第十二話「情報開示」
正午を過ぎて自由行動となった私たちは、学園を出ていつもの特訓場に向かうことにした。だがその前に、お腹を何かで満たす必要がある。そのことについて三人で話し合っていると、リゼスが珍しく意見を出してくれた。
「私の家で、何か食べる?」
リゼスの家は料理屋さんだと言っていたことを思い出した私は、彼女の意見に賛成し、さっそく彼女のこの世界での家へと向かった。
彼女の家は、私の家と同じパーム地区に位置している。家の外見は、一階が飲食をするスペースとなっているのが、ガラス張りの壁から透けて見え、二階の部分はほかの家と同じ作りになっていた。
「ただいま」
リゼスがそう言って店のドアノブに手をかけると、カランという音がして扉が開いた。人はいない。どうやら、今はオープンしていないようだ。
「おう、おかえり」
店の厨房と思われるスペースから出てきたのは、ロングの銀髪にスラっとした背の高いスタイルをした女性だった。その女性を見ると、私は素早く挨拶をした。
「お邪魔します。私はリゼスのパーティーメンバーのレイです」
「おー、君が噂のレイちゃんか………」
私があいさつを終えると、彼女は私の体を上から下までじっと品定めするかのように見つめている。
(ひっ、何この人、すごい見つめてくるんですけど………リゼスの友達が悪い子じゃないか心配なのかしら)
そう思った私は、黒義院としての風格を漂わせるようにして背筋をピンと伸ばした。
「なるほどねえ」
彼女は顎に手を当てて私の方を見つめている。
「オルサさんこんにちは!ボクたち今日はここで、お昼食べたいと思ってるんですけど」
私がオルサと呼ばれる人物にアピールを続けていると、アルシャが彼女に向かってお願いした。
「ああ、問題ないよ。かき入れ時は過ぎたからね。今は休みで、こっちも暇してたんだ」
そう言うと彼女は厨房へと戻っていき、調理を始めた。
私たちは適当な席に着くと、料理を待つ。
「あの人の名前はオルサでいいですか?」
失礼のないように、私は二人に確認を取る。
「うん。彼女は【オルサ・トーナ】この店の店長で、私とここで二人で暮らしてる」
リゼスが厨房から水をコップに入れて持ってきてくれると、彼女について説明してくれた。
あんなに若いのにも関わらず、自分の店を持っている彼女に感心しながら、料理を待っていると、思ったよりも早く、彼女が三人分の料理を持ってきてくれた。
「はいよ。この店の人気メニュー『ピッグロウの肉野菜炒め』だ!」
彼女はそう言うと、カラフルな野菜とピッグロウと呼ばれる生き物の肉が乗った皿を出してくれた。
(ピッグロウっていったい何かしら………まあでも見た目はおいしそうだし、とりあえずいただいてみますか)
「いただきます」
そういうと私はフォークを使って野菜と肉をバランスよく差すと、それを口の中へと運んだ。
(あっつ、でも、これは………)
口に入れた瞬間に広がるほのかな酸味と、それと調和するようにして野菜から甘い汁がこぼれだす。噛めば噛むほどその酸味と甘みが口の中いっぱいに広がっていき、私は思わずこの料理に感動を覚えた。
(メルヴィさんの料理にはなつかしさのような優しい味を感じるけど、この料理はまさに大衆向け。美味しさだけを追求した料理………)
「とってもおいひいれす」
行儀が悪いとはわかっていながらも、口を手で押さえ、感想をこぼす。
「そりゃあ、よかった。だてにこの町で500年営業してないからね」
「ご、500年ですか!」
その驚愕の老舗具合に私は驚いて、口から食べ物がこぼれそうになってしまった。
「まあ、それでもうちは、まだ新しい方だけどね。もっと昔からやってるところもあるよ」
私たちが料理を食べている間、彼女は足を組んで座りながら、私たちのことをずっと眺めていた。
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料理をぺろっと完食してしまった私たちは、彼女にお礼を言って店を後にすると、秘密の特訓場に着いた。
「では早速、デマルクスからの情報を見ていきたいと思います」
そう言うと私は、虚機友導の手前に紙を広げた。すると、先ほど会議長室でテオフィロスの虚機友導が行っていたように、紙に文字が彫られるようにして写し出された。ちなみにこの世界の紙は、原材料が異なるせいか、元の世界の紙よりも分厚くて丈夫だ。
ようやく虚機友導が紙への光の放射を終えると、私たち三人は一斉にその紙を覗き込んだ。
その紙に書いてあった内容は以下の通りだ。
一番人気パーティー 【正統なる冠掠】
【ヘルミナ・ヘル・アミナ】
虚遷士 虚列等級第ニ位
虚原素顕現 聖剣【白滅流】
得意な虚原素属性 聖
絶対的火力で一掃する。聖剣の火力は言うまでもなく、それを巧みに操ることができる魔力操作のセンスも持ち合わせている。
【アスミル・アル・アミナ】
虚創士 虚列等級第ニ位
虚原素顕現【聖域展開】
得意な虚原素属性 聖
ヘルミナ様の弟君であり、魔力発現率を大幅に上昇させる支援魔法を使用する。
【ジーナ・ユー】
情報なし
パーティー評価:ヘルミナ様とアスミル様の連携によりほとんどの試合が一瞬で片が付くため、ジーナ・ユーの情報はなし。
二番人気パーティー 【絶壁】
【リーンハルト・アーレンツ】
虚創士 虚列等級第三位
虚原素顕現【絶風防壁】
得意な虚原素属性 風
得意な属性を生かして作り出す風の壁は、どこにでも瞬時に展開することができ、利便性が高い。また、作りだされる壁の魔力密度は高く、並みの攻撃では破ることができない。
【ジーナイン・ジーゲル】
虚創士 虚列等級第四位
虚原素顕現【急速吸収】
得意な虚原素属性 風
味方の魔力吸収速度を上げる魔法を使用する。リーンハルトとは、同属性の魔法のため相性がいい。
【メリスタ・テナント】
虚創士 虚列等級第四位
虚原素顕現【猛迫火球】
得意な虚原素属性 火
リーンハルトの展開する壁の後ろから、追尾型の火球を放つ。
パーティー評価:全体的にバランスが良いパーティー。リーンハルトの壁は、彼に支援魔法を送ることで常時展開が可能。さらに、彼の壁の後ろから距離を取りつつ火球を放つメリスタが厄介。
三番人気パーティー 【声なき星明り】
【ユティ・コフィン】
虚創士 虚列等級第三位
虚原素顕現 【超気廻天】
得意な虚原素属性 聖
彼女の使う回復魔法の回復量は凄まじく、さらに一度味方に掛けてしまえば、その後も継続的に回復させることが可能。
【ジクフリーダ・リンネ】
虚遷士 虚列等級第四位
虚原素顕現【雷麟】
得意な虚原素属性 雷
雷属性を付与した剣を使用した接近戦が得意。ユティの回復魔法のおかげで、自らにもダメージが及ぶほどの広範囲な攻撃をすることができる。
【ノエラ・ボーン】
虚創士 虚列等級第四位
虚原素顕現【岩石射出】
得意な虚原素属性 土
基本魔法である【岩石砲】の威力、速度、攻撃範囲を強化した魔法を使用する。
パーティー評価:ユティ・コフィンの超回復魔法が厄介。しかし、彼女を素早く処理することができれば勝機はある。
四番人気パーティー 【爆滅】
【ユーリウス・サックスブルー】
虚遷士 虚列等級第四位
虚原素顕現【爆・滅却】
得意な虚原素属性 火
火と風を混合させて生み出す爆発をハンマーから繰り出してくる。威力、範囲ともに申し分ない。
【ジョルト・タコ】
虚遷士 虚列等級第四位
虚原素顕現【略奪剣】
得意な虚原素属性 邪
ユーリウスの攻撃のサポートがメイン。この剣に触れたものは、魔力を吸われ身体強化がしづらくなる。
【ブレイク・ミルド】
虚創士 虚列等級第四位
虚原素顕現 【暴風波】
得意な虚原素属性 風
ユーリウスの攻撃によって生み出される爆発を、風魔法によって広げることで範囲攻撃に転換することができる。
パーティー評価:超攻撃特化型パーティー。持久戦には弱い印象を覚える。
五番人気パーティー 【喰龍射】
【ファントン・ループ】
虚遷士 虚列等級第三位
虚原素顕現【龍落曲射】
得意な虚原素属性 雷
雷属性を付与した曲射が強力。ウルシュが瞬時に作り出す壁の後ろから放つため、攻撃を当てることが難しい。
【ブラックパール・セペルル】
虚遷士 虚列等級第四位
虚原素顕現 【氷結氷柱】
得意な虚原素属性 氷
氷属性を付与した剣で攻撃してくる。足元を凍らせることも可能。
【ウルシュ・ツカーダ】
虚創士 虚列等級第四位
虚原素顕現【瞬刻隆起】
得意な虚原素属性 土
ファントンのサポートがメイン。リーンハルトほどの魔力密度を持つ壁を作り出すことはできないが、壁の展開速度はリーンハルトにも劣らない。
パーティー評価:ファントンとウルシュは常にセットで動くため、先にブラックパールを攻めることをお勧めする。
六番人気パーティー 【半竜】
【エッタ・リオース】
虚創士 虚列等級第二位
虚原素顕現【邪龍召喚】
得意な虚原素属性 邪
召喚魔法を使用できるのは、学園でも彼女だけ。しかし、召喚魔法を発動するためには時間がかかるため戦闘時のコストパフォーマンスが悪い。
【レティシア・ピナトル】
虚遷士 虚列等級第四位
虚原素顕現【敏速細剣】
得意な虚原素属性 風
エッタが召喚魔法を発動するまでの時間稼ぎが主な役割。風魔法を応用した高速移動が特徴で、素早く移動する彼女に攻撃を与えることは難しい。
【ウドルフ・カイル】
虚創士? 使用魔法の詳細は不明
おそらく霧を生み出す魔法を使用しているようだが、詳細は不明。
パーティー評価:対戦回数が少ないため情報不足だが、おそらくお前たちが対戦することはない。
七番人気パーティ 【 パーティー名なし 】
【リゼス・デラクルス】
虚遷士 虚列等級第三位
虚原素顕現 【麗光槍】
得意な虚原素属性 無
【アルシャ・グレンケア】
虚創士 虚列等級第四位
虚原素顕現 【水波放出】
得意な虚原素属性 水
デマルクスからの情報には、ご丁寧にパーティー評価まで載っていた。しかし、この情報には私にとって見覚えのない単語が多すぎる。眉間に皺を寄せながら、アルシャのほうを向くと彼女が『ああ、はいはい』という顔をして説明してくれた。
まず、名前の隣にある【虚遷士】と【虚創士】についてだ。
前者は、虚機友導を変質化させて武器として使用する者のことを指す。彼らは虚機友導に触れた状態で戦うため、身体強化も虚創士に比べ容易にすることができる。
後者は、虚機友導を変質化させて武器にすることなく、そのままの状態で魔法を生み出す者のことを指す。体に虚機友導が触れていない状態の方が、世界からの虚元素吸収、そして魔力への変換を容易に行うことができるらしい。しかし、デメリットとして身体強化に魔力を充てるのが難しくなるそうだ。
簡単に説明するならば、【虚遷士】が剣士で、【虚創士】が一般的な魔法使いといった感じだろう。前者の方が身体強化をしてアグレッシブに戦うことができるが、その代わり魔法を使いづらくなる。後者は、身体強化がしづらくなる代わりに、魔法を使用する事に特化できるといった感じだ。
次は、【虚原素顕現】についてだ。これは、虚遷士だったら自分が使用するオリジナル武器の名前、虚創士ならば自分で生み出したオリジナル魔法のことを指しているようだ。例えば、うちのチームならば、リゼスの使用する槍の名前は【麗光槍】、アルシャが使用するオリジナル魔法は【水波放出】ということになる。
得意な虚原素属性というのは、そのままの意味で得意な魔法の属性のことを指している。では、虚原素とはいったい何なのか。これは、転拡者が虚機友導を通して使用する前の段階で、この世界に満ちている魔力の元となるもののことで、その属性は全部で九つ存在しており、火、水、風、土、氷、雷、聖、邪、無、となっている。この九つの虚原素でこの世界は満たされており、転拡者によって世界から吸収できる属性に得意不得意があるということだ。つまり、虚原素は虚機友導を通過することで、魔力へと変換されているらしい。
私自身、理解するのにはしばらく時間が掛かった。こんなことなら、元の世界で、妹が好きそうな俗物的創作物にもっと触れておくべきだった。
「あの、最後にこの虚列等級っていうのは何なんでしょうか?」
一通り説明を終えて一息ついているアルシャに、私は質問した。
「えっと、これは確か………………」
アルシャは顎に手を当てて、何やら思い出そうとしているが、彼女も知らないことなのだろうか。
と思っていたら、リゼスが答えてくれた。
「あ、私、思い出した。これ、最終試験の時にその人の得意な魔法を評価してくれる人が来て………………」
「あーボクも思い出した。その人の使用する虚原素顕現の希少性とか威力とかその他諸々で評価されるんだっけ。すっかり忘れてたよ」
どうやら、この虚列等級というのは転拡者のランクのようなものらしい。下から七位、六位、五位と上がっていき、一番上は一位になっているようだ。なんでも、三位と二位の間にはかなりの差があるらしい。現段階で虚列等級が付いているということは、デマルクルスは学園に評価する人間を忍び込ませて、評価でもさせたのだろうか。
「この情報を見ると、リゼスは三位で、アルシャは四位じゃないですか。すごいですね」
「いやあ、それほどでもー。二人だけでやってきたから、いつの間にか強くなってたのかなあ。エヘヘー」
アルシャは私に褒められるのが嬉しかったのか、体をクネクネさせている。
「今の段階で虚列等級を知ることができたのは大きい」
リゼスは、紙を見ながらひとりで何かを考えているようだ。
「ちなみに、私の虚列等級ってどのくらいなんでしょうか?」
私は、恐る恐る二人に質問をした。
(さすがに一か月前にこの世界に来たばかりだからね………低くてもしょうがないかな)
と一応予防線を引いておくが、もしかしたらとてつもなく強い力を私は持っていて、みんなからあいつは凄いと一目置かれる展開があるのではないかという淡い期待があった。
「試してみる?」
そう思っていると、リゼスが立ち上がってローブを脱ぎ捨てた。
「そうだね、ボクたち自身、自分の虚列等級を知ったのはこれが初めてだから、正確じゃないけど、今から測ってみようか!特訓した感じ、レイは虚遷士としての素質のほうが高そうだし、リゼスと一回手合わせしてみなよ」
「わかりました」
(私は虚遷士としての適性のほうが高いのか………まあでも、確かに昔から体を動かすのは得意だったしね)
そう思いながら、私も立ち上がりローブを脱ぐ。
「成れ、麗光槍。………レイ、本気で行くよ」
リゼスはその感触を確かめるように、彼女の槍をクルクルと回転させながら言った。
(本気のリゼスか。彼女とは何回も手合わせしてきたし、私ならきっといいところまでいけるはず)
パンっと自分の頬を叩いて気合を入れると、私も自分の虚原素顕現である刀を呼び出した。
「来なさい、黒臨緋」
最近では、虚機友導の変質速度もリゼスと変わらなくなってきた。刀の柄を握りながら、今日の刀の調子を確かめると、私はリゼスからの距離二十メートルほどの正面に立った。
「いけます」
「私も」
二人でアルシャに向かって合図を送ると、静寂がこの場を包み込む。
「それでは………………初め!」
アルシャからの号令を合図に手合わせが始まった。
ここまでの特訓で、リゼスの戦法は大体把握することができた。彼女は身体強化を行うための魔力操作が抜群にうまい。
(初手は、槍のリーチギリギリまで高速で距離を詰めてくるはず………………)
私の予想通り、彼女は一気に距離を詰めてくる。初めの頃の私であれば、ここで億劫になってしまい後ろに下がっていただろう。だが、槍のリーチを生かした攻撃をしてくる彼女に対して、後ろに引くことは悪手だ。
(ここはビビらずに、一気に詰めるッ)
魔力を足へと集中させて、右足で思い切り踏み込むと、私はリゼスに向かって一直線に突っ込んでいった。
おそらく、この動きは彼女も予想しているだろう。問題は、この後の動きだ。
目へと魔力を集中させ、彼女の一挙手一投足に集中力を充てる。
私は天才じゃない。元の世界でも最初から何でもできたわけじゃなかった。どの分野でも、必ず私よりも一歩先を行く人間がいて、私はその人物を観察することで、いつだって勝利を勝ち取ってきた。私に才能があるとすれば、それはこの観察眼だろう。自分よりも秀でている者をひたすら観察し、そして模倣、自分なりの修正を加えることでさらに上の段階へと進むことができる。そして、この世界では魔力を使用することで、私の観察眼にもさらに磨きをかけることができるのだ。
リゼスが次にとった行動は、槍の持つ部分を先端の方にスライドさせ、そのリーチを私との距離に合わせて短くすることだった。そのスライドの一瞬の隙に、私は刀を左中段から彼女の右腹に向けて横薙ぎに振った。
しかし、その一瞬をついた攻撃は彼女の強固な魔装によって、キンッとはじかれてしまう。
ちなみに、魔装とは魔力を体の表面に纏わせるようにすることで、防御力を上げた状態のことを指す。厚く纏わせればいいというわけでもなく、厚すぎると手足の関節が動かしづらくなってしまう。魔装に関しては、量よりも質といった感じだろう。その質の部分に関してはまだまだわからないことだらけだが……
(固い!さすがに本気のリゼスに、そう簡単に傷をつけることはできないわね)
次はリゼスからの強力な突きが来る。刀が弾かれることをあらかじめ予想していた私は、彼女に弾かれた衝撃を利用して一気に彼女から距離を取った。
突き攻撃を外した彼女にまた隙ができる。そこで私は、彼女には秘密裏に考案していた風属性を付与した斬撃を彼女の足元に向かって放った。
「………………ッ!?」
その斬撃を彼女は高くジャンプすることで華麗によけた。しかし………
(バカね、リゼス。その行動は予想通りよ。初めて見る私の斬撃に、さすがのあなたでも魔力量の調整をミスしたわね)
想定通り、私の斬撃を避けるにはあまりに高くジャンプしすぎたリゼスは、空中で無防備な状態になる。
(空中なら、身動きをとることはできないはず………)
そう思った私は空中で身動きの取れないリゼスに向かって、体に流していた魔力のすべてを刀へと移し、先ほどの斬撃よりもさらに強力な斬撃を彼女に向かって放った。
(勝った………………)
と思った瞬間、彼女は空中にいる状態から私にめがけて、槍を一直線に投げてきた。
(まずいっ、今は体の魔力をすべて斬撃に回してしまっているせいで、防御ができない……………!?)
私が放った斬撃を掻き消して、リゼスの槍は私に向かって一直線に飛んでくる。しかし、斬撃のおかげで軌道をずらすことができたのか、槍は私の胸の左ギリギリを通過して、制服を破り地面へと突き刺さった。
槍に気を取られていると、既に地面へと着地していたリゼスが、拳を構えて急速に迫ってくる。
(ああ、拳でよかった……)
彼女の拳が視界一杯になったと同時に、私の意識はブラックアウトした。




