席替えの結果に絶望したんだが、どうすれば良いんだ!?
「見ろ! アイツめちゃくちゃスゲェオタ芸やってるぞ!」
「マジだ! スゲェ、キレッキレだ!」
俺の名前は神島翠星、今最高のオタ芸をやってる真っ最中だ。恥じらいと黒歴史を一時的に捨てた今の俺は無敵で最強だ(厨二病悪化中)。
「神島すごい! 私もやる!」
雫ちゃんは目をキラキラとさせると、持っていた一本のペンライトで慣れない動きで俺の真似をしながらオタ芸をし始める。
それを見た雫ちゃんの兄、神上慎吾は慌てた様子で雫ちゃんを静止させようとする。止められないぜ、一度火がついたオタクを誰であろうと静止することはできない。
「みんな! ありがとう!」
その後、俺と雫ちゃんは「仮面アイドル」のライブをめちゃくちゃ楽しんだ。一方の神上だがめちゃくちゃ疲れた様子だった。
※
「席替え」それは月に一回訪れる生徒にとっては楽しいひと時になるモノ。それと同時に運というクソみたいな引き要素も絡んでくる。何故運が絡んでくるかって? それはな、例えば好きな人がいたとしよう、その人の隣になりたい! でも確実に隣になれるという保証は無い……つまり! この席替えというイベントでは運要素は避けても通れないモノなのだ。
ま、この俺、神島翠星には関係の無いことだけどな。逆に俺は嬉しいまである、何故かって? 俺の隣の席にいる宝条菫から離れる事ができるからだ。ここで皆は『なんでだよ! 美人が隣じゃなくなるとか最悪な事だろ! ぶち〇すぞ!』と思うだろう、でも俺の身にもなってほしい、確かに宝条菫という女の子はルックスも才能も抜群に良い。だけどそれと同時に問題が生まれるのだ、こんなに可愛い女子を周りが放っておく訳がない、彼女の元に沢山の敵……いや陽キャラどもが集まってくるのだ。そこで起きる問題……そうそれは! 俺が席に座れないのだ!
え? そこの何が問題かって? 問題すぎるだろ! 朝登校してきたらもう俺の席を陽キャラが占領してるんだぜ? しかも昼休みでも俺が売店から帰ってくると毎回俺の席が陽の人間に占領されてる! これが問題なんだよ! この問題さえなければ俺は学校の階段裏にマイホームを作る必要なんてなかったんだ! ちくしょう!
おっと取り乱してしまった失礼。て事で俺の希望は、宝条菫から遠く離れた端っこの後ろの席でお願いします。いや宝条菫から離れれば俺はどの席だっていい。
「はーい、今から席替えをするぞー。クジを作ってきたから、端の列から順番に引いていってくれ」
担任の教師がそう言うと、生徒達は楽しそうにクジを引く者や、何かを願いながら緊張した様子で引く者が居た。ま、俺はそのどちらにも当てはまらない、真顔で無心で引く者だ。
クジを引いた俺は教室の人気のない所で引いたクジを開けた。
36番! よし! 一番後ろだ! しかも端の方! 最高かよ!
久々に役に立った自分の運に俺は自分を褒めてあげたい。そう思いながら俺が席を移動させた時だった。
「お、神島じゃん!」
「神島くん」
「——ッ!?」
俺は咄嗟に視線を声の方へ向けると、そこに居たのは俺の隣に穂状、その穂状の前には宝条が居た。
そう俺の青春はまたもや地獄に突き落とされるのであった……。




