ういさんの物語 6話 遠足(MPK)
治癒魔法を駆使して、人々を銭の力で救済していた聖職者「ういさん」は、
司教と会話し、ひどい人々に出会った頃の話をはじめた。
ういさんは、ギルドマスターと語り合っているうちに、昔を思い出した。
そう、確かあれは、いつだったか。
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ういさんが聖職者として歩みだし、治癒魔法で人々を瀕死に出来ると理解した頃の話だ。
当時は誰も、いや、今もだが、治癒魔法が非常に凶悪な魔法になり得ると知られていなかった頃
初心者ギルドの子達に出会った・・・。
あれは、そう、広場で、負傷者の治療に当たっていた時、
ピリピリした討伐隊の一行に出くわした時の事だ。
「初心者がいると、魔物討伐の足手まといになるんだ。弱者は、ほんと、迷惑だから、
来るなって何度も言ってるのに、だから臨時で、メンバーを雇い入れるのは、反対なんだ。
初心者は凶悪なダンジョンに二度と来るんじゃねぇ。初心者同士でママゴトでもしてろっ。
西の遺跡に行くぞ。昨日の分を取り返すんだ。」
赤い鎧に身を包んだリーダー格の男がメンバーと思われるプリーストに対して怒鳴っていた。
ありゃダメなパーティだな。ういさんは思った。
そんな折に、ういさんは初心者ギルドの子達と、出会い、遠足に誘われた。
「ういさんは、聖職者さんなので、私達の保護者ですね。」
「う、うん。そうなるのかな?」
「保護者さんよろしくお願いします。」「うい先生、よろしくお願いします。」
かわいらしい声で、「うい先生」と呼んでいた女の子?は、
この初心者ギルドを統率する通称「***」という。検閲に引っ掛かり表示できないようだ。
初心者ギルドは、一見、初々しい。幼稚園児ですか?と間違えそうになる衣装で身を包み、
初心者用のハートのペンダントをぶら下げ、お弁当、シートなどを持参して、
遠足と称して、凶悪なダンジョンへ向かう。
彼女ら一行は、西の地にある古代遺跡群の中にある、地下廃墟へ進んで行った。
昔は、軍事施設だったらしい建物は、頑丈で、今も当時の名残を残しており、
柱も壁もしっかりとしている。さすがに装飾品はほとんどなくなっているが、
豪華な建造物だった事が、うかがい知れる。
ある程度地下廃墟を進んだところで、休憩となった。
「このあたりで、お弁当にしましょう。」「いいですね。」「そうしましよう。」
「バナナはおやつに含まれますか?」
シートを広げて、みんなでお弁当を食べ始めた。
何故、こんな魔物の巣窟のようなところで、お気楽に弁当なのだ・・・。ういさんは戦慄した。
と、そこへ、魔物討伐に来たと思わしき、人々が通りかかった。
「こんにちはー。」「おっはー。」「やっほー。」
元気な挨拶だ。
通りかかった人々は驚いていた。
「えっ、何? ここ凶悪な魔物が出没するところだけど、・・・ピクニック?」
「なにやってんの。ここ危険地帯だぞ。えぇ・・・?」
「遠足でーす。」「お弁当でーす。」
元気なお返事だ。いや、なんか場違いだ。
通りかかった人々は、ナイト、ハンター、ハイウィザード、プリーストなど、
魔物討伐の装備で来ている10名程のパーティだ。
見覚えのある赤い鎧を着た男もいた。
広場で怒鳴り散らしていたダメなパーティーの人達かもしれない。
挨拶を交わすと、それらの人々は驚きつつ、左奥の部屋へ進んで行った。
「じゃー、そろそろお散歩に行ってくるねー。」
初心者ギルドの統率者「***」は、3人程連れて、右奥の部屋へ走って行った。
「はーい、よろしくねー。」「いってらっしゃーい。」「待ってるよー。」
他の連中は、シートの上で寝そべっていた。
ういさんは、心細くなってきた。
「大丈夫なの?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、いざとなれば、うい先生の凶悪なヒールがあるでしょ?」
「いや、うちのヒールは頼りにならない。・・・というか凶悪って・・・何故知ってる。」
「うふふふ、見てたんだよ。こっそりと。そしたら***が、遠足に誘ってみようって。」
「見られていたのか!マイナスヒールを。」
しばらくして、左奥の方角から悲鳴が上がった、
「きゃー、助けてー。」
「魔物がいっぱーい!」
さっき、右奥へ走って行った初心者ギルドの子達の声だ。
何故、左奥から聞こえてくるのだ・・・。右奥へ行ったはずなのに。
声だけが響いてくる。
「は?何やってんだ、おまえら。」
「こっちへ来い。助けてやるぞ。」
「何匹いるんだ。ものすごい量の魔物だぞ。」「回復魔法の準備を」
先程のパーティーの人達の声だ。緊迫している。
ういさんは、心配になって声をかけた。
「このまま寝転がっていていいの?」
「いいの。お昼寝タイムなの。」「むにゃむにゃなの。」
駄目だ、こいつら使い物にならん。
ういさんは立ち上がり、左奥の部屋まで歩いて来た。
左奥は広い大ホールのようになっており、
大量の魔物から逃げるように、初心者ギルドの子達が、こちらへ向かって走っていた。
魔物は、ミノタウロス、ガーゴイルなど。数にして50体はいるだろうか。
そして、初心者ギルドの子達は、次々と・・・転んだ。
「ころんじゃった。」「いたーい。」
初心者ギルドの子達が転んだところに、大量の魔物が埃を巻き上げながら突き進んだ。
そして、先程のパーティーの人々が魔物に向かって攻撃を放った。
「間に合わなかった。」「アローストーム!」「ストームガスト!」
魔法や矢が魔物に降り注ぐ。最前列にいた魔物10体程は、一気に片が付いた。
だが、残りはまだ大量におり、パーティーの人々に襲い掛かった。
ナイトが盾で仲間をまもるように動いていた。
「ヒール!」「ストームガスト!」回復魔法と攻撃魔法が乱れ飛ぶ。
だが、多数の魔物に囲まれ、一人、また、一人と倒れて行った。
「こ、こんなところで・・・。」
やがて、最後の一人が倒れ伏した時、魔物は10体程が残っていた。
・・・そして、魔物達はういさんを見つけ、一斉に、こちらを向いた。
「やばい・・・。」
ういさんは、焦りを覚えた。
「・・・ちょっと多かったかな。」「大丈夫?」
魔物の背後で声がすると、残りの魔物達は次々と倒されていった。
さっき転んだ 初心者ギルドの子達だ。魔物に踏みつぶされていなかったか?
初心者ギルドの子達は、ういさんを見かけると、声をかけてきた。
「大丈夫でした?」「見学どうでした?」
「どうとは・・・。」
ういさんは、あっけにとられていた。
背後から、お昼寝をしていた子達もやってきた。
「終わった?」「あら、やられてしまったのね。」「勇者の一行はやられてしまいました。」
ういさんは、倒されたパーティーの人達の元へ駆け寄った。
初心者ギルドの子達も寄って来た。
「さぁ、うい先生。出番です。」「お得意の治癒魔法で、とどめを。」
「えっ・・・?」
「勇者の一行?は、魔物から追われている子を助けようとして、魔物の群れにやられました。
このダンジョンの難易度が高かったのです。」
「そして、聖職者の治癒魔法で、眠りにつきました。」
「そういう筋書きです。」
ういさんは驚いた。
「ひどくない? 助けないの?」
「ですから、ういさんの治癒魔法で助けるのです。」「さぁ・・・。」
ういさんはたずねた。
「回復剤とかないの?」
「バナナならあるよ。」
「いや、バナナは・・・。」
「お口に、バナナをねじこみましょうか?」
「いや、しなくて良い。」
初心者ギルドの子達は、倒れた人達の装備品を脱がし始めた。
「何をしているの?」
「ペナルティです。」「死者には無用の物です。」「街で売ります。」
「フリーマーケットとかで格安で。」
すべて脱がし終わると、初心者ギルドの子達は、パーティの人達を背負って、
ダンジョンの外へ連れ出すと、そこへ放置した。
「重いからね。ここまで。たむけの花を撒きましょう。」「良く頑張りました。」
そういうと花を撒いていた。
「よし、では、そろそろ撤収です。おうちに帰るまでが遠足です。」
ういさんは、驚愕した。
「これが・・・遠足・・・。」
「うい先生、どうでしたか? 遠足に参加してみての感想は。」
「・・・・・。魔物に、この人達を襲わせていたんじゃないの?」
「何を言っているのですか。うい先生。私達が、散歩していたら、魔物に襲われたのですよ。」
とってもかわいらしい笑顔を振りまいて、初心者ギルドの子達は言った。
「ここは死と隣り合わせの危険なダンジョン。弱者は淘汰されてしまう。非情な世界です。
私達も全力で魔物を退治しましたし、聖職者のヒールも効かなかった。
みんながみんな、全力を出し切った結果なのです。さ、戦利品を持ち帰りましょう。」
「せめて生かす手段があれば・・・。」
「そうですね。街へ戻ったら救援隊を呼びましょう。」
初心者ギルドの子の一人が駆け寄り、ういさんに両手で何かを差し出して来た。
「そうだ。うい先生、うい先生ならわかってくれると思って、お誘いしましたが、
良かったら・・・、これ、受け取って下さい。」
「なにを・・・?」
「初心者のペンダントと、私達初心者ギルドのエンブレムです。記念にどうぞ。」
「マイナスヒールを極めた うい先生なら、私達のよき保護者になってくれると思うのです。」
「あ、ありがとう。」
狂ってる気がする・・・。
「是非、また来てくださいね。お待ちしています。」
「うい先生、また来てねー。」「待ってるよー。」「あとで装備品売れたら、お金、渡しますねー。」
そうして、私は、初心者ギルドの子達と別れ、帰路についた、
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そんな話を、ういさんは、ギルドマスターに語った。
ギルドマスターも、うなずきながら聞いていた。
「あぁ、そんな感じだ、初心者ギルドの連中は。凶悪極まりない。
後日、救援隊を出したのは、私だ。」
「ギルドマスターが救助してくれてたのですか。」
「あぁ。まったく面倒だよ。」
7話へ続く。