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ショコラブラウンの錬金工房  作者: 池田しょこら
ショコラと世界魔法図書館
9/17

世界の形



暗い教室の中で映像が大きく表示されていた。


「西暦2018年世界各地で災害が起こり、各地で"影"が出現し始めました。最初は人の形を模した影や、動物の影などの目撃情報が街中で多発しました。触れても消えていき人間には影響はないと思われて来ましたが、のちにこれらは魔物の原型だと言うことがわかりました。


それからの変化は著しく、災害と共に小型の魔物が現れるようになりました。魔物は人間を襲い、地方の農村からじわじわと侵食していったのです。特に昔の日本は各家庭で武器を所持しておらず、魔物の被害が深刻でした。


その頃、人々の間である力が発見されました。のちに魔法と呼ばれるその力は最初、小さな子供が使ったとされています。


魔力と呼ばれるエネルギーが、この世界を覆っていることを確信した学者達は、政府と協力して都市結界網を作り上げたのです。この結界は、魔物や魔力障害を阻み、一定の魔力を維持する仕組みです。


そこまでたどり着くのに2年の月日が流れ、その間に都市以外ほとんどが人の住めない土地となっていました。大結界として、東京、名古屋砂界、大阪要塞基地、博多水上結界など10の大結界と200以上の小結界があり、現在も人口の増加により増えています。これらは全て日本政府の管轄になります。


ここまででわからないところはありませんか?


では、次に世界の動きを見ていきます」


部屋が暗いので、当然寝ているショコラであった。

徹夜で仕事をして仮眠を取っていたら、マァナに揺さぶられて起き、急いで支度をして今に至る。

頑張って起きようとしているのだが、頭が下へ下へと重力に従って落ちていく。


「日本よりはやや遅れて、世界でも同じような現象が各地で発生しました。そして、誰でも使える魔法は紛争地帯に反撃の力を与え、さらなる混乱へと導いたのです。現在に至っても争い続けている地域もあります。もっとも、個人が力を持ってしまったが為に国境が機能しなくなり、移民、難民の問題が深刻化しました。


事態を重く見た各国は、世界政府を作りルールを決めることにしました。1.都市結界外周から半径50kmをその都市の管理区域とし、その範囲内で小結界を作ること。結界ごとに責任者が存在し、自治をしていくこと。2.魔法の使用はその都市結界内のルールに従うこと。3.都市結界外の出来事(管理区域外)は、全て自己責任となる。


他にもたくさんありますが、主に重要なものを取り上げました。詳しく知りたい方は国際法の講義を取ってください。


魔法歴1年は、世界政府が出来た西暦2020年になります。復興はすぐに終わり、魔法のおかげでさまざまな技術が栄えました。特に異空間の発達は凄まじく、地球に住んでいる人類よりも異空間に居住する人類の方が多いのです。現代はまさに異空間社会と呼べるでしょう。


これからも技術が加速度的に上がり、目まぐるしく移り変わる情勢ではありますが、みなさんもこの世界を変えることのできる人材なのです。ですので、この学舎でよく学ばれることを願っています。では私の講義はこれまでとします」


講師は、ショコラの方をガン見しながらにこやかにお辞儀をして去っていった。


「ふふ、ぐっすりだったね」


ショコラの隣で頬杖をしながら聴講していた夢が話しかける。


「ふぁ、あれ?夢ちゃん?いつの間に!?」


「最初からいたんだけど、葵さんはずっとうとうとしてたから気付かなかったんだと思うよ」


「えへへ、昨日は徹夜しちゃって……。でも、お仕事もちゃんと両立するって決めたから!」


立ち上がって両手にぐぐっと力を入れて元気を出した。


「偉いね。それじゃあ、一緒にランチでエネルギー補給しよう」


「さんせーい!夢ちゃんと学校でランチできるなんて嬉しいなぁ。やっぱり学校といえばお友達ランチ!」


学生の本分は勉強なのだが、ショコラはまだ知らない。

本校舎は緩やかなWのような形をしており、中央の窪みが中庭となっている。

4階建ての長細い校舎が4つ繋がっていると言い換えてもいい。

そして裏手には旧校舎があり、渡り廊下で繋がっている。

食堂は本校舎と旧校舎の間にあり、外がフォレストコート、中がコンポジットコートと呼ばれていて、学生の間では、フォレスト、コンポジなどと略されている。


テーブルに座ると、メニュー表示が現れた。

指で選んで魔力を流すと、電子マネーでお金が支払われて食事が転移されて出てくる。


「やっぱり秋はフォレストだよね!紅葉が綺麗だし、外の空気を感じながら食べるご飯は格別!」


「ボクはコンポジのソファで寛ぐのが好きだけどね。あそこの錯覚を利用した空間配置のおかげで穴場スポットがいくつかあるんだよ」


「へぇ、あそこ迷っちゃいそうで奥まで行ってないや。夢ちゃんと一緒だったら安心かも」


「また連れてってあげるよ」


まだ9月の為、気温的にもフォレストコートにはそこそこ人がいる。

夢は容姿が目立つので、チラチラと複数の視線を感じる。

その中に、こちらをじっと見つめる人がいた。


「ありがと、まだまだ校舎が広すぎて全部見回れてないから助かる〜。んん?なんか視線が……レンくん!」


目立つ夢に、さらに目立つシオンが同じ場にいるので、ざわざわと徐々に騒がしくなる。


「ふふ、ライバルの登場だね?君もランチはいかがかな?汐見レン君」


シオンは、本を片手に珍しくかけていた眼鏡を取りながら近づく。


「たまたま通りかかっただけだったけど、ショコラに変な虫がついてたからご一緒するよ」


「女性に向かってそんなこと言うのは感心しないなぁ。女心がわからないと苦労するよ?」


「別に女性に好かれたいとは思ってないから。君も言葉遣いをもう少し可愛くしたら?」


「ふふ、ボクっ子は嫌い?それとも、葵さんを取られるのが嫌なのかな?」


「あははは、ご冗談を。僕と君とじゃ勝負にならないよ」


蚊帳の外に置かれたショコラは、ご飯を黙々と食べていた。


「2人とも笑ってるし、仲良いなぁ。もっと私も2人と仲良くしたいなぁ」


ショコラがぼそっと呟くと、2人して「仲良くないから」と否定するが、ショコラはうんうんと頷いて気付いていないようだった。


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