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君臨少女   作者:
第一章 魔術学園都市ユミナ編
31/41

第三十話「想定外の死」

 秘密結社を結成してから一週間ほど経った。エッタは珍しく教室に顔を出し、私に真っ黒いカードを渡してきた。どうやら会員カードを彼女が作ったらしい。しかし、彼女が私に渡したカードの枚数は三枚ではなく、九枚だった。



「あの………これって他のメンバーに私が渡せってことですか?」



 私はその漆黒のカードをめくり目を凝らして見つめるが何も書かれていない。



「ああ!!新規メンバーの勧誘は私に任せろ!!!」



「それができるならユティやブレイクにも渡せますよね?」



 私はカードの表と裏を見ながら何か書いてないか確認する。しかし、やはり何も書かれていない。



「そ、それは………ちょっと」



 彼女はもじもじしながら私の持つカードを一枚抜いた。すると、そのカードに数字が浮かび上がった。


(あーなるほどね。魔力を流せば浮かび上がるってことか)



「わかりましたよ、到達不能統括者。他のメンバーには私が渡しておきます」



 彼女は顔をぱあっと輝かせると、『任せたぞ!!我が盟友!』と言って教室から飛び出して行ってしまった。


(いや、ここまで来て授業受けないのね)



「いーなー、なんかエッタとレイ、ニックネームで呼び合ってて。ボクもなんか欲しいなーそういうのー」


 私とエッタの会話を隣で聞いていたアルシャは足をばたつかせている。窓から差し込み光に照らされその金髪が輝いていた。



「それではスリーピンガールと呼びましょうか?」

「嫌だよ!っていうか何でそんな名前になちゃったわけ!」



 アルシャは顔をグッと寄せてくる。


(それは多分、あなたが会議中ずっと寝てたからね)



「では、そうですねー。アルちゃんってのはどうですか?何のひねりもないですが」



 その提案を聞いたアルシャは『なんか違うんだよねえ』と言いながら首を傾げる。



「リゼスはそういうのはないんですか?いいですよ、あだ名で呼んでも」



 先程からずっとリゼスは一冊の本を読んでいる。彼女はあの日、図書館に行ってから本を読むのにハマっている。あの日の帰りに、彼女に一冊の本を紹介したせいだろう。図書館の本を読むのにはお金が掛からず、かつ読み終わったら返却するので部屋が散らからないということもあり気に入っているようだ。


 そんな彼女は本のページをめくりながら私の質問に答える。



「『真の友情とは馴れ合いではなく、他と共有することのできない虚無感を得る行為である』ってこの本に書いてあった」



「何だか難しい本読んでますね。それってつまりどういうことなんですか?」



「私にもさっぱりわかんない」



 やはりリゼスはその本の内容を理解しているわけではないようだ。しかし、彼女は自分のほとんど隆起することない感情を何とかしようと読書をしているのかもしれない。私は彼女の不器用ながら努力するこういうところが好きだった。



「まあつまり、本当の友情には無駄な馴れ合いは必要がなくて、一緒にいるだけでいい、とその著者は言ってるのかも知れませんね」



「確かに、レイはずっと敬語だけど、距離を感じたことないね。ちょっと試しに僕にタメ語で話しかけてみてよ!」



「いいですよ」



 アルシャと向かい合わせになるようにして座ると、私はその瞳をじっと見つめる。



「………い、いいよ!」



 アルシャは緊張しているのか、少し頬を赤らめ、もじもじとし始めた。


「アルシャってさあ、マジ、可愛くね」

「ぷっ」



 私が机に右肘をつき低いトーンで彼女に向かってそう言うと、後ろからリゼスの噴き出す音が聞こえた。



「えへへ、これは違和感ありすぎだね。やっぱいつも通りがいいや!」


「そうですね。私もそうしたいです」



 そんな雑談を午前の授業が始まるまで私たちは交わし続けていた。



 ---



 月末、パーティー戦がやってきた。今月の対戦カードは『喰龍射』対『半竜』だった。まあこの人気度の低い両者の選出は、残り二ヶ月のパーティー戦は人気度が高いパーティーにするための穴埋めだ。


 勝者は『半竜』だった。学園はまったく盛り上がっていなかった。……というか阿鼻叫喚、悲鳴をあげる者さえいた。おそらく会員集めのために、エッタは派手に暴れようとしたのだろう。彼女が召喚した邪龍は、それは恐ろしい見た目をしており、その全長は巨大すぎて上半身しか召喚できていなかった。対戦場に写し出された魔法陣から顔を出したそのドラゴンは、相手パーティーだけでなく、学園ごと破壊しそうな勢いだった。鼓膜を劈く、悲鳴のような鳴き声が学園に響いていた。



 たまたまそこに居合わせたヘルミナがその一太刀で消却しなければどうなっていたことやら。あの時、秘密結社のリーダーということでエッタは完全に調子にのっていた。なんかよくわからない呪文をぶつぶつと唱えていたし。


 ちなみにエッタのパーティーメンバーの二人は珍しく探訪者協会希望らしく、だからパーティー戦の勝敗にはあまり興味がないそうだ。ちなみに、その二人も010、011として到達不能極点に参加している。



 その試合を見終わると、アルシャとリゼスに話しかけた。



「とうとう、私達の試合も来月に迫りました。そこで勝てなければ、終わりです。あと一ヶ月、やるべきことをやりましょう」


「うん」


「そうだね」



 二人は緊張しているのか口数が少ない。確かに、二月の試合以来、私達は今日まで一度も試合をしてこなかった。私達はただひたすらに特訓を続けていただけだ。その長期的努力の成果が来月、明らかになる。気を引き締めていこう。



 ---



 それからさらに約一週間後、私達はいつも通り夕方過ぎ、街が暗くなるまで特訓を行なっていた。その特訓が終わると、狭い裏路地を通り帰路に着く。



「次の試合では、瞬発的な攻撃力が鍵になってきますからね。リーンハルトの防御力がどこまで上昇しているかわからないので、より一層攻撃魔法を鍛えていきましょう」



 薄暗い路地を歩きながら左にいるアルシャの方を向く。彼女はかなり頑張って私が作った特訓メニューについてきた。そのおかげもあってか、かなり強くなっている。虚列等級も上がっているのではないだろうか。



「あと少しで結果が出る…………ボク、頑張る――」




 彼女がその笑顔を見せた一瞬だった。微かな光がその胸を貫いたかと思うと、彼女は地面にうつ伏せに倒れた。



 地面には彼女の体から赤黒い血が流れ出し、石畳の道の隙間に垂れ出している。彼女の左肩に浮いていた虚機友導は、力を失い、その血溜まりの上に転がった。彼女の血がその無機物にベチャリと付着する。



「………………え?」

「レイ!!逃げて!!!」



 右にいたリゼスに服を掴まれ、後ろまで飛ばされると私は尻もちをついた。そんな私の頭上を矢がかすめる。



「ちっ、リゼスを先にやるべきだったか…………」



 倒れた私の後ろから足音が急速に迫ってくる。その足音の主は、私を無視して、正面にいる敵を見つめるリゼスを背後から攻撃し、氷でその下半身を凍らせた。


(………………え?何が起こってるの?ア、アルシャは?)


 地面に倒れるアルシャはピクリとも動かない。その血だまりは少しずつその範囲を広げる。



「まあ、いい。これで終わりだ。黒義院冷」



 すると狭い裏路地の上から、炎で形作られた龍が迫ってきた。天から降りた龍は、正面にいる敵の頭上からこちらに迫ってくる。しかし、私の足は震えて動かない。動かないといけないことはわかっているのに。



「ふざけるなあああああ」



 激昂したリゼスが下半身の氷をその怪力だけで砕くと、虚機友導を槍へと変化させ、前方から迫り来る龍に向かって投擲した。彼女の右手から放たれた槍は、その龍を掻き消し、前方にいる人物の下腹部へと突き刺さった。一瞬の出来事だった。


 槍を失ったリゼスはそのまま正面へと駆け出していくが、頭上から魔法を放たれ、先程と同じように下半身を氷漬けにされた。


 今の彼女は虚機友導と離れ過ぎているため魔装を纏っていない。防御力はないに等しい。その後、身動きが取れなくなった彼女のその脳天を何かの魔法が一閃、貫いた。


 その直後、彼女の体から力が抜ける。グデっと力を失った彼女は下半身を氷で固められたまま、動かない。


(死んだの?……………………二人とも?)



「くそっ!」



 前方にいる敵に刺さったリゼスの麗光槍(ビライトライン)は虚機友導へとその姿を戻し、地面に転がった。


 敵は傷口を塞ぎながら、私に話しかけてくる。



「なあ、黒義院、これで終わりだ」



 その直後、頭上と後ろ、そして正面から迫り来る三匹の龍に私は飲み込まれた。










『アッ、ヤリスギタ』











「はっ、はあ、はあ、はあ」



 目を開けるとそこには見慣れた天井があった。私は汗だくになりながら目を覚ましたようだ。ベッドは私の汗でびしょびしょに濡れている。周りを見渡すと、やはり、いつもの景色がそこにあった。


(ここは………………自室?)


 そこはこの世界での自室だった。


(さっきのは夢?にしてはリアル過ぎる。でも…………私は生きてる)


 私は自分の体を触りその感触を確かめながら、先ほどの記憶を思い出した。アルシャが死んで、リゼスも死んだ。そして私は、迫り来る龍に飲み込まれて………


(あの技はファントン・ループ……でもなぜ?っていうかそもそもさっきのは夢?)


 廊下から足音が聞こえてくる。その足音がドアの前まで来ると、扉が開けられた。



「お姉ちゃんおっはよーってすごい汗だね?悪い夢でも見たの?」



 シヴィは心配そうにこちらを見つめている。



「ねえ、シヴィ。とても、リアルな夢を見たとして、それが現実か、それとも夢なのかって、どうやったら確かめられるかな?」



 私はベッドから上半身を起こし、おでこに手を当てる。熱はないようだ。



「うーん…………おとぎ話では確か…………そうだ!!日付を確認すればいいんだよ!」



「日付………ですか?」



「そうそう!だいたいそういう時は日付が目印になってて、主人公は今の日付から、その夢の出来事が未来なのか過去なのかを知るんだよ!…………で、過去だったらその出来事は主人公が忘れてるだけで、実際に経験したこと。未来の出来事だったら予知夢とか、かな?」



「なるほど…………ありがとうございます」


(確かあの日は10月が始まって一週間くらいだったはず………)



「おっけー。あ、今日の朝ごはんはパンとピッグロウのスープだって。お父さんがお土産に買ってきてくれたやつだよ」



 そう言い残して彼女はトコトコと階段を降りていった。


(日付か…………ん?今、ピッグロウのスープって言った?)


 私はその内容に引っ掛かりを覚えた。確かピッグロウのスープは9月の最終日、エッタの試合の日の朝食だった。確かに覚えてる。それで、朝食を食べている時にメルヴィさんが言うんだ。『あの人はお土産だけ残して、自分は残らない』って。


(いや、まさかね。だってそれじゃあ、私は過去に戻ってるってことになるじゃない………)


 私は真相を確かめるため、一階へと降りた。そして、あの日と同じように黙々と朝食を食べる。



「ママ、これすっごい美味しい」



「それはよかったわ。それにしても、いつもこうでやんなるわよね? あの人はお土産だけ残して、自分は残らない」


(………………言った。ってことはまさか)



「あの………メルヴィさん、今日って何月ですか?」


「え?今日は九月の最終日よ」


「そ、そうですか………………」


(……………?一体どうなっているの?どこからが夢で、どこからが現実かわからない……)




 私は朝食を食べ終わるとピッグロウのスープの残りを持って自室に戻り、頭の中を整理した。


 今私がいるのは九月の最終日だ。でも私の中には確かに、この日から襲撃の日までの記憶が残っている。ということは、私はさっきまで、今日から襲撃の日までの予知夢を見ていたということか?


 いや、それにしては長過ぎる。予知夢なんてせいぜい長くても一日分だろう。ということは、あの日から今日に戻ってきたと考える方がまだ納得がつく。でもそんなことあり得るのか?


 私は椅子に座りながら、一人で黙々と考え続けた。スープの食欲をそそるにおいが部屋に広がる。


(それにしても、なんか今日はボドがやけに静かね)


 いつもなら私が一人になると、ボドが一言、二言言ってくる。それに今日はボドが私を起こしていない。いつもはシヴィが部屋に来るころには制服に着替え終わっているほどの時間があるのに。



「ねえボド………私が何考えてるか気にならないの?いつもなら『ナニカンガエテマス?』とか言って聞いてくるじゃない」


『…………………ゴメンナサイ』


「は?なんであんたが謝るのよ」


『チョウセイ、シッパイシタ』


「調整? って何よ」


『レイサマヲ、ウマクフッカツ、サセラレナカッタ』



 こいつは一体何の話をしているのか?調整?復活?どういうことだ。根掘り葉掘り聞きたいところだが、ボドはそれほど上手く、というか詳細な話をすることができない。その知能指数にどれほどの限界があるのかはわからないが、難しい質問をすると『ウーン』と言って考え込んでしまう。


 そのため私は『はい』か『いいえ』で答えさせることにした。



「質問するから、はい、か、いいえ、で答えなさい。わかった?」


『ハイ』


「私がさっき見たのは夢」


『イイエ』


(………………は?じゃあ、アルシャやリゼスは死んだってこと?………っていうか私も死んだ?)


 その単調な機械音のような声に私は冷や汗をかかされる。今ほど、この無機物が不気味だと思ったことはない。そもそも、コイツは何なんだ?今までは何となくスルーしてたけど………改めて考えてみると、とてつもなく奇妙だ。


 私はゾッとした気持ちを抑え勇気を振り絞ると、口にスープを一口含み、質問を続ける。



「あなたは死んだ私を復活させることができる」



 これは先ほどの、私を上手く復活させられなかったという口ぶりから考えた質問だ。


『ハイ』


(はい!?…………え?じゃあ私は死んだら復活するってこと?何、それ…………こわ…)






 次の質問はなかなか浮かんでこなかった。頭の整理が追いつかない。アルシャやリゼスは死んで、私だけ復活した?しかも過去に?ってことは今はアルシャやリゼスは生きているわけで…………



「………あなたは二回以上、私を復活させたことがある」


『ハイ』



 またややこしくなってきた。二回以上復活させたことがあるということは、私はあの襲撃を受ける以前に一回以上死んでいるということだ。


 でも………どこで?いつ死んだ? いや、今はいつ死んだかは関係ない。問題は今回の復活と前回の復活が異なるということだ。


 前回の復活の時は恐らく成功したのだろう。だから私も死んだことにすら気がついていない。しかし、今回の復活はなぜか過去に飛ばされている。これが恐らく失敗のケースだ。

 両者の違いは何だ。

 結果を左右するものは何だ?






 次の質問を考えるのには更に時間を要した。いつもならとっくに家を出て、特訓場に向かっている時間だった。先ほどまで湯気を出していたスープはその熱を失ってしまっている。



「復活の成功要因は存在しない、完全ランダムである」


『……ウーン』


「はい、か、いいえで答えなさい」


『イイエ』



 どうやらこの質問には引っ掛かりがあるようだ。ということは復活の成功要因は確かに存在する。それは恐らくボドの力量といったところか、調整をミスしたというのもここで繋がる。……しかし、なぜ前回は成功して今回は失敗を?普通一回成功したものは二回目も成功するはずだが。



 ボドがしっかりと答えられるかはわからない、しかしこの問題は、YES NOクエスチョンで答えられる範囲を優に超えていた。



「もう普通に答えていいわよ。頑張って答えを絞り出しなさい。………復活の回数制限は何回?」


『カイスウジャナイデス』


「じゃあ何なのよ」


『ウーン、カイスウジャナクテ……キカン』


「期間?回復魔法みたいな感じ?死んでから何日以内とか?」


『ソレモアリマス。シンデスグジャナイトダメ』



 それもあるってことはおそらく、期間というのは死んだ時点から復活するポイントまでの幅ということだろうか。例えば明日死んだとしたら、今日復活することはできるけど、昨日には復活することができないとか。



「あーもうめんどくさい。じゃあ、あんたが知ってて私が知らないこと全部ここで、今、言いなさい」


『……………ハナシカケテ、ツウジタノハ、コノ、レイサマガ、ハジメテダッタ…………』



 そこからのボドの話は長かった。途中から紙に情報を図で書き出したりして何とか自分の頭で補完しつつ理解した。


 彼の話を私が補完して説明するとすれば、この話はパラレルワールドの話になってくる。幾つものルートに世界は分岐しているというアレだ。


 ボドはそんな並行世界に存在しているボド自身と直接繋がっているらしい。時間も空間も飛び越えているというわけだ。にわかに信じられないが、彼の拙い説明を補完するとこれ以外、私には説明ができない。


 そんな幾つもの分岐ルートがある中で、彼と会話できた初めての私が今の私だった。自分でも何を言っているのかわからなくなってきたが、この話を聞いていて、私は自分の魂と肉体を切り離して考えることにした。


 私のこの魂はボドと会話できる。意思疎通ができるということだ。そんな私は数ある平行世界でもこの私だけ。そこでボドはこの魂を優先して復活させることにしたそうだ。



 例えば、Aの世界線でボドと会話できる魂を持つ私が死亡する。するとボドは他の世界線からこの魂の器を取り出してくるのだ。一体どうやって取り出しているのかは分からない。もしかしたら損傷した部位だけを取り出しているのかもしれないし、丸ごと交換しているのかもしれない。他の世界線の私がどうなるかは………正直考えたくない。


 とにかく今ここにいる私の魂は特別なものであり、ボドはこの魂を優先して、他の世界線にいる私の体を利用して復活させるというわけだ。普通だったら、そのままその場で復活できる。しかし、今回は失敗した。では、失敗するとどうなるか。


 Aの世界線で死亡した私の魂は、ボドが取り出そうとした他のBの世界線の私の体の中に入り込んでしまうらしい。イメージとしては綱引きに負けたような感覚だろうか。

 今回であれば、襲撃されたA世界戦の私の体は死んだまま、逆に取ってこようとしたこのB世界線の私の体に、今の魂が入ってしまったということだ。


 では、この今の体に入っていた元の魂は一体どこへ行ったのか?それはボドもわからないらしい。死後の世界の話になってしまうわけだが、その私が気の毒でならない。無限に世界線が存在し、無限に私が存在するとしても、いきなり死ぬなんて、しかも何の前触れもなく……気の毒過ぎる。



「何となく理解できたわ。説明ありがとう」


『ハイ』


「それじゃあ、最後に質問だけど、あなたはどうして私を復活させるの?別に私が望んだわけじゃないわよね?」


『ソレハ!レイサマガ、サイキョウデ、エイユウ、ダカラ、デス!!』


「因果関係逆じゃない。それ………」



 時間も空間も飛び越えているのだ。因果関係が逆転しても不思議じゃない?いや、おかしいだろそれは。普通は死なないから最強なのであって、最強だから死なないとはならない。


 ありえないことが起こりすぎて私の感覚は完全に麻痺していた。


(あれ?でも…………ってことはつまり、過去の私ではなく、未来の私の中で復活していた可能性もあったってこと?)


 異なる世界線から体を持ってくると言っていたが、それが同一時刻のものだとは言ってなかった。だから、綱引きに負けた今回は過去に飛ばされてしまったわけで、未来に飛ばされる可能性もあるということだ。可能性としては過去に飛ばされるよりも小さいだろうが。

 

 そんなことを考えながら私は学園に向かうことにした。まだ、始業の時間ではない、それでもギリギリだ。



 違う世界線にやってきたということはタイムパラドクスは心配する必要がない。この世界線での未来は今の私が初めて作っていくのだ。この世界線の未来に影響を受ける私は存在しない。それでも、あまりルートからは外れない方がいいだろう。とりあえず覚えている限りは同じことをするつもりだ。


 そして、いくら復活できるといってもこの力に頼るべきじゃない。というよりも頼ってはいけない。なぜなら、他の世界線の私は死んでいるわけで、永続するのはこの魂ただ一つだけだからだ。いくら他の世界線の自分だからって蔑ろにすることはできない。自分は大事だ。


 それに過去や未来に飛ばされてしまう、しかも違う世界線に飛ばされてしまう危険性をはらんでいる以上、下手な真似はできない。



 しかし、目下一番重要な問題は………


(ファントン・ループね…………)


 襲撃までの期間は一週間もない。それを考えると、今すぐにでも彼らと接触する必要があるだろう。そう考えた私は足早に学園へと向かった。


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