推しのアイドルから「菓子パン食うな」て言われたんだが、どうすれば良いんだ!?
穂状も教科書を忘れた……仕方ないこうなったら。
「宝条さん」
俺は小さい声で前に座っている彼女の名前を呼ぶと、宝条はくるりと後ろを振り向いた。
「俺達、教科書忘れたんだけど、見せてくれないか? いや見せてください宝条様」
俺は神に祈るように両手を合わせる。すると宝条は嫌そうな顔をした。
「ちゃんと消毒して返すから、頼む!」
「そういうの大丈夫ですから」
彼女はため息をつくと、渋々歴史の教科書を俺に渡した。それに対し、俺は小声で「ありがとう」と言って教科書を受け取った。
そして、教科書を受け取った俺は、隣にいた穂状にも見せるために彼女の机と机をくっつけた。すると、彼女は少々驚き気味で言った。
「え? いいの?」
「いやお前も忘れたんだろ? なら一緒に宝条さんという女神様のお世話になろうぜ?」
「何その言い方……でも神島が言うなら」
穂状はそう言うと、俺の近くに来て教科書を覗いた。
一方の宝条は隣にいた女子に話しかけて、教科書を見せてもらっていた。宝条すまん、後で命令ならなんでも聞きます。
※
歴史の授業が終わり、四限目が終わると、俺と宝条は学校で人目につかない階段裏に行く。
「んじゃ、俺ちょっと売店行ってくるわ」
俺がそう言って立ち上がると、宝条は不満そうな顔をした。
「また菓子パンを買いに行くんですか?」
「そうだけど……」
俺の言葉を聞いた宝条はため息をついて、彼女は持ってきていたバッグから弁当箱を二つ取り出す。
「宝条さんてそんなに食う人だっけ?」
俺が困惑した様子で言うと、宝条は「は?」とドスの効いた声で言った。あ、やべ何かやらかした……俺の人生グッバイ。
「神島くんのお弁当を作ってきたんですよ……その……受け取ってください」
彼女は恥ずかしがりながら、頬を赤く染め俺に歩み寄ると、俺の胸に弁当箱を押し当てた。
「……いただきます」
「……はい」




