推しアイドルの右腕のアカネさんの誕生日ライブに行ったんだが、どうすれば良いんだ!?
「ねぇねぇ! 神島テストどうだった? ——て、めちゃくちゃクマが凄いよ?!」
穂状は俺に寄ってくるなり、俺の顔を見て、驚いた様子で言った。
「あぁ、まぁ徹夜してな」
「テストが終わったら、ちゃんと睡眠とった方がいいよ」
「あぁ、そうするつもりだ」
徹夜をしながらも俺は、三日間に渡って行われたテストを乗り越えた。
※
テスト最終日を乗り越えた俺は昼から爆睡し、夜の9時頃に起きた。朦朧とする意識の中で俺は、テーブルに置いていたスマホを取り、最近チェックしてなかったアイドル情報をチェックする。
仮面アイドルの公式サイトをスクロールしていると、あるイベント情報に目が止まり、一気に朦朧としていた意識がはっきりした。
「明日、アカネさんの誕生ソロライブをライブハウスでやるのかよ! 推しはスミスミだが、仮面アイドルのマネージャーとして応援しに行くか!」
一人ブツブツと呟く俺を見た姉は、俺を心配するように見つめてくる。
「何一人でブツブツ言ってんの? スイちゃん」
「気にするな!」
「はぁ……」
※
テストが終わればやってくる土曜日と日曜日。普通の人であればこの休みの日はゴロゴロしたり、仕事をしたり、友達と遊ぶ時間に使ったりするだろう……だが俺は違う、俺はアイドルの応援というモノに土曜日の時間を使う。
たしかライブはいつもより早くて、昼の3時からだったはず……まだ昼の2時だ、準備して行くか。
俺はバッグにアカネさんのメインカラーのペンライトを入れた。準備が完了した俺がいざ外に出ようとした時だった。
俺の携帯の着信音である「君とあの空」という音楽の着信音が鳴った。俺は咄嗟に電話を確認した。
相手は宝条菫だった。俺は何だ? と思いながら電話に出た。
「どうした?」
『今日、アカネの誕生ソロライブあるの知ってますよね?』
「まぁそりゃな、逆に知らなかったら仮面アイドルのファンとして失格だからな」
『それで、あの私のマネージャーとして一緒にライブに行きませんか?』
彼女の声はどこか緊張しているようで、いつもの彼女とは違うようだった。まぁそりゃそうか、メンバーのソロライブとだからな。
「お、おう分かった。ならとりあえず今から相模駅集合でどうだ?」
『わかりました、相模駅ですね』
「それじゃまた後で」
俺はそう言って宝条との電話を終えた。宝条が来るならアイツも誘っといた方が良いか。そう思った俺はある人物に電話をかけた。
『なに? 神島』
俺が電話をかけた人物それは穂状だ。ただライブに一緒に行こうて言っても、穂状は絶対嫌がるだろうから……そうだなここは。
「俺とデートしないか?」
『え!? ちょ! え!? で、デート!?』
※
「て、ここライブハウスじゃん、デートて言ったじゃん」
穂状は何故かガッカリした様子で言った。
「デートとでも言わないと来ないと思ったからな」
「デートじゃなくても来るよ! 神島とならどこでも……て、私何言ってんだ!?」
「ホント何言ってんだ、照れるじゃねぇか。いや俺も何言ってんだ……」
「神島キモッ」
「なんか俺の扱いだけ酷くない?」
俺と穂状が話していた時、突然、ライブハウスの明かりが消えた。その次の瞬間だった、消えていた明かりがステージを明るく照らす。
「皆ー! 待たせたねー! アカネお姉さんだよ〜!」
そう言って大きいステージに現れたのは、今日の主役「仮面アイドル」スミスミの右腕のアカネさんだった。




