推しアイドルの家に行くことになったんが、どうすれば良いんだ!?
テストそれは全国の中高生が大嫌いなイベントの一つである。特に単位とかいうゴミ要素のある高校においてはテストは重要なのだ。
俺の学力? そんなの分かりきってるだろ中の下の下の下だ。俺は今の今まで授業なんて居眠りしてただけあって、学力は中学の頃より低くなってる。さて、この絶望的な状況で俺は一体何をすればいだろうか。
一 友達に勉強を教わる。
二 徹夜して勉強する。
三 諦めてゲームざんまい。
まず二は得意だが結構地獄になるからできることならやりたくない。そして三に至っては親に○されるからやめよう。最後の一……友達の少ない俺にとって一番は最難関だ、だが、ここは背に腹はかえられぬアイツに頼むしか。
「なぁ穂状、俺に勉強を教えてく——」
「ねぇ! スミミ! 私に勉強教えて!」
穂状は言ってノートを持って、宝条の方へ駆け寄っていった。はぁ仕方ない、やりたくはなかったが、徹夜するか……。そう決意した俺が彼女達に背を向けた時だった。
「あの神島くん」
宝条の声だった。その声はどこか緊張しているような声。俺はそんな彼女の方へ体を向けた。
「どうした?」
「あの私の家で穂状さんと勉強会をするのですが、神島くんも来ますか?」
「マジですか?」
「はい」
宝条菫、中学の頃は中二の時しか知らないけど、たしかずっと学年一位だった気がする……そんな人に勉強を教えて貰えるなんて俺の人生絶好調だな!
「では穂状さんと神島くんは土曜日に私の家に来てください」
「OK!」
「うす」
※
そして時は過ぎ土曜日。
俺と穂状は携帯に送られてきた宝条の家の住所を頼りに、一緒に宝条の家に向かっていた。
「ねぇ神島」
「ん? どした?」
「神島さ、木曜にスミミと一緒にどこに行ってたの?」
「あー、あれは普通に仮面アイドルのメンバーの一人がもうすぐで誕生日だから、そのプレゼントを買いに行ってただけだ」
「そっか……なら良かった」
彼女はどこか安心したような顔をしていた。
「……そういえば、穂状、放課後に俺に何か伝えようとしてたよな? あれ何が言いたかったんだ?」
「あれはもう良いの……私の伝えたいことは私が伝えたい時に言うから」
「そうか……てかもう着いたぽいな」
「え……ここがスミミの家!?」
「そうらしいな」
まぁ穂状が驚くのも無理もない、俺も驚いているからな、そう俺たちの目の前にたたずむのはアニメなどに出てきそうな豪邸だったからだ。
俺は宝条の家に圧巻としながらも、外にあったインターホンを押した。そして、その数秒で宝条の声が聞こえた。
『どうぞ、入ってください』
彼女が言うと、自動で家の門が開いた。
「行こ!」
「そうだな」
※
家の広い敷地を歩いていると、俺達の目の前に宝条が現れた。
「スミミ! こん!」
「うす」
「こんにちは穂状さん、あと神島くん」
「『あと』てなんだよ『あと』て」
「遠かったですよね、着いてきてください案内します」
「シカトですか……」
※
俺と穂状は宝条に案内され、通されたのは広い豪華客船の部屋のような場所だった。
「すげぇな、ここ何の部屋なんだ?」
「私の部屋ですけど?」
「うへぇ……」
「それより、飲み物持ってきますね」
宝条はそう言って、飲み物を取りに行こうとする。
「んじゃ俺コーラ」
「私麦茶!」
「神島くん、私の家にはコーラはありません、自分で買ってきてください。穂状さんの麦茶くらいならありますけど」
宝条は鋭い眼光で俺を睨みつけた。いやいや冗談ですやん宝条さん、そんなに睨まれるとさすがの俺でもビクつきますよ。
「んじゃ麦茶」
「私も麦茶!」
「わかりました」
※
出されたお茶を飲みながら勉強を進める俺と宝条と穂状。まぁ当たり前のことだが無言になる。
そんな無言の状況が苦手なヤツがこの中に一人だけいる。そうその無言の状況が苦手なヤツはもうじき口を開くだろう。
「ね、ねぇ、神島」
ほらきた穂状が俺に小さい声で話しかけてきた。
「どした? この無言の空気に嫌気がさしたのか?」
「ち、違うし。私の思ってた勉強会とちょっと違うなーて思っただけだし」
「そすか、それじゃ」
俺は再び数学の数式の問題に戻った。それでも穂状はしつこく話しかけてくる。それを俺は華麗にスルーする。そんな時だった。
「1時間ほど勉強したので、10分休憩しましょうか」
「やたー! ねぇスミミ! ババ抜きしない?」
穂状はそう言ってバッグからトランプを取り出す。てか勉強会なのになんでトランプ持ってきてんだよ。
「穂状さん、今日は勉強会をする日なんですよ? そんな遊びしてる場合じゃ……」
「え、スミミ負けるのが怖いの?」
「はい?」
穂状は彼女を煽るように言った。すると、まんまと宝条は穂状の煽りをまともに受けてしまった。そんなしょうもない挑発にのるな!
「良いでしょう、相手になってあげます。私こう見えてババ抜き負けなしですから」
「スミミ、一応言っとくけど私も強いからね?」
ヤバい、始まったクソしょうもない争いが……俺はこの争いに巻き込まれないようにトイレに逃げるか。
「す、スマン俺ちょっとトイレ」
そう言って俺が逃げようとした時、彼女達の鋭い眼光が俺に当たる。
「なに逃げようとしてんのー?」
「神島くん、この場にいる限り貴方も例外じゃありませんよ?」
「は、はい。やります」




