第二十四話「現場監督」
野営していた場所から森の中へと入ると、土と木の根の間に鈍く光る石が見えた。
「こ、これです!これがマトライトです!」
マトライト鉱石を見つけたブレイクが、指をさして微笑みをこちらに向けてくる。
「じゃあ、いっちょやるかあ」
ユーリウスの虚機友導がハンマーへと姿を変えると、コツンという小さな爆発でその石を砕いた。意外と繊細なこともできるようだ。
「まあ、こんな感じであと五十個くらい集めて今日は終わりかな」
ジョルトが砕かれた石を拾い袋の中へと入れた。森の中はマトライト鉱石の鈍い緑色に照らされて、幻想的な風景で満たされていた。
その後も採取は続き無事に鉱石を集め終わると、その日はテントを張った場所に戻り野宿をした。
翌日、陽の光が森へと差し込み、十分に明るくなったことを確認すると、私たちは街へと帰った。
「そ、それでね。その時、ユーリウスが」
街に戻る頃にはすっかりブレイクと談笑できるほどの仲になっていた。
「それを言うなら、うちのリゼスなんて………」
見慣れた街道と白い家々、そして魔法学園が視界に入ると、私はふと思った。
(……ってあれ?今回私、何もしてなくない?森について行って、採取の手伝いしただけよね)
「それじゃあ、今日はここで解散ってことで。採取した物は後日、ユーリウスがまとめて持っていく感じで」
転拡者協会前まで戻ってくると、私たちはそこで解散することになった。ジョルトはよっこいしょと荷物を道に下ろしている。
「ちょ、ちょっと待ってください。私、何もしてないんですけど」
私の仕事は確かマネジメントだったはず。でも、今回私は彼らの素晴らしい連携プレイを見ただけだ。正直言うことはない。
「あ?俺たちの動き見て、なんか思ったこととかねえのかよ。アドバイスとかよお」
ユーリウスが荷物を背負いながら、理不尽なことを言ってきた。一、二回戦闘を見ただけじゃ流石の私でもアドバイスなんてできない。
「いや、そもそも対人と対モンスターじゃ全然動き変わってきますよね。対モンスターの動きを見て私に言えることは……」
つい口から不満の声が溢れてしまった。初めての野宿ということもあり疲れているのだろうか。
「じゃあ、今回の件は無しな!」
私の言葉にユーリウスは食い気味に答えた。
(あ、まずい。このままじゃ組織票の件が無かったことに)
私は必死になって何かいい策がないか考えた。要はパーティー戦で勝つことができればいいのだ。それなら『爆滅』と相性の良さそうな相手を見つけて対戦させることができればいいのでは?
私はすかさず軌道修正を行う。
「す、すいません。今のは無しで。とにかくパーティー戦で勝てればいいんですよね」
私が尋ねると三人は頷いた。
(これは少し時間掛かるけど、票のためだ。仕方ない)
「今月はあと何回ほど、あの森に行くんですか?」
とにかく彼らの情報がもっと必要だ。そのためには戦闘を近くでもっと観察する必要がある。
「ほぼ毎日かな」
「それなら、それに私も同行します。そこで、あなた達の動きを観察して、一番相性の良さそうなパーティーに特化した特訓をしましょう」
「そのパーティーと対戦する保証はあるのかよ?」
私の提案に対しユーリウスが当然の反応を見せる。確かにユーリウス達の組織票を使えばこちらが対戦候補に選ばれることは簡単だが、相手をピンポイントで対戦候補に浮上させるとなると厳しいのか?
デマルクスとの報告会では、例年の投票結果から人気度に対するある程度の浮上時期を予測することができることがわかった。その浮上時期に対し、私たち『君臨少女』を狙ったパーティー相手にねじ込むことはできるが、相手側の浮上時期を変えるとなると難しいのではないだろうか。この辺は彼に詳しく聞いてみないとわからないが、今はとにかくハッタリでも“できる“と言うしかない。
「それは……こちらでなんとか手配します」
「ユ、ユーリウス。信じてみようよ。れ、レイならなんとかしてくれそうな気がする」
「それに他に道は無いしね」
ブレイクとジョルトがフォローをしてくれた。
「ったく。わーたよ。じゃあ、明日の昼からな。学園終わったら東門前で待ってろ」
二人の顔を見て納得したのか、ユーリウスは折れてくれた。このチャンスを無駄にするわけにはいかない。
「わかりました。それでは、明日からよろしくお願いします」
その場で解散すると、私は走って家まで戻り、速攻シャワーを浴びて学園へと向かった。
「はあ、はあ、おはようございます」
いつもの教室に着くと息も絶え絶えに私はアルシャとリゼスに挨拶をした。
「お!レイおはようー!見て見て昨日の授業綺麗にノートにとったよ」
「レイなんか疲れてない?」
椅子に座っていたアルシャが笑顔いっぱいにノートを開いて見せてくるが、ここからではよく見えない。私の今の状態に気がついているのはリゼスだけだった。
「今すぐ、はあ、伝えなければいけないことが、はあ、あって、はあ」
彼女達の座る机の近くによろめきながら近づくと、私は膝に手をつきながら息を切らしていた。
「ちょちょ、一回落ち着こうよ、レイ。どしたの?」
アルシャはやっと私の苦しい状態に気がついたようだ。
「ちょっと待ってください」
私は膝に手をつきながら、人差し指でちょっと待ってのジェスチャーをする。深呼吸をして息を整えると、早速先程決まったことを話し始めた。
「えええええ!じゃあ今月はレイと特訓できないってこと?」
「マジか」
二人は当然驚きの表情を見せていた。パーティーメンバーとの特訓が一月できないなんて致命的ではある。でも、何かあった時のためにも組織票は使えるようになっておきたい。
「でも、安心してください。二人用の特訓メニューを今日中に考えて、明日お渡ししますので」
自分がいない分の埋め合わせは自分でしなければならない。かなりのハードワークだがやるしか無いだろう。あれ?なんだかクラクラしてきた。
「一回座りますね」
「えー、でもレイと特訓できないの寂しいなー」
私が通路側の席に座ると、隣にいるアルシャが机の上に伸びるようにして言った。
「違うよ、アルシャ。これはレイがいない間に先輩としての威厳を鍛えるチャンス。強くなって驚かせよう」
アルシャの向こう側で、リゼスが前を向きながらなんだかかっこいいことを言った。私はその発言に乗ることにした。
「そうですね。先輩としての威厳、私に見せてください。二人とも」
二人の方を向くとガッツポーズをしながら私は言った。ちなみにここで言う先輩というのは、この魔法学園の在籍日数上での先輩という意味だ。
「そうだね!たまにはボクたちもかっこいいところ見せなきゃだもんね!」
アルシャはやる気を出したのか、その瞳に情熱の炎を燃やしていた。
「あ、そうだノート、ノート!ほら、レイに言われた通り、見やすさよりもわかりやすさ重視でまとめてみたんだけど」
アルシャは机の上に置かれていたノートを開いて私の前にスライドさせた。
「ありがとうございます。拝見しますね。………え?」
そこには殴り書きのような字で授業がまとめられたノートがあった。
(確かに見やすさは削ぎ落とされてる。っていうかアルシャって字汚かったんだ)
アルシャの顔を見ると彼女はにっこりと誉めてほしそうにこちらを見つめている。
「いや、これは、その、なんていうか…………ありがとうございます」
その満面の笑みと汚いノートを交互に行き来した私の視点は行き場を無くし、口から溢れた言葉は感謝だった。
「えへへ。またノート取って欲しかったら言ってね?」
アルシャは照れた表情を見せる。これからはリゼスに取ってもらおうかと思い彼女の方を向くと、彼女は既に寝てしまっていた。
(だ、ダメだこりゃ)
その日は授業終わりに、特訓場で今の彼女達の戦闘力を一通り見せてもらい帰宅した。
自室の机で紙に今週の特訓メニューを書きながら、私は頭の中で今後の展開を整理した。
(とりあえず、明日は学園に行って練習メニューを二人に渡したら、『爆滅』と一緒にあの森に入って特訓に付き合う。ある程度特訓に付き合って、戦闘力を把握したら今度はデマルクスと連絡を取って、対戦相手について相談する。
そして、今月末は『爆滅』VS相性の良さそうな対戦相手で爆滅が勝利して、私は組織票を手に入れて一件落着ってところか)
その日は一晩中アルシャとリゼスの特訓メニューを考えながら、『爆滅』のことやその対戦相手について考えていた。
翌日、特訓メニューをアルシャとリゼスに渡した後、東門の前で『爆滅』と合流した。
今回も前回同様、遮断樹林で特訓を始めた。今回は採取依頼といってもモンスターの素材が必要なようだ。
そのモンスターの名前は、オッドポイズンスネーク。左右非対称の目の色が特徴で、その牙には猛毒が宿っている。もちろんファンタジー世界だ。その全長は三十メートルはあるのではないだろうか。その生物が今、目の前にいる。
「このモンスターは簡単に討伐できますか?」
私は目の前で舌をチョロチョロと出しながら獲物を狙う蛇から目を離さないようにしながら、三人に尋ねた。ちなみに討伐難易度という指標もこの世界には存在しており、前回討伐した赤怒避役が難易度Dで、こちらの蛇が難易度Cだ。しかし、この難易度は一般モンスターの枠組みの話であり、この世界には神駕威級モンスターなんてのもいるらしい。絶対遭遇したくない。
「二回ほど討伐した経験がある。レイは遠くから僕たちの動きを見ていてくれ」
虚機友導を略奪剣へと虚原素顕現させたジョルトがそう言った。
「わかりました」
私はゆっくりと目の前のモンスターから退き、三人の後ろへと回った。
「いくぞ!おまえらあ!」
「ああ」
「う、うん」
ユーリウスの合図で三人はモンスターへと向かっていった。
「シャアアアアア」
そんなモンスター討伐の日々が続いて早二週間。私は木の上で彼らに指示を出す現場監督みたいになっていた。
「あー今度は、もう少し火の虚原素多めでお願いします。ブレイクはその火を巻き上げるように、あ、そうそうそんな感じで、ジョルトは略奪剣でモンスターの魔装を剥がしていく感じで、あーいいですね。いい感じです」
爆滅メンバーの戦闘能力を全て把握することができた私は、モンスター相手に彼らで実験をしていた。いや、実験というのは言い方が悪い。人に使うべきではなかった。そう!これは、………シミュレーションだ!
もちろんしっかり安全マージンも設定してある。この森では奥に進むほど討伐難易度が高いモンスターが住み着いているため、越えてはいけないラインをしっかり設けた。
今は、モンスター相手に対『喰龍射』戦のイメージトレーニングをしていた。なぜなら爆滅の動きを見ていて、対戦相手に最適なのは『喰龍射』だと判断したからだ。
彼らは現在五番人気で、四番人気の『爆滅』よりも人気度は下がるが、かといって弱い相手になるというわけではない。喰龍射の戦闘スタイルである後衛2人、前衛1人という態勢に対し、爆滅は前衛2人後衛1人だ。短期決戦が得意な爆滅にとって、このスタイルを取る喰龍射は相性がいい。
だから、今こうして大樹に巻きつき木の後ろからその三つの首を活かした強烈な頭突き攻撃を繰り出すヤマツマオロチの子供と戦闘しているのだ。
「『喰龍射』攻略の鍵はスピードとリーダーファントン・ループの虚原素顕現にどう対処するかです!彼の前には厄介な足止め要因が一人いるので、それを対処することを忘れずに! そう!ブラック・パールセペルルが得意とするのは氷属性なのでユーリウスはガンガン火を撒き散らしてください!その火を次の攻撃に転じられるよう、ブレイクは風邪属性の魔法で操るれるように。あっ流石です!ジョルト!そうやって積極的にその剣で相手の壁を破壊することを忘れずにお願いします」
私は大樹の太い枝の上に刀を突き刺し、その上に座りながら、三人を見下ろし大きな声で命令を出していた。やっぱり私には戦闘よりも後衛指揮の方が向いているのではないだろうか。
「ッっしゃ!これでとどめだああ!」
ジョルトが剥き出しにさせたモンスターの弱点に向かって、ユーリウスが爆・滅却を振るいクリティカルダメージを生み出した。その衝撃でヤマツマオロチの子供は力なくグデっとその場に倒れた。
「みなさん、いい感じですね!このままの調子でイメージトレーニングを重ねていけばきっと今月の試合は勝てますよ」
木から降りると私は三人の方に向かって走った。
「こ、これもレイのおかげだよ。あ、ありがとう」
「ああ。レイのおかげで連携にさらに磨きがかかった気がするよ」
ブレイクとジョルトはいい笑顔で私のことを褒めてくれた。
「確かに、お前のおかげで、具体的な特訓ができるようになった。でもそっちは大丈夫なのかよ?対戦相手の手配の方はよお」
ユーリウスはハンマーを担ぎながら、心配をしているようだ。
「無論です」
勿論そちらも抜かり無い。デマルクスとの打ち合わせではなんとか『喰龍射』を対戦相手にねじ込むことが可能だということがわかった。あとはユーリウス達が組織票を利用すれば今月の対戦カードは確定だ。
全員今日の戦果に満足して、森を後にしようとしていたその時だった。私たちの周囲を不穏な空気が包み込んだ。
(………?強烈な視線を感じるような…)
と思ったその時だった。ユーリウスが一瞬後ろを振り向いたかと思うと大声で叫んだ。
「どけ!!」
ユーリウスの左を歩いていた私たち三人は、彼のハンマーによって木の根元まで飛ばされてしまった。
(………痛ったー。急に何?)
頭を抑えながら、隣に目を向けるとブレイクが口を開けながら驚愕していた、いや怯えていたという方が正しいか。
彼女の目線の方を向くと、そこには八本の頭を持つ巨大な蛇が薄暗い森の中から顔を覗かせており、その首の一つはユーリウスを咥えていた。咥えられたユーリウスの身体からは、ドス黒い血が流れ落ちている。
その光景に私はすぐに動き出すことができなかった。先に動き出したのはジョルトだった。ユーリウスを咥える首へと一直線に向かっていくと、木を駆け上りその首めがけて剣を振った。その攻撃を受けた蛇はユーリウスを口から解放する。
ユーリウスを見事に背中でキャッチしたジョルトは一目散に逃げようとするが、一番外側の蛇の首によって横に薙ぎ払われてしまった。ドスっという鈍い音が飛ばされ、ぶつかった木からグロテスクな音が聞こえた。それを見た私は逃げ道を確認する。
(私だって、ただ監督してたわけじゃない。とにかくここは一旦態勢を整えないと、重症でもユティならなんとか治せる)
とにかくこの場から逃げることが先決だと思った私は、自らの虚機友導であるボドを掴むとその大蛇に向かって勢いよく投げつけた。
「いっけーーーー!」
『ヒャアアアアアアアア』
これはユーリウスから火と風の混合魔法である爆破を教えてもらった時に考えついた技だ。ボドをあたかも人間爆弾のように相手に特攻させることで一時的に時間を稼ぐことができる。さらに!このボド爆弾は再利用可能だ。作戦を遂行したボドは私の元に戻ってくることができるのだ!
ドガンッと低い爆音と共に大蛇の呻き声が森の中に響くと、私は呆然と崩れ落ちているブレイクを引っ張るようにして逃げた。
「今のうちに逃げますよ!!」
ユーリウスとジョルトの動かない身体を意志の無い目で見つめるブレイクを引きずって、私はなんとか、大樹の木の根元にあった空洞に隠れることができた。
「どうしますか?今から助けに行けば、ユーリウスとジョルトはまだ助けられます」
私は空洞から顔を覗かせながら、大蛇の出す木や地面を擦る音を聞いていた。どうやら、私たちのことを探しているようだ。
「ブレイク?」
「むむむ、無理です。あんなバケモノに勝てるはずがない。ゆ、ユーリウスも、も、ジョルトも二人ともや、やられたんですよ。私たちも、き、きっとこのまま殺されるに決まってる、る」
彼女は空洞の隅で体育座りになりながら、帽子を深く被って震えていた。
(………………もう、彼女はダメね)
この絶望状態に陥った人間を励ます時間はもう残されていない。街まで運ぶ時間を考えても今すぐに二人を助け出さないといけない。いくらユティでも死んでしまった人間は生き返らせられない。息があるうちに助けないと。
「一つだけ言っておきます。あなたと彼らの信頼関係はその程度だったんですね。これでは、いくら特訓したところで他のパーティーに勝てるはずありませんよ。時間の無駄でした」
私はきつい一言?いや、緊迫状態で溜まったストレスのせいか、結構言ってしまったが。その言葉を残すと空洞から外に出て、大蛇のもとへと向かった。
「おい!こっちよ!」
『レイサマ!ビックリシタ!』
大蛇の方向からフラフラと飛んできたボドを手元まで戻すと、私はその姿を黒臨緋へと虚原素顕現させた。私を見つけた大蛇はその八つの顔につく十六の瞳で私を見つめている。
(この一ヶ月間の努力を、無駄にするわけにはいかない!)
魔力を身体全体へ流し、身体強化を施した私は木の幹を螺旋状に駆け上るようにして大蛇へと近づいた。
(まずは一本)
目に魔力を流し大蛇の動きを細部まで探ると、その一撃を華麗に空中で避ける。その攻撃を繰り出してきた首へと乗ると左に見える首へと照準を合わせ、風属性を纏わせた斬撃を飛ばし、その首を切り取った。
その切り落とした首を土台に勢いよく跳ね上がると、その勢いを活かし直線上に並んでいた首をもう四本切り落とした。
しかし、流石に八本首は多かった。一番左に残った首に勢いを止められると、先ほど突き攻撃をしてきた首がしなるようにして私を木へと弾き飛ばした。
「カハッ」
その威力は凄まじく、咄嗟に魔装を背面に集中させたが、どうやら完全に防ぐことはできなかったらしい。当たりどころが悪いのか、呼吸することができない。
「あっ、あっ」
勢いをつけて息を吐き出そうとするが、口から出てくるのはドス黒い血の塊だけだった。だんだんと意識が遠くなっていく。右手に力が入らなくなり、黒臨緋はボドへとその姿を戻していくのがぼんやりと見えた。
私は鼻にぽつりと落ちた水滴で目を覚ました。雨が降っているようだ。
………意識を失ってからどれくらいの時間が経ったのか。先程隠れていた空洞の方角から、ドスッ、ドスッという。音が聞こえてくる。
(……………助けないと…)
右手にいつのまにか握っていた黒臨緋を強く握りしめると、音が鳴る方へと急ぐ。不思議と体が軽い。それになんだか調子もいい。気を失う前よりも元気なくらいだ。
音が鳴る方へとたどり着くと、先程隠れていた空洞に向かって、大蛇が残った三本首で頭突きを食らわせていた。どうやら中にいるブレイクを狙っているようだ。
「【夜凪】」
刀に風属性のブレードを付与すると、完全に私を殺したと思っている大蛇の背中を駆け上った。
(あれ?なんかさっきよりも…………)
その青白いのブレードは明らかに、先ほどよりも威力を増していた。そのブレードで一番左に残った首を切り落とした。
(あと、二つ)
痛みに身体をくねらせる大蛇から木の幹へ飛び、避難する。幹に足が着くと、屈伸するようにして力を溜め、大蛇に向かって飛んだ。一撃目は風属性の斬撃を飛ばし、最後の一本は直接切り落とした。
バシャリという音と共に大蛇の首が二本同時に地面に落ちた。
「………ブレイク。早く二人を助けに行きましょう」
空洞の中を覗くと、先ほどと全く同じ状態でブレイクがうずくまっていた。
「も、もう。だ、大丈夫、なんですか?」
「………はい」
そう言った私は、彼女に手を差し出して、その身体を空洞から引っ張り出した。




