突然の危機を乗りきったのは良かったんだが、ネットの反響が凄かった、俺はどうすれば良いんだ!?
突然の出来事にその場にいた誰もが、大きく口を開け、ソロライブの生放送では俺が仮面の外れた菫を抱きしめている姿が流れた。
そして俺の周りに、スタッフさん達が集まってくる。
「一体どうしたの?!」
女性のスタッフさんが驚いた様子で俺に問いかけてくる。
「上にあった照明が落ちてきたんですよ」
俺はそう言って、粉々になった照明を指す。それを見た一同の顔色が青ざめていた。
「それより、早くライブを中断させないと!」
一人のスタッフが言うと、周りは慌てて配信ライブを中断させた。
「神島くん、離してください」
宝条は顔を俯かせたまま言う。それを見た俺はすぐさま彼女から五メートルほど離れた。
「す、すまん」
あぁ俺なんてことしてるんだよ……推しのアイドルのソロライブを滅茶苦茶にして……俺この後賠償請求とかされんのかな、やばい視界がクラクラしてきた。
そんなことを思いながら立ち上がると、トボトボと事務所のスタッフさん達に謝りに行こうとした時。
「あ、ありがとう……神島くん、た、助かった……」
宝条はツンツンとした雰囲気を残しながらも頬を赤らめ、俺にお礼を言った。そんな彼女の様子と相反し俺は絶望に満ちた表情で「気にするな」と言った。
「ど、どうしたの?! 滅茶苦茶気にするけど!?」
「いやなんだ……このソロライブに関わってきた人達にお詫びの切腹をしようかと」
それを聞いた宝条はフフッと笑った。
「もしかして今さっきのハプニングのこと気にしてるの? たしかにライブが中断したのはショックだけど、あれは設備が甘かった事務所側の責任よ? 別に神島くんのせいじゃないし、神島くんが責任を負うべきじゃない……なんなら私……神島くんに助けられた訳だし」
彼女からその話を聞いた俺は、つい絶望に満ちた表情から、希望に満ちた表情に変えてしまった。
「神島くんて顔に出やすい人なんだね……」
宝条はフッとこちらを嘲笑うかのような顔で言うと、俺は無性に恥ずかしくなり、
「う、うるさい!」
と言った。
そんな時だった、誰かが俺の裾をクイッと軽く引っ張った。俺は引っ張られた方向へ視線を向けるとそこに居たのは、目に涙を浮かべている穂状がいた。
「神島……わ、私……心配したんだよ!」
彼女は涙を流しながら言うと、俺の腰に抱きつく、それと同時に俺は混乱した。何故ならば俺の体に穂状の胸が当たっているからだ。——ッ!? やめて! それするのだけはやめて! アレが当たってるから! 俺がおかしくなっちゃうから! やめて!
「こら、穂状さん。気持ちは分かるけど落ち着いて」
「だって! もしあのまま二人が照明に当たってたらと思うと! 死んじゃうじゃないかと思って! 涙が止まらないんだよぉ!」
まるで子供のように泣きじゃくる穂状に、宝条は優しく微笑み、彼女の頭を優しく撫でた。
「安心して、私達はその程度じゃ死なないから」
「——ママぁ!」
「私はママじゃありません!」
涙を流したまま穂状が宝条に抱きついているというホノボノな光景を見て、俺はつい軽く笑ってしまった。
この後のネットの反響はまぁ案の定凄かったことだけは覚えている。




