アカネさんのマネージャーがクズ野郎なんだが、どうすれば良いんだ!?
俺の名前は神島翠星かみしま すいせい、今最悪の状況に陥っている者だ。はぁ、マジで最悪だ、なんでこういう時に限って神様は見放してくるかな……俺あんたと同じ「神」の字が入ってる人間なんだぞ!?
「おい、聞いてんのか? おい!」
アカネさんのマネージャーはそう言って、俺の胸ぐらを勢いよく掴んできた。まぁそりゃそうなるよな、自分のモノだと思ってたモノが他の人に渡るなんて許せねぇもんな。
「ちょっと! 真吾しんごくん! この人とは偶然そこで会っただけなの! だから——」
「アカネはそこで黙っててくれないかな? これは男同士の問題だろ! なぁどうなんだよ、もしかしてスミスミのマネージャーが飽きて、俺のアカネに手を出そうとしたのか?」
真吾は威圧的に語りかけてくる。
「なわけないでしょ、勘違いも程々にしといた方がいいんじゃないですか?」
俺は少々煽り気味に言ってしまった。そしてその言葉が癇に障ったのか、次の瞬間、真吾は右ストレートで俺の顔面を殴った。
俺は殴られた衝撃で後ろにのけぞる。
「これ、警察に言ったら悪いのアンタになるんだけど、それ覚悟できてんの?」
「はぁ? テメェが警察を呼べなくなるほど俺が痛めつければいい話だろうが!」
真吾はそう言って俺に殴り掛かる。えーっと、これ正当防衛していいんだっけ? 殴り返しても大丈夫なんだっけ? ケッ、やってやみるか。
迫り来る拳に俺が反撃の構えをした時だった。俺と真吾の間にアカネさんが割って入る。
「やめて! もうやめて!」
「「——ッ!?」」
アカネさんは涙目でそう言った。突然の事に俺と真吾はただ呆然と立ち尽くしてしまう。
「アカネ……すまん、ついカッとなっただけなんだ。だから——」
真吾はそう言うと、アカネさんの肩に触れようとする。が、その瞬間だった。
「触らないで! もう君とは一生関わりたくない! だから私の前から消えてよ!」
アカネさんはそう大きな声で言うと、真吾は「は?」と戸惑っている様子だった。
「ふざけんなよ、ふざけんなよ! いつも誰がお前の面倒を見てやってると思ってんだよ!」
真吾は怒鳴りながら、アカネさんの髪の毛を強く引っ張る。流石にそれを見た俺の中で何かがプッツンと切れる音がした。
「おい、さっきから減らず口を聞いてりゃ、好き放題言いやがって。調子にのんなよクズ野郎が」
「は? テメェに関係な——」
俺は自分に与えられた死んだ目を生かし、この世界の全てを憎むような目つきで、真吾を睨みつけた。それがよほど効いたのか、真吾はビクついた様子でアカネさんの髪の毛を離した。
そして、その一瞬の隙を見計らった俺は、一発だけ怒りを込めた拳を真吾の顔面に叩き込んだ。
人を殴ったのは初めてだった。だから、結構手が痛かった。顔面を殴られた彼は軽く吹き飛び、地面に這い蹲るように倒れた。
「覚えてろよ、このカス共が」
真吾はそう言い残し、一人で立ち上がり、どこかへ去っていった。全くとんだ災難に巻き込まれた。
「大丈夫ですか? アカネさん」
「私のことより、神島くんこそ大丈夫?」
「あぁ、大丈夫ス」
「……なら良かった」
「——ッ!?」
その次の瞬間だった、アカネさんは大きく俺を抱きしめた。温かい……殴られた痛みを忘れるくらい温かかった。ヤバい、好きになりそうだ。
「……好きだよ、神島くん」




