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推しアイドルと一緒にお昼を一緒にすることになったんだが、どうすれば良いんだ!?

 俺の名前は神島翠星かみしま すいせい。今絶賛自分の推しアイドルに『お弁当を一緒に食べよう』というお誘いを受けている者だ。

 

「ふ、二人で?」

 

「うん」

 

 ※

 

 多分これは罰ゲームに違いない、じゃなかったらおかしい事だ。影が薄くて、イケメンでもない俺がクラスのマドンナと一緒に廊下を歩くだなんてありえない事だ。

 

 そんなこと思いながら周りを見てみると、案の定周囲からの視線がすごい。これじゃあ俺の持ち前のステルス能力なんて無意味だ。

 

「どこで食べます?」

 

「か、階段裏とか」

 

 何言ってんだ俺! こんなこと言ったら宝条は引くに決まって……。そんなことを思った俺が彼女の方に視線を向けると、宝条は優しい微笑みで言った。

 

「良いですよ、神島くんの好きな所で」

 

「——お、おう」

 

 ※

 

 というわけで来ました! 学校一目立たない場所! 階段裏に! なんて思ってる場合じゃない、場所変更だな。

 

「場所変えるか」

 

「いやここでいいよ、だって神島くんここがいいんでしょ?」

 

「あ、まぁうん」

 

「じゃあここがいいね」

 

 こうして俺と宝条は階段裏に置かれていた椅子に座り、俺は菓子パンの袋を開け、彼女は弁当を開けた。

 

 俺が袋から菓子パンを取り出すと、それを見た宝条は不服そうな顔をして言った。

 

「また菓子パンですか? 体に栄養がいきませんよ?」

 

「そ、そうか……でも俺料理できないし」

 

「か、神島くん」

 

「?」

 

 俺が宝条の方へ視線を向けると、彼女は弁当に入っていた綺麗に焼けた色の卵焼きを箸でつまんで、それを俺に向ける。

 

「卵焼きはすごいんですよ? ビタミンCと食物繊維以外の栄養成分を全て含んでるんです。この卵焼きあげるのでこれだけでも食べてください」

 

「うへぇ……」

 

 落ち着け落ち着くんだ神島翠星! この状況絶対に見てる奴がいる、なんせこれは絶対に罰ゲームだからだ! この卵焼きを食べようとした瞬間、陽キャ共が来るに決まってる! 絶対にそうだ!

 

 でも俺よここは純粋になれ、純粋に宝条が作ってきた卵焼きを食え! 推しアイドルが作ってきた卵焼きだ! よし! これなら騙されてもなんとも思わない。

 

 考えに考え抜いた俺は自分の片手を差し出す。それを見た宝条は多少驚いた表情をするも、俺の片手に卵焼きをのせた。

 

 そして俺はのせられた卵焼きを口に運んだ。口の中でとろけるような卵焼きの甘み、あまりの絶品さに俺は思わず「美味しい」と言ってしまった。

 

「それは良かったです」

 

 宝条はニコッと微笑んだ。

 

「あの宝条さん」

 

「はい?」

 

「おかしいこと聞くんだけど、これってその……罰ゲームだよね?」

 

 俺は恥じらいもありながらそう言うと、彼女はポカンとした様子で言った。

 

「罰ゲーム? それはどういうことですか?」

 

「いやだって、俺みたいな影薄い奴に『弁当を一緒に食べよう』なんて言わないだろ普通」

 

 俺が少々焦り気味に言うと、宝条は何故かその言葉に不満を持ったのかこう言った。

 

「自分の事をそうやって『影が薄い奴』と卑下するのは神島くんの悪いところです」

 

「卑下、て……だって事実だし」

 

「たとえ事実だとしても、自分を卑下するのではなく少しは自分を大きく見せることも大事ですよ? あとこれは罰ゲームでもなんでもありません。私はただ恩返しをしたかっただけです」

 

「恩返し?」

 

「先週の日曜日に私は貴方に助けて貰ったので、その恩返しをするのは普通のことでしょ?」

 

 なるほどその恩返しが卵焼きてわけか、なら俺も納得がいくな。

 

「そうだな、それが普通かもな……」

 

「あ、あの神島くん」

 

「ん?」

 

 俺が宝条はの方へ視線を向けると、彼女は何故か頬を赤くしていた。不思議に思った俺は宝条の顔をのぞき込む。

 

「前に神島くんにお弁当を作ってきたでしょ?」

 

「お、おう」

 

「あの、私のマネージャーとして、マネージャーが健康でいられるように、私がこれから神島くんのお弁当を作ってきてもいいですか?」

 

「……マジすか?」

 

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