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突然の推しアイドルの危機に俺は一体どうすれば良いんだ!?

 俺の推しアイドル「仮面アイドル」のスミスミは、完璧美少女であり、今をときめく最高のアイドルである。

 

 しかし、その美少女の正体が俺のクラスのマドンナ、宝条菫だと知った俺はこれから先、彼女を推せるのだろうか……。

 

 そんなわけも分からないことを考えていると、ソロライブの後半の部が始まった。

 

 後半の部でも彼女の踊りは華麗で、見ていてやはり彼女はスミスミというアイドルとして可愛い。それでも俺の脳裏には中二の頃の宝条菫のトラウマが染み付いている。

 

「みんな! 大大好きだよ〜!」

 

 そんなトラウマがあるのに、俺は今うちわとペンライトを持って彼女を応援している。俺は一体何のために今までスミスミを応援してきたのだろうか、自分のため? スミスミのため? あぁやばい頭がおかしくなりそうだ。

 

 今引きづっているモノに苦悩していると、そんな俺を見たのか穂状が話しかけてきた。

 

「神島、なんか顔色悪いけど大丈夫?」

 

「あぁ平気だ、今絶賛過去のトラウマと戦っている最中だから」

 

「それ平気なの? 結構辛くない?!」

 

 相変わらずのテンションで穂状は言う。

 

「どうしてもきつかったら言ってね、付き添うから」

 

 彼女はこちらを安心させる為か、微笑んだ表情で言った。なんて可愛いやつなんだ……やっぱ俺じゃなきゃ普通の男は惚れてるぞ。

 

 穂状の些細な気遣いに感心していると、気づけばスミスミのソロライブは終盤に差し掛かっていた。

 

「それでは! 今回最後の曲は私たち「仮面アイドル」が作った新曲「幻想郷」です! 皆! 盛り上がっていこう!」

 

 あの日聞かされた新曲の初公開に、生放送のチャット欄は大いに盛り上がり、投げ銭もより多くなっている。そして、照明の色が曲のイメージに合った色に変わると、曲が流れ始める。

 

 曲のメロディーに合わせるように踊る彼女の姿に、俺はつい見とれてしまう。

 

 そんな時、機材を持ったスタッフさんが俺の前を横切った瞬間だった、スタッフさんの持っていたマイクブームポールがスミスミを照らしていた照明に当たる。

 

 マイクブームポールが当たったことで、一つの照明がグラつき、それが彼女が踊っているステージに落ちる。

 

 そして、最悪な事にその照明は、偶然にもステージで踊っているスミスミに直撃しそうになる。

 

 そんな光景を俺だけが見てたのか、周りはその照明の存在に気づいてない。

 

 そんな時、俺の脳裏に穂状の言葉が過ぎった。

 

『……ねぇ、神島はさ、スミミの事がまだ好きなの?』

 

 その時、俺の身体が無意識的に動いてしまった。何をやってるんだ俺は……こんなの間に合うはずがない……でも間に合わなかったら菫は……。

 

「間に合えェェェ!」

 

 そう叫ぶと、その場にいた誰もが俺の方に視線を向ける。が、俺はそんな視線を無視し、全速力で菫の元まで走る。

 

「神島くん?!」

 

「ちょっと神島!?」

 

 菫と穂状が驚いた表情で言った時、俺は勢いよく菫に抱きつき、落ちてくる照明から彼女を遠ざけた。その次の瞬間、菫が付けていた仮面が外れ、照明は地面に激突し割れた。

 

 突然の出来事に生放送のチャット欄も、その場にいた者たちも慌てふためく。

 

「大丈夫か?! 菫!?」

 

 俺が咄嗟に彼女に聞くと、菫は大きく目を見開いたまま、照明の色のせいか頬を赤く染めているように見えた。あぁやっぱり宝条は誰がどう見てもこんなにも可愛いんだ……。

 

「……う、うん」

 

 そんな彼女の顔を見た俺は心の中で決めた。

 

 俺は菫を一生アイドルとして推していく。

 

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