いきなり怖い人に話しかけられたんだが、どうすれば良いんだ!?
仮面アイドルスミスミのソロライブ前半の部が終わり、後半が始まる数分前。俺は喉が渇いたので、事務所の中にあった自販機でコーラを買った。
「君、スミスミのマネージャーさんでしょ?」
「——そ、そうですけど……どちら様で?」
俺は取り出し口からコーラを取ると、話しかけてきた男の方へ視線を向けた。
「あぁいきなり話しかけてごめんね、私はこういう者でして」
そう言って、40代くらいの男は言うと、胸ポケットから名刺のようなものを取り出し、それを俺に差し出した。
突然の展開に俺はしどろもどろになりながら、名刺を受け取った。
「私はこの事務所の責任者で、名前は安室優と言います」
「そ、そうなんですか! でもなんでそんな人が俺に?」
「いやぁね、菫ちゃんに新しいマネージャーがついたって聞いたからね、ついそのマネージャーさんとやらを見たくなってね。もし君がガラの悪そうな奴だったりしたら……ね?」
安室さんは細めていた目をこちらを威嚇するように開く。『ね?』て何?! この人……もしかして怖い人?! もしかして今日俺の命日?
脳内でそんなことを思っていると、安室さんはそんな俺を見て笑った。
「安心して、私の第一印象として君は大丈夫そうだからそんな事しないよ」
「そ、そうですか」
「それより、菫ちゃんのこと大切にするんだよ? 菫ちゃんマネージャーがいなくてずっと苦労してたから」
「……スミスミとは長い関係なんですか?」
「うんそうだよ、彼女の父親と私は昔からの親友の仲でね。彼女がアイドルデビューした時から応援させてもらってるよ。おっと、もうすぐでソロライブの後半の部が始まる。ごめんね、長く話してしまって、それじゃ」
安室さんはそう言って、俺に手を振って去っていった。
俺も行くか……。
そう思い俺が再び撮影場所に戻ろうとした時だった。
「よっ! オタクくん。スミスミのマネージャーちゃんとやってる?」
聞き覚えのある声、俺は咄嗟に後ろへ振り向く。