手の攻撃が止んだ瞬間、俺は大地を強く蹴った。そして、持っていた大剣で大きく回し切りを叩き込む。
勢いよく振られた剣の斬撃は空気を切り、放たれた斬撃がミルゼ・ナーヴァの首を切り飛ばす。
残りのHPを削り切った俺は、寝そべっていたソファーで強く拳を握りしめた。
「よっしゃァァ!」
俺はあまりの嬉しさにそう叫んだ。
『手伝ってくださってありがとうございます!! あの! 自分初めてミルゼ・ナーヴァ倒せたんで、打ち上げとかやりませんか? 今週の土曜とかどうですか?』
俺はミルゼ・ナーヴァを倒せた喜びを分かち合おうと、メッセージを送った。すると、その数秒後。
『少しの時間でしたら大丈夫ですよ』
『ありがとうございます! では土曜の昼の13時でハチ公前で集まりましょう!』
『りょです』
※
最強の敵を倒した俺はウキウキになりながら歩みを進めた。
てなわけで来ました! ハチ公前付近に!
いやーここまで1、2時間かかったけど、楽しみだな。どんな人なんだろ? カスミて名前だから女性か?
俺はカスミさんがどんな服装で来るのか、確認するためスマホを取り出す。すると、カスミさんが着てくる服は水色のワンピースで、サングラスとマスクをつけているらしい。
その情報をもとに、俺が辺りを見渡していた時だった。
お? アレかな?
自分の目の前に白いバッグを両手で持ち、ハチ公前で誰かを待っている女性がいた。その女性はカスミさんの言う水色のワンピースを着ていて、サングラスとマスクをつけていた。それを見た俺は咄嗟に彼女の方へ歩み寄る。
そして俺は勇気を振り絞って聞いた。
「あ、あのクロスハンターのカスミさん……ですか?」
すると女性は俯いたままコクっと首を縦に振った。
「あの! ここら辺オススメの喫茶店があって! 一緒に行きませんか?」
「は、ハヒィ!」
「は、ハヒィ?」
その時だった、アイドル歴2年以上の俺の耳がその「ハヒィ」という声に聞き覚えがあった。俺は咄嗟に自分の頭をフル回転させ、その声にあたるアイドルを思い出そうとする。
そして、俺はその声と同じ声をしている声の主を思い出した。しかし、それを決めつけるには声だけじゃ決定打がない。
「あ、あのちょっとサングラスとマスク取って貰えますか? 顔が良く見えなくて……」
俺がそう言うと、彼女はオドオドした様子で、サングラスとマスクを外してくれた。それを見た俺は驚いた。それと同時に彼女も驚いていた。
「そ、ソウちゃん!?」
……マジかよ、クロスハンターのカスミさんて……仮面アイドルの早暁そうきょうカスミさんだったのかよ。
「あ、貴方は、ス、スミスミの、ま、マネージャーさん?!」
俺とカスミさんが数秒間、見つめ合いながら固まっていると、近くの方で「あれ、早暁カスミじゃね?」「え? マジじゃん!」という声が聞こえてきた。
ま、マズイ、一時的だけど仮面アイドルの早暁カスミとしての顔は割れている。最近仮面アイドルはネット以外にテレビでもちょくちょく顔を出している、このままだと人集りが出来るかもしれん!
俺がそうこう考えている内に、仮面アイドルを知っている若者たちが群がってきた。
「カスミさん、少し手を借りますね」
「ひゃっ!」
俺は彼女の手を引いて、人集りが出来る前にその場から離れた。




