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推しのアイドルからデートのお誘いが来たんだが、どうすれば良いんだ!?

「すげぇ美味い」

 

「それは良かったです。私も作ってきたかいがありました。これとかどうですか? 結構いい仕上がりになったんですよ」

 

 宝条はニコッとした表情で、俺の持っていた弁当の中にあったハンバーグを箸で指した。

 

「超本格的だな」

 

 俺はそう言って、美味しそうに焼けているハンバーグを箸でつまみ口に運んだ。口の中で広がる肉の旨みと肉汁。まさに一流シェフが作ったかのような美味さ。

 

「めちゃくちゃ美味しいです」

 

 それを聞いた彼女はめちゃくちゃ嬉しそうな様子で「良かったです!」と言った。

 

「……あの神島くん、少しお願いがあるんですけど」

 

「お願い?」

 

「今日の放課後に、わ、私と街の方へお出かけに行きませんか? ちょっと悩み事があって……」

 

 それを聞いた俺は口の中にあったハンバーグをゴクリと飲み込んでしまった。マジかよ……推しにデートに誘われるとか……俺の人生壊れちゃったのかな?

 

 ※

 

 昼休みも終わり、特に何事もなく時間は過ぎていき、気づけば俺は放課後の教室に居た。

 

 外はまだ夕日で明るい、この教室にはまだ何人か居残っている人が居る。

 

「あれ? 神島まだ居たんだ」

 

 俺がふと声の方へ視線を向けると、そこにはバスケのユニーフォームを着た穂状が居た。

 

 そういえば穂状はバスケ部に最近入ったんだっけな……てかちょっとエロ——。

 

 俺はまたもや自分のダメダメな理性を取り戻す為に、自分の両頬をパシンと叩いた。

 

「な、なんで教室に戻ってきたんだ?」

 

「ちょっと水筒忘れちゃってさ」

 

 穂状は言って、俺の隣の席に来ると、バッグの中から水色の水筒を取り出す。

 

「神島はさ、部活とか入らないの?」

 

「俺一応帰宅部なんだけど」

 

「いやそれ部活じゃないからね? サッカー部とかスポーツ関係の部活に入らないの?」


「いや俺運動全般できねぇし。あとサッカーに関しては小学生の時に金的くらってからサッカー嫌いになったし。ま、俺は万年帰宅部でいいかな」

 

「そ、そうなんだ……神島、あの私——」

 

「お待たせしました」

 

 穂状が何かを言おうとした時、それを遮るかのように宝条が教室に入ってきた。

 

「スミミ……」

 

「ごめんなさい、神島くん、遅れてしまって……それでは行きましょうか」

 

「お、おう。スマン穂状、話は後で聞く」

 

 俺は言って穂状の前を横切った。その時だった、穂状は何故か離れていく俺の手を咄嗟に掴んだ。

 

「ま、待って!」

 

 彼女の突然の行動に俺は驚き、つい穂状の方へ視線を向けてしまった。

 

「ど、どうした? 穂状」

 

 夕日で照らされているせいか、穂状の頬が紅く染っているように見えた。そして、彼女は何かを俺に伝えようとしていた。

 

「そ、その……うんうん何でもないゴメン引き止めて」

 

 彼女は考える素振りをして言うと、掴んでいた俺の手を離した。

 

「そ、そうか、話があるなら明日聞くから、またな」

 

 俺はそう言って、宝条の元へ向かっていった。が、その去り際、穂状が小さな声で「ずるい」と呟いた気がした。それを聞いた気がした俺は彼女の方へ視線を向けた。すると、彼女は優しい微笑みをして俺に手を振っていた。

 

「ばいばい神島、また明日」

 

「……じゃあな」

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