俺の姉が鬱陶しくて仕方がないんだが、どうすれば良いんだ!?
「ちょ、ちょっと待って! 本当に仮面を卒業するの!?」
「うん、そうだけど」
アカネはあっさりとした様子で言った。そんな彼女の様子に俺と宝条は、ポカンと頭の中が真っ白になったまま立ち尽くしていた。
「だって、もう顔バレしちゃったんじゃ、あの仮面の意味もないでしょ?」
「仮面が意味ないとかじゃないでしょ? あの仮面は私達アイドルとしてのトレンドマークだし! それを取っちゃったらファンの皆がガッカリするに決まってるでしょ!」
確かに宝条の言い分は「仮面アイドル」の一オタクとして分かる、でも顔バレした「仮面アイドル」に仮面なんて要らないというアカネさんの言い分も分かる……さて、この状況一体どうしたらいいんだ?
「えーでも、そう言われてもなぁ、もうこれは上からの命令だし、もうホームページ更新しちゃったんだよなぁ〜」
宝条の必死の説得に観念したアカネは、もうやってしまった事に苦笑する。もう何もかも時すでに遅し、ていうやつか……仕方ないこうなったら。
「じゃあこの際「一週間だけ」ていう名目で仮面を卒業をするのはどうだ? 一週間過ぎればまた仮面を付ける、そうすればわざわざホームページを更新する必要も無いし、ファンの悲しみも最小限に抑えられる」
「オタクくんもしかして天才!? それアリだね!」
「これなら仮面を一時的に卒業するだけで済む、これなら良いんじゃないかな? 宝条さん」
そう俺が言うと、彼女は「ありがとう」と優しげな笑みで言った。ここら辺で皆に説明しておこう、俺、神島翠星は女性のギスギスは大の苦手だ! よく覚えておくように!
この後中断されていたソロライブは再開され、無事スミスミはライブを乗切ることが出来た。
※
推しアイドルのスミスミのライブが終わり、帰路に着いた俺は自由気ままに携帯ゲーム機をいじっていた。
そんな時だった。
「おや? おやおやおや? スイちゃん! なんの狩りゲーやってんの?」
そう言って風呂から上がってきたのは、俺の姉、神島沙也加だ。この姉は鬱陶しい程俺に絡んできて、よく薄着でリビングをうろちょろしてる姉だ。
「スイちゃん、学校楽しい? 彼女できた? お姉ちゃんはね大学最高に楽しいよ!」
「学校については俺は黙秘権を使う」
「えぇー、そんなシラケること言うなよ〜」
姉はそう言うと、その欲もそそられないデカい胸を俺の頭に乗せる。家族以外の血縁関係のない人間からするとこの状況は嬉しいかもしれないだろうが、俺は全く嬉しくもないし、まったく興味が湧かない(個人の意見です)。
うちの姉は一応自慢できる人だ。頭はそれなりに良くて、容姿端麗でよく大学でモテると聞いている。おぉ神よ、なぜ俺をこの姉のように容姿端麗にしてくれなかったのですか? 一生恨みますからね神様。
仕方ない、もうこうなったら自分の部屋でゲームするか、そうすればうちの姉もゲームの邪魔はしないだろう。そんな考えに至った俺は早速行動に移した。
「……」
俺は無言で二階にある自分の部屋に向かう。
「ねぇ、スイちゃん〜、学校どうなんだよ〜」
「なんで着いくんだよ?!」
「だって〜、なんかスイちゃん最近の日常が楽しそうなんだもん」
「——楽しい? ……な、なわけないだろ? どうせ姉ちゃんの勘だろ!」
姉は両手をチョキにして言った。
「正解〜、お姉ちゃん勘でーす」




