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第十二話 クリティカルを決めよう

俺たちの目の前で、赤き殺意と碧い残光が交差する。

リアと突然出てきたのっぺりとした真っ赤な不気味なやつは意味不明な会話の後、目で追えない、残像しか見えない速度で戦いをはじめた。

リアって…こんなに強かったか、なるほど脅されて恐怖に震えるわけだ…

…状況はほとんどわからない、しかし一つ解るのはリアが俺たちをあの赤いのから守ろうと命を懸けて戦っているということ。

俺たちは浅い付き合いのはずだし、あの赤いのが言っていた通り、俺たちが死んだ方が彼女にとって都合がいいはずだ。

…だからわからない、なぜ先ほどまで殺すと脅した俺たちを守ろうと、彼女は戦っているのか本当に…わからない!

ああ、もう一つわかることがある、俺は昔から察しがいいって伊達に言われちゃいない。

戦況は、リアが…劣勢だ。

残像の中に赤が増え始める、あれは…彼女の血だ。

このままでは遠からず彼女は敗北する…あの赤いのに。

…なぜ降伏しない、赤いやつの言葉からして降伏すれば多分リアだけは助かるだろう。

ああ、本当にわからない、俺の感情は…恐怖と混乱と困惑で…めちゃくちゃだ。

わからない、わからない、わからない…






「はぁ、はぁ、はぁ」

少し距離をとる。

へへ、私ってあの鍛錬だけでここまで強くなってたんだなぁ。うぐっ

でも、戦況はかなり悪いわね…具体的にはダンケルクに追い詰められた連合軍くらい。

全身切り傷で、血で真っ赤だ。ああ、痛いなぁ。

もう30分ほどっ経っただろうか、ずっと全力で奴の腕を聖剣ではじき続けた。

はあ、はぁ、苦しいなぁ…。

でも私は覚悟を決めたのだ、こんなことではくじけない。

もう絶対にくじけたくない!

『帝位候補者がこの程度、いやその年齢ならまあ及第点でしょうか』

はあ、あんたに及第点とか言われても全くうれしくないね。

『そろそろ、降伏してはいかがでしょうか?もう限界でしょう?』

「はぁ、はぁ…ふふ、断るわ」

『全く愚かな帝位候補者ですね、なら次の一撃を最後としましょう。私も時間が惜しいので』

奴が突撃の態勢を取る。

はは、いいでしょう一撃で葬ってやるわ!

呼吸を整え私も突撃の態勢を取る。

…今!

私と奴が同時に動き…


奴の肘が私の腹に食い込んでいた。

「あ、が」

―ドバァッ

そのまま吹き飛ばされ壁に叩きつけられる私。

「ガハッ」

大きな血の塊を口から吐きだす…はは…情けない。

『瀕死だが生きている、だがもう動けない、ふむ、完璧な制圧です、皇帝陛下がおられれば褒めてもらえたでしょう』

くそ、覚悟を決めたんだろ私!

『さてさっさと「偽人」の子供を始末してしまいましょう』

…いや、そうだ「私」の覚悟なんて…いつだってどこか安っぽい、この程度のものだった。

もういいやどうでも、もう…死のう、これ以上生き恥を晒すのはごめんだ。

私はギリギリ動く腕で聖剣の柄を掴み


―随分とあきらめが早いな、リア―


「魔…王?」

なんで…?

―俺の前だとあんなに生き汚かったのに、赤いの相手にこんなもんか―

「…」

―お前の覚悟はそんなものか?―

「「私」の覚悟なんて…」

―「私」じゃねぇんだ、お前の…リア・コーザリティーの覚悟だ―

「リア…の?」

リアの覚悟…どんな形だろうが初めてできた友達を守る…そうだ、その覚悟を決めてたはずだ私は!

…でももうできることが…ない。

―いいか、リア、俺はお前を俺と同じ領域にる奴だと思っている―

…え?

―世界最強は紛れもなく俺、そしてお前はそれに並ぶ―

―因果律干渉耐性?お前の能力はそんなチンケなもので到底防げるものじゃない―

…っ

―だからもう一度立て、そしてお前のすべてを込めた一撃を…放て!―

私は聖剣を支えにふらりと立ち上がる。

『む、まだ動けましたか、まあいいさっさと制圧してしまいましょう』

やつが振り返りこちらに迫る。

私は聖剣を…投擲の構えを取る。

私は…リア・コーザリティーの覚悟を遂行したい。

私は…初めてできた友達を守りたい。

「私は…スローライフを、誰も傷つかない優しい人生を送りたい!」

全力で…聖剣を投擲する。

『剣に因果の力を込めましたか…しかし私には因果律干渉耐性があり..グボェっ!』

聖剣が奴の胸のど真ん中に突き刺さる。

これは、クリティカルヒットって…やつかな、ふふ。

私は地面に付す、しかし視線は外さない。

『ガアアアっ!なぜ、まさか私の因果律干渉耐性を越えた…と?』

「はぁ、はぁ…ふふ、そうよ」

『なッ!』

奴はそれを聞いて固まる、しかし奴からは血液のような液体が流れつつける、なんとなんくだがあれは多分致命傷だ。

そして奴は…

『はっはっはっは、私の負けですよ帝位候補者』

笑いながら負けを認める、なんか癪に障る。

そして奴は言う

『あなたこそ新たな皇帝にふさわしい、この「赤龍」の権限で持ってあなたを第251代インガ皇帝としましょう』

は、皇帝?なにを…

『その前に…邪魔な偽人は第二、第三の私が処分しましょう』

第二、第三の…!?

―ガシャン、ガシャン、ガシャン

あらゆるところからあの足音がして、赤いのっぺりとした「奴」が無数に表れる。

…は?

…ああ、これは…万策つきたかな

『さあ、私たち、新たな皇帝の御膳で偽人の処刑を…

そうして奴らが動きだそうとした瞬間。


「ガンロード」


誰かの、声が空間に響く、そして…

―ドバァン!

突如、無数にいた赤い「奴」すべてがはじけ飛ぶ。

「え?」

『は?』

…あれは。

「全く、すっかりお転婆になられて…お嬢様」

グレイの髪に鎧を着こみ、奇妙な…まるで大筒と剣をそのままくっつけたような…大剣を前に掲げた大男。

「アン…ドレ?」

コーザリティー騎士団団長アンドレ・ジャッジだ。


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