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アイドルたちの武道館ライブ、俺は一体どうすればいいんだ?!

 照明トラブルを乗り越え、ライブは終盤戦に突入していた。

 ステージ上では、宝条菫スミスミを中心に、仮面アイドルのメンバーたちが最高のパフォーマンスを見せている。


 俺は袖からその様子を見守りながら、無線でスタッフに指示を出していた。


「照明の復旧はどうなってる?」


「予備系統に切り替えました! 一部演出が変更になりますが、パフォーマンスに影響は出ません!」


「了解。スミスミたちの動きに合わせて、演出を調整しろ」


「はい!」


 スタッフたちは迅速に動き、ライブはトラブルを感じさせることなく続いていた。

 これは、宝条がリーダーとしてステージを引っ張っているからこそできることだった。

 

 ※

 

 次の曲が始まると、会場全体が一体となったような熱気に包まれる。


 ステージ上では、宝条の存在感が圧倒的だった。


 観客の視線を独り占めするようなカリスマ性。

 ダンスのキレ、歌唱力、そしてファンサービスまで、すべてが完璧だ。


 まるで、彼女がいるだけでライブの空気が変わるようだった。


 ……こいつ、本当に“本物”だよな。


 文化祭の時の彼女とは別次元の輝き。

 ステージの上では、リーダーとしての自覚と責任を背負い、仮面アイドルをまとめ上げている。


 だからこそ、仲間やファンは彼女を“スミスミ”と呼び、ついてくるんだ。


「スミスミーー!!」


「最高ーー!!」


 観客たちの歓声がさらに大きくなる。

 武道館全体が、彼女たちのステージに魅了されていた。

 

 ※

 

 そんな中、俺はふと観客席にいる穂状瑠衣の姿を見つけた。


 彼女は客席の端で、ステージを食い入るように見つめていた。

 まるで、友達としての誇りと、どこか少しだけ遠くに行ってしまった寂しさが混ざったような表情。


 俺はそっと彼女の隣に行き、声をかけた。


「……どうだ? 宝条、すげぇだろ」


 穂状は目を離さずに、小さく頷く。


「うん……めっちゃすごい」


「友達として、やっぱ誇らしいか?」


「もちろん! ……でもね、ちょっとだけ悔しい気もする」


「悔しい?」


「だってさ、スミミはどんどん前に進んでるのに、私はまだ“ただの友達”のままじゃん」


 穂状は少し寂しそうに笑った。


「私も何かしなきゃなって、スミミを見てるとすごく思うよ」


 その言葉に、俺はしばらく何も言えなかった。


 俺も、どうなんだろうな……。


 宝条のマネージャーとして動いてるけど、俺自身が何を成し遂げるべきか、まだはっきりしないままだ。


 でも、少なくとも今は——


「まぁ、とりあえず、今は最後まで見届けようぜ」


 俺は軽く言って、再びステージに視線を戻した。

 

 ※ 

 

 ライブがクライマックスに差し掛かり、最後の楽曲に入る前に、宝条がマイクを持った。


「みんな、今日はありがとう!」


 観客からの大歓声。


「実は……このライブが決まったとき、少しだけ不安だったんだ」


 その言葉に、観客たちは静かになった。


「カスミちゃんのことがあって、私たちのことをどう思われるのか、正直、怖かった」


 カスミさんが小さく頷く。


「でもね……そんなの、どうでもよかった」


 宝条は笑った。


「だって、私たちのファンは、こんなにたくさんいるんだから!」


「「「うおおおおおお!!!」」」


 武道館が歓声に包まれる。


「だから、私たちはこれからも、どんなことがあっても負けない。仮面アイドルとして、最高のステージを届け続ける!」


 再び、大歓声。


「それじゃあ、ラストいくよ!」


 照明が再び落ちる。

 そして——最後の曲が始まった。

 

 最後の曲は、仮面アイドルのデビュー曲。

 彼女たちがアイドルとしての一歩を踏み出した、大切な楽曲だった。


 それを、彼女たちは今までで最高のパフォーマンスで披露する。


 会場全体が揺れるような熱気。

 ペンライトの海が、波のようにステージを包み込む。


 俺はその光景を見ながら、ただ静かに立っていた。


 ……こいつら、本当にすげぇな。


 仮面アイドルのライブは、間違いなく成功だ。

 どれだけネットで騒がれようと、結局最後に勝つのは“本物”だけ。


 そして、今まさに——本物のアイドルたちが、武道館のステージに立っている。


 曲が終わると、会場全体が割れんばかりの拍手と歓声で包まれた。

 

 ※

 

 ライブ終了後、メンバーたちはステージ裏へと戻ってきた。

 宝条は汗を拭きながら、俺の方を見る。


「翠星」


「……お疲れ」


「うん」


「ライブ、完璧だったな」


「当たり前でしょ」


 そう言いながら、彼女は少しだけ、満足そうに微笑んだ。


 俺はふと、彼女に言う。


「お前がリーダーでよかったな」


「……何、それ」


「いや、ただの事実」


 宝条は少し黙ったあと、小さく笑った。


「ありがと」


 その言葉を聞きながら、俺は改めて思った。


 俺は、こいつのマネージャーとして、何をするべきなんだろうな。


 ライブは終わったが、彼女たちの未来はここから続いていく。

 そして俺も——マネージャーとして、この世界にもっと深く関わることになるのかもしれない。


 そんなことを考えながら、俺は最後にもう一度、拍手に包まれる会場を見つめた。


 ——仮面アイドル、武道館ライブ。


 それは、新たな始まりの幕開けだった。

 

 

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