表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/14

第二話  エンカウントしよう

「ここが…蔵書庫かぁ」

リアの記憶を頼りに、無駄に広い(ついでに古臭い)屋敷の蔵書庫についた私。

…勢いで来ちゃったけど、これ、勝手に入っていいのかなぁ。

しかし、誰かに確認を取るのも大変だ。なんせこの屋敷、広いわりに使用人の数が極端に少ない。事実あのメイドさん以降、誰にも会っていないのだ。

どうやってこんなに広い屋敷を管理しているのだろうね…。

「うーん、どうしよ」

…まあいいや、女は度胸…前世が女だったかどうかすら定かじゃないけど、まあとにかく当たって砕けろだ!

ということで扉を開き中に入る。

蔵書庫の中は何だが薄暗い感じだ。構造は元の世界のヨーロッパの古い大学の図書館という感じで中々に広い。

すごいね、腐っても公爵家ってかんじだね。

とにかく、情報を集めよう、幸い文字は読める。あとはこの世界について書かれた本がどこにあるかだが…うーん、リアの記憶にはない、これは地道に探すしか…。

と、そんな感じで思案にふけっていると。

「おい、お前」

「ひゃい!?」

突然声を掛けられた。え、誰かいたの!

慌てて声のした方へ振り向く。

果たして、そこには…銀髪の浅黒い肌をした長身の青年が立っていた。

誰!?

…あれでもなんかどこかで見たことがあるような?

「あ、あなた…誰?」

私が取り敢えず誰何すると。

「質問するのは俺の方だ…お前、どうやって入ってきた?」

質問するのは俺の方って…どうやってって…

「えっと…普通に?」

「普通に…だと?」

この人は何を言っているのだろうか…

「おかしい…人払いの魔法を最大出力で掛けたはずだが…」

いや、ホントに何言ってんのこの人。

人払いの魔法を最大出力?なぜに?

「お前、名前は?」

銀髪の青年が私に問うてくる。

私の方が質問したいのだけど、リアの記憶の中にこんな人が屋敷にいるなんてものはなかったし…でもどこかで見た顔なんだよね…。

しかしなんかこの人には逆らっちゃまずいと本能的が訴えてくるんだよね…ここはそれに従って素直に質問に答えよう。

「リア・コーザリティー…」

「コーザリティー…なるほど、お前がこの家の長女か…なるほどお前が…」

えーと

「あ、あなたの名前が」

今度は私が彼に名前を問う。

「俺の名前はないな」

名前が…ない?

「いったいどう…」

私が疑問を口にしようとした瞬間、彼が


「が、配下や人間どもからは「魔王」と、そう呼ばれている」


そう言った。


―ドバァッ!


その瞬間、彼から威圧的な赤いオーラが放たれる。ついでに一対の赤い翼も彼の背中から現れる。

その威圧感はすさまじく私の体は勝手に震え始める。

魔…王…?

そこで私は思い出す、そうだ!この青年はこの赤い翼は、リアが本の挿絵で見た!

その本のタイトルは「魔王の軌跡」だった。

内容は魔王はアル大陸の征服を宣言している。だが今のところ動きはなく、彼の意図は不明。しかしその強さは世界最強であり人類から畏敬を持たれており、さらには魔王を崇拝する人もそこそこいるのだとか。

昔魔王を討伐するため、人類側の魔王的な存在である勇者が神から貸し与えられた聖剣を携えて魔王城に向かったがボコボコにされて逃げ帰ってきたとか。

とにかく、本の内容によるとそんな感じらしい。

「…ほ、本物?」

「あ?証明にここら一体を吹き飛ばしてやろうか?」

あ、なんかヤバい事言ってるううう!

れ、冷静になれ、リア、考えよう。

…えーと、魔王が人払いの魔法?を最大出力?でかけて、この歴史だけはある公爵家の屋敷の蔵書庫で何かしているところに私が入ってきたと…

うーむ

うん

「あれ、私って、今割とピンチ?」

「…まあ、ありたいていに言えばそうだな」

わあ、魔王からのお墨付き!

「…どけ座すれば見逃してもらえたり?」

「…どけ座だと?」

あれ、この世界にどけ座の文化はないのかなぁ…。

「取り敢えず私が死ない方法なんかないかな!」

なんか怖すぎてやけくそになってきた。というか夢じゃなければせっかくあの地獄から解放されたと思われるのに、即死亡とか勘弁!

「くく、それを俺に聞くか?…それはもちろん俺を倒すしかないんじゃないか?」

魔王さん、余裕たっぷりですね、そりゃそうか、八歳児が相手だもんね。

「…でも聖剣とか持ってないし」

「聖剣か…今は勇者が不在だからな、案外神とやらに祈れば運が良ければ貸し与えられるんじゃないか?」

魔王さん、意外とノリがいい、こっちは命の危機なのに!

…しかし運が良ければねぇ…勇者って魔王の口ぶりからすると世界に一人なんでしょ?それこそ宝くじ当たるより低い確率なんじゃないの?

はぁ、そんなの無理に決まっている…まてよ?

確か神を名乗る声が言うには私は運がすごくいいらしい。

…これはワンチャンスあるのでは?

「…ちなみどうやったら貸してもらえるの?」

「…お前、肝が据わりすぎじゃないか?…確か、前にボコった勇者は「いでよ、聖剣」とか言って召喚していたな」

いや、教えてくれるんかい、殺す気満々なのに親切な魔王、これもうわからないね(諦観)。

…はぁ取り敢えずやってみる、か。失敗したら死だけど。

私は片手を上に掲げる。

「ほう、本当にやるのか、くくく、お前面白いな」

なんか、魔王に笑われているが無視する。

そして…

「いでよ!聖剣!」

と言いう。

…まあ、何も起きな

―カアアアッ!

と、突然掲げた手の先が強烈な光を放つ。

「きゃあああ目がががが!」

ま、眩しすぎる!

「な…まさか!」

魔王が驚愕の声を上げている。

そしてしばらくして光が収まる。

気が付くと掲げた片手に何かを握っている感触が伝わってくる。

それを目の前に持ってくる。

それは…美しい剣だった、碧く透き通るような刃、他にも各所が黄金で飾り付けられている。

…これって

「…聖剣…だと…まさか成功させるとは…これがコーザリティー家の血筋の力か!」

…魔王がなんか言ってる。血筋の力?たぶん関係ないと思うけど。

とにかく。

うん…ここからどうしよう?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ