表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/117

終幕 それぞれの未来

 東京ドームでのラストライブから数週間後。

 全国ツアーの興奮も少しずつ落ち着き、仮面アイドルのメンバーはそれぞれ新しい道を歩き始めていた。


 俺は、事務所で最後の仕事を終えた後、スタッフと別れの挨拶を交わしながら、改めて実感していた。


 本当に終わったんだな……。


 仮面アイドルは、もう存在しない。

 だが、その名前はファンの記憶にずっと残り続けるだろう。

 

 ※

 

 アカネさんは、海外に拠点を移すことを決めた。


「もともと、海外の舞台でパフォーマンスをしたかったんだよね〜」


 彼女はそう言って、荷物をまとめていた。

 新しい挑戦にワクワクしているのが伝わってくる。


「スミスミもカスミちゃんも、これからは個々で頑張るんでしょ? なら、私も負けてられないよね!」


「アカネさんなら、どこに行っても大丈夫そうですね」


「でしょ〜? でも、またどこかで会おうね、翠星くん!」


 彼女は軽くウインクして、笑顔で去っていった。

 

 ※

 

 ミズレさんは、裏方へ回ることを決めた。


「アイドルってのも、もう充分楽しんだしな」


 彼女は新しい事務所に入り、若手アイドルの育成を手伝うらしい。


「まぁ、お前も宝条も、しばらくはバタバタするんじゃねぇの?」


「まぁな。でも、ミズレさんも忙しくなるでしょ」


「そりゃな。でも、次は裏方からトップアイドルを育ててやるよ」


 彼女はそう言って、少しだけ寂しそうに笑った。

 

 ※

 

 カスミさんは、ソロアーティストとして活動を続けることを決めた。


「……また、ステージに立ちたいから」


 彼女はそう言っていた。

 炎上騒動で一度傷ついた彼女だったが、それでも再び歌いたいという強い意志を持っていた。


「またライブを観に来てくれますか?」


「当たり前じゃないですか」


「……よかった」


 彼女は安堵したように微笑み、俺に深く頭を下げた。


「翠星くん、本当にありがとう。私を支えてくれて」


「……いえ、俺は何もしてないですよ」


「そんなことないです。あなたがいたから、私はまた歩き出せるんです」


 彼女はそう言って、まっすぐ俺を見つめた。


 ——仮面アイドルは終わったが、カスミさんの夢はまだ続いていく。

 

 ※

 

 俺は、最後に宝条の元へ向かった。


 彼女は、事務所の会議室で何かを書類に目を通していた。


「……やっぱり、お前は忙しそうだな」


「そりゃね。アイドルをやめたら、次にやることを考えないといけないし」


 俺は椅子に腰を下ろし、少しだけため息をつく。


「お前は、どうするんだ?」


 宝条は、一瞬俺を見つめたあと、微笑んだ。


「……また、ステージに立ちたい」


 彼女の答えに、俺は驚かなかった。


 宝条菫は、ただのアイドルではない。

 彼女は、生まれながらのステージの人間だ。


「でも、今すぐに復帰するわけじゃない」


「……?」


「しばらくは、自分のことを見つめ直したいかなって」


 俺はしばらく考えたあと、静かに頷いた。


「そっか」


「でも……」


 宝条は、俺をじっと見つめる。


「翠星は、どうするの?」


 俺は少しだけ考え、静かに答えた。


「お前と一緒にいる」


 宝条の目が驚きに見開かれる。


「……え?」


「マネージャーとしてじゃなくて、お前の彼氏として、お前のこれからを支えたい」


 俺は、改めて思っていた。

 この女は、俺がいないとダメだ。


 そして、俺も——こいつがいないとダメなんだ。


 「お前が次に何をするかは、まだ分かんねぇけど」


 俺は、宝条の手をそっと取る。


「俺は、お前のすぐそばで支える」


 宝条は、じっと俺を見つめ——


 そして、涙ぐみながら微笑んだ。


「……ありがと、翠星」


 

[エピローグ]

 

 数日後。


 俺と宝条は、一緒に街を歩いていた。


 仮面アイドルの解散から時間が経ち、ファンの間ではまだ余韻が残っている。


「なぁ、お前、次にやること決まったのか?」


「うーん、まだ考え中」


「相変わらず優柔不断だな」


「うるさい。でも、一つだけ決めたことがある」


 俺が訝しげに見ていると、宝条は少しだけ微笑んだ。


「私は、またステージに立つよ」


 彼女の目は、強い意志に満ちていた。


 俺は苦笑しながら、頷く。


「だろうな。……まぁ、お前がまた舞台に立つときは、俺もそばにいるよ」


「当然でしょ? だって、私の彼氏なんだから」


 宝条はそう言って、俺の腕にそっと絡む。


  ……相変わらず、こいつは大胆だな


 でも、それがこいつらしい。


 仮面アイドルは終わった。

 だけど、俺たちの物語はまだ続いていく。


 俺は彼女の手を握り返し、前を向いた。


 ——これは、一つの終わり。

 そして、俺たちの新しい始まりだ。


 「さぁ、行こうぜ、宝条」


 「うん、翠星!」


 俺たちは、共に新たな未来へ歩き出した——。

 

何とか無事に最終回を迎えることが出来ました!

読んでくださりありがとうございました!

次回作も用意していますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ