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君臨少女   作者:
第一章 魔術学園都市ユミナ編
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第十一話「校長の話は長い」

 朝目が覚めると、小さなベッドの両脇にはアルシャとリゼスが私を包むようにして眠っていた。


(あの後確か、シヴィを彼女の部屋のベッドまで運んで……あれ?そのあとの記憶がない。………まあ、多分疲れて寝落ちしてしまったのね)



 二人に包まれて動くことのできない私は、二人を起こすべきかどうかを考えていた。すると、廊下の方から聞き覚えのある軽い足音がトタトタと響いてくる。


(来たわね………)



「おねえちゃんたち、おっはよー!」



 ノックもなしにシヴィが部屋に入ってくると、私を囲んでいた二人は目を覚ました。



「おはようシヴィ」



 最初に起き上ったのはリゼスだった。どうやら、シヴィとはこの短時間で仲良くなったようだ。軽く背伸びをした彼女は眠そうな素振りを一切見せずに、シヴィを抱き上げていた。



「うーーん、おはようみんな」



 次に起き上ったのはアルシャだ。彼女の顔は『まだまだ眠り足りない』という表情をしており、ぼさぼさになった金髪が日の光を優しくキラキラと反射していた。


 全員がベッドの上から起き上ったことを確認すると、ようやく私も起き上がる。アルシャとリゼスは、シヴィに連れられ先に一階へと降りて行った。一人になった部屋でストレッチを済ませると、私も三人の後を追うようにして一階へと降りる。階段を下りていると、下から何やら騒がしい音が聞こえてきた。



「まあ、シヴィ―ったらすっごい似合ってるわよ」



「この角度か!いや、この角度からがいいか!」



 どうやら、シヴィの制服姿にメルヴィさんとシストルさんが興奮しているようだった。


(っていうか、ついさっきまで寝間着だったよね、着替えるのはやっ………)



「ねえ、見てレイ。シヴィちゃんとってもかわいいよ!」



「家に持ち帰りたい」



 アルシャとリゼスも興奮してるようだ。

 昨日で精樹祭が終わり、今日から魔法学園が始まる。つまり、今年で七歳になるシヴィも私たちと同じ魔法学園に通うことになるのだ。彼女が今着ている制服は、一般生徒の制服で、私たちの制服とは異なり、軽さ重視のシンプルなデザインになっている。



「おねえちゃん!シヴィかわいい?」



 首を傾けて、スカートの先を両手でつまみ上げながら、シヴィは聞いてくる。


(そんなの聞くまでもないわよ………)



「世界で一番かわいいです!」



 なんとも賑やかで、すがすがしい一日の始まりだった。



---



 朝食を食べ終わると、メルヴィさんが洗っておいてくれた制服を、魔法を使ってアルシャと一緒に裏庭で乾かしていた。二人の虚機友導はくるくると回りながら熱風を出している。



「私たちも始業式みたいなのを今日やるんですか?」



 シヴィはこの後、魔法学園で入学式があるようだが、私たちも式に参加できるのだろうか?



「ボクたちにはそういうのはないねー。普通に午前中は座学の授業をやって、午後からは基本自由だよ」



「座学の授業は何を学ぶんですか?」



「んー、基本はこの世界の地理とか生態とか歴史とかだね」



「魔法は教えてもらえないんですか?」



 もちろん魔法学園なんだから、魔法を教えてもらえるだろうと思い、期待を込めた目で私はアルシャのほうを見る。



「基本魔法の習得は二年生で、終わっちゃったんだよねー。後の適当な魔法は、基本自分たちで本を読んだりして習得していく感じかな。先生によっても得意不得意が激しいし。発動させるための詠唱とかも特にないし………感覚的な部分が多いからね。あ、でも確か理論的なことが学びたければ大学で学べるって言ってたような………」



 魔法学園なのに魔法を教えてもらえないという驚愕の事実に少し肩を落としながらも、私は気持ちを切り替える。


(まあ、独学のほうが私にはあってるだろうし、いきなり三年生の内容から始められても困るしね)



「そういえば、その魔法学園の先生って強いんですか?」



 魔法学校の先生といえば、なんだかこの世界でも指折りの魔法使いが教えていそうなイメージが私の中にはあった。

 ○リー○ッターの影響だろうか。



「いや。たいして強くないんじゃないかな。ボクたち転拡者を教えてる先生は三人しかいないし。三人はそれぞれ、転拡者協会、探訪者協会、アミナ帝庇団の出身なんだけど、三人とも攻撃魔法よりも結界魔法が得意って感じかなー」



 アルシャは、乾いた制服を手で伸ばしては、叩き、伸ばしては、叩きを繰り返している。



「結界魔法っていうのはなんですか?」



 結界というくらいだ、学園を魔獣やモンスターから守っているのだろうか。

 マ○ゴナ○ル先生みたいに。



「彼らが得意としているのは、パーティー戦の時に使用される結界だね。パーティー戦は学園の真ん中にある対戦場で行われるんだけど、彼らが結界を張ってくれれば、致命傷を負っても死ぬことなく、気絶するだけで済むんだよ」



 学園の先生はパーティー戦のために集められた転拡者のようだ。そして、パーティー戦の勝敗はどちらのパーティーが先に全員気絶するかで決まる………。



「よし、完全に乾いたね。リゼスっ」



 そういうとアルシャは、先ほどから薄着で槍を振るっていたリゼスに向けて制服を投げた。



「ありがと」



 リゼスは槍をくるっと一回転させてから手放し、制服を受け取った。それと同時に空中で回る槍が虚機友導へと戻る。



「それじゃあ、ボクたちも向かいますか」



「はい。行きましょう」



「うん」



 三人で一斉に制服へと着替えると、一足先に出かけたアルシャとシストルさんを追いかけるようにして、扉のドアを開ける。



「三人ともいってらっしゃい」



 私たちの背中を押すように、優しい声でメルヴィさんが見送ってくれた。



「「「いってきます!」」」



---



 パーム地区からイシリグッド地区に向かう途中にその道はあった。ガブリエーレと一緒に入った学園都市の門から魔法学園まで続く、長く太い街道、その合流地点へと私たちは向かっていた。


 今日学園でやるべきことは、主に三つある。


 まず一つ目は、パーティー名の申請をすること。これは、学園で最も偉く、さらにこの魔術学園都市の意思決定機関のトップでもある議会長に直接申請しなければいけないらしい。なお一度申請したパーティー名の変更は、パーティーメンバーが一人欠けて、新たなパーティーメンバを加えるときにしかできないらしい。つまり、『このパーティー名なんかダサいから変更しよう』と思っても、メンバーを脱退させるか殺すかしないと変更できないということだ。


(昨日その場のノリでパーティー名考えちゃったけど、まあ大丈夫よね。センスは悪く………はないはず。こういうのは、多少青臭いほうがいいのよ………たぶん)


 二つ目は、ほかのパーティーとの顔合わせだ。彼らとはいつか戦わなければならないときが来るかもしれないが、できるならば良好な関係を築いておきたい。元の世界では黒義院という名前欲しさに仲良くしてくる子ばかりで、友達(仮)作りに苦労したことはなかったが、この世界ではうまくできるだろうか。いや、きっとうまくできるだろう。なんたって今両隣にこの世界で仲良くなった友人がいるのだから。


 そして、三つ目。これが一番重要だ。それは、学園内でデマルクスと接触して情報を入手すること。彼の方から接触を図ってくるとは言っていたが、大丈夫だろうか。彼との接触は誰にも見られてはいけない。慎重に行動する必要がある。



「大通りに出たよ」



 私が頭の中で今日のスケジュールの確認をしていると、アルシャが大通りの坂の先に見える魔法学園を指さして言った。



「あれが、魔法学園………」



 こうして正面から見てみると、その存在感は凄まじい。どこかの王様が住んでいるのかと思わせるお城のような作りに、真ん中の一番高く太い塔の中央辺りから、各地区にそびえる塔に向かって放射状に延びる水路がさらに威圧感を醸し出している。また、その細部に至る細かな装飾がその建物が学校ではなく、芸術作品なのではないかと私の頭を錯覚させていた。


 大通りに出て十分ほど歩くと、周りも魔法学園の一般生徒ばかりになっていた。制服に身を包んだ私たちは、校門へと吸い込まれていく。生徒間の距離がぎゅうぎゅうに近づくに連れて、彼らの話し声が耳に入ってきた。



『ねえ、あれが噂の………』


『そうそう、二年前から行方知らずだった転拡者………』



『なあ、お前は今年のパーティー戦、どのチームを推してるんだ?』


『俺はもちろん、【正統なる冠掠】の絶対的火力、ヘルミナ様を推しているが、うーん、でも、【声なき星明り】の聖女ユティ・コフィンの包み込んでくれるようなあの包容力と胸も捨てがたいよなあ』


『俺はどのパーティーを推しているのか聞いたんだが……』



 彼らの話題は、二年前から行方知らずだった私に関するものと、今年のパーティー戦に関することがほとんどだった。


(元の世界では私のためにみんな道を開けてくれたのに…………せ、せまい)


 校門から学園内へとはいると、真ん中にある広場を囲うように、左右に石づくりのアーチ状の通路が分かれていた。学園内に侵入した私たちは人混みから抜け出した。



「僕たちの第一棟は右側だから、こっちだよ」



 アルシャは私の一歩先を歩きながら、右側の通路を進んで行く。私たち三人以外は誰もいない通路とは対照的に、反対側の通路には一般生徒がなだれ込んでおり、転拡者という存在がこの世界にとってはマイノリティであることを感じさせられた。



「右の第一棟が転拡者用で、左の棟が一般生徒用というのは分かりましたが、真ん中のひと際大きな建物は何なんですか?」



 転拡者と一般生徒の棟はほぼ同じ大きさで、左右対称に作られているが、正面に巨大な扉を備え付けるあの建物は一体何なのだろうか?



「あの建物は、大学だね。学生だけじゃなくて国中から偉い人が来るらしいよ。あと、図書館もあの建物の中に入ってるんだ」



 なるほど、つまり研究機関と図書館を収納した建物というわけだ。それにしては、大きすぎるような気もするが……。しばらく進むと、通路の角を左へと曲がり、私たちは棟の中へと侵入した。

 棟の中に入ると、まず目に入ったのは大きな大木だった。その大木が生えている場所から長方形に延びるようにして、天井までは吹き抜けており、一階からは各階の廊下?が見えた。



「この、大木は何ですか?」



 私は大木の前に立ち、観察をしながら二人に聞いた。よく見てみるとその大木の枝の先には、何やら球体のようなものが付いている。



「これは、この学校を創設した人が帝樹を真似て人工的に作ったものなんだって。で、この枝の先についてるのはこの学園を卒業した転拡者たちの虚機友導のレプリカ?みたいなものらしいよ」



 大木を見上げながらアルシャは説明してくれた。日の光が大木の枝の先へと当たると、様々な色に反射していた。おそらくこれが虚機友導の瞳の部分なのだろう。

 二人の後をついて、階段を上り、廊下を進むと、私は教室へとたどり着いた。

 教室の中は、大学の大教室のように、前にある教壇を囲うようにして席が段上に配置されている。

 教室の席を見まわしてみるが、私たち以外にはだれもいない。どうやら、私たちが一番乗りのようだ。



「席は指定されているんですか?」



「いや、指定されてないよ。どこに座りたい?今日はレイが決めていいよ!」



 私は、教室の入り口でしばらく悩んだ後、窓際の一番奥の席に座ることに決めた。

 初登校日に特等席を取るのもどうかと思ったが、それ以上にクラスメイトの観察をする必要があるからだ。情報は少しでも多くほしい。

 後ろの席まで移動すると、私を真ん中に挟むようにして、私たち三人は席に座った。


 十分ほど経っただろうか、私たちが入ってきた入り口から、続々とほかの生徒たちが入ってきた。彼らは私たちと同じように三人で固まって席についた。


(1,2,3,4,5,………あれ、あと一パーティー足りないわね)


 席に着いた彼らを頭の中で数えていると、一パーティー足りないことに気が付いた。それにしても、この教室は21人を収容するのにはあまりにも広すぎる。生徒間の距離はかなり広く、空白の席が7割ほどを占めていた。

 そのことについてアルシャに質問しようとしたとき、一人の男が教室へと入ってきた。



「はい。ではみなさん。席に付いているようですね。今年もよろしくお願いします。私と会うのは初めてという人も一人いらっしゃいますので、改めて自己紹介をします。私の名前は【トノワ・フックス】です。転拡者協会に所属しています」



 誰もトノアと名乗る先生に反応しない。これが平常運転なのだろうか。無視される先生が少し先ほどの自分と重なり、かわいそうだと思った私は、先生に向かって大きな声であいさつをした。



「よろしくお願いします!」



 黒板に文字を書いていた先生は、驚いたように振り向くと、笑顔で返事をしてくれた。



「ええ、こちらこそよろしく。レイさん……」



 そのあとは淡々と先生が話したり、黒板に書かれたことを解説する形で授業が進められた。今回の授業は、軽いガイダンスのようなもので、今年一杯のスケジュールについての話だった。



「今年もパーティー戦は行われますので、ぜひみなさんベストを尽くして戦ってくださいね。では、これで授業を終わります」



 先生は授業を終わらせると、一直線に私たちのほうに向かって歩いてきた。その間ほかの生徒たちは、そんなことは気にも留めず、パーティーの仲間同士で話をしている。



「レイさん。魔法学園にようこそ。大したもてなしはできませんが、これから一年間よろしくお願いします」



 先生は私に挨拶をすると、アルシャのほうを向いた。



「何かわからないことがあれば、彼女に聞いてください」



「先生、ボク達パーティー名の申請をしたいんですけど、今日は議会長っていますか?」



 アルシャが先生と顔を合わせながら質問をした。



「ええ、もちろん。議会長室にいらっしゃると思いますが、案内しましょうか?」



「はい。よろしくお願いします」



 トノアの後をついていきながら、教室を後にした私たち三人は、学園の中央奥に位置する建物に向かって歩いていた。私たちが、先ほど授業を聞いていた第一棟と一般生徒の棟はこの建物を挟むようにしてつながっているようだ。

 議会長室があるという建物の中に入ると、トノアが前を向いて歩きながら話しかけてきた。



「話は彼から伺っていますよ」



 彼?話?一体何のことを言っているのかと私の頭に一瞬疑問が浮かぶ。


(まさか………彼ってデマルクスことかしら?直接接触を図ってくると思っていたけど、教師の中に仲間がいたのね。でも、ここでデマルクスの名前を出すのは時期尚早だわ)



「話って一体何のことですか?」



 まだ彼に対して、内通者だという確信が持てなかった私はとぼけて聞き返した。



「はは、彼が言っていたように君はかなり用心深いようですね。彼っていうのはデマルクスのことです。で、話というのは君が計画している作戦についてですよ」


(ちょっと、この男、ここでそんなに大きな声で話して、誰かに聞こえてたらどうするのよ)



「声が大きいですよ、誰かに聞かれてたらどうするんですか」



 私は小さな声でささやくように、彼の横に駆け寄って言った。



「いや、問題ないです。私たちの声は周囲の人間には聞こえていなーい!音を遮断する魔法を使用していますからね」



 かなり大きな声でトノアがそう言ったが、周りの人間はその声など聞こえていないように歩いている。どうやら彼の言っていることは本当のようだ。


(音を遮断する魔法なんてのもあるのね、これは意外と使いどころがありそう………)



「これが君が求めていた資料です。忘れないうちに渡しておきます」


 トノアはそう言うと、彼の虚機友導を私の虚機友導へと近づけた。二人の虚機友導は数秒見つめあうとすぐに離れた。この光景は以前見たことがる。街に入るときにガブリエーレが門番としていたやり取りだ。



「君の虚機友導に情報を送ったから、あとで紙を開いてみてください。そうすれば勝手に虚機友導が情報をその紙に移してくれます」



「ありがとうございます。………でも、いいんですか?先生が、その…一つのパーティーに肩入れするなんて」



「これは別に肩入れしてるわけじゃないです。デマルクスにはいろいろと借りがあって、だから、私としては彼に協力しているってだけです」



「そうですか………」



 中央の建物に入ってから、階段を上り、大きな扉の前にたどり着くと、彼はその扉の前で立ち止まった。



「ここが、議会長室です。では私はこれで」



 そういうと彼は、足早に元来た道を帰っていった。彼を見送った私たちは、議会長室の豪華な装飾が施された扉をノックする。

 扉をノックすると、中から男性のような声で返事が聞こえてきたので、私たちは扉を開け中へと入った。

 縦長の部屋に入ると、たくさんの書類が積まれた最奥に位置する大きな机と、背もたれの長い椅子の後ろ姿が見えた。備え付けられた窓からは魔術学園都市が一望できる。絶景だ。



「パーティー名の申請に来ました」



 私がそういうと、椅子がクルっと回って議会長の姿が見えた。そして、私は予想に反したその姿に唖然と立ち尽くしてしまう。


(え?議会長っていうくらいだから、おじさんかと思ったのに、何この子?私よりも年下なんじゃないの?)


 男………ではなくその男の子は、苛烈な赤い髪色に赤い瞳、どう見ても小学生くらいの身体をしている。その見た目とは対照的に、服装の色は落ち着いた黒を基調としており、その体には少し大きなローブを身にまとっていた。



「よくきたね。レイ。君のことはガブリエーレから聞いたよ。この学園にようこそ。私の名前は、【テオフィロス・アギナガルデ】、この学園の理事長兼この都市の市長みたいな者だと思ってくれて構わないよ」



 そういうと、議会長はその体には大きすぎる椅子にどっしりと座りながら自己紹介をした。


(ここは、『とってもお若いですね』って触れた方がいいのかしら………でも、もしかしたら彼自身そのことを気にしてるかもしれないし………)


 しばらく悩んだ後、私は彼の外見に関しては何も言わないことに決めた。



「私は、黒義院冷です。左にいるのがアルシャ・グレンケアで右にいるのがリゼス・デラクルスです。パーティー名は君臨少女でお願いします」



「こんにちは」



「どーも」



 パーティー名の申請以外にはこの部屋に用はないので、素早く申請を終わらせようと必要な情報を手早く淡白に伝えた。その方がお忙しい議会長も建設的でいいだろう。



「え?ちょ、ちょっと待って、私の外見に関するツッコミはなし?その役職にしては、見た目がお若いですねとかは何もないの?それとも、私の放つオーラがこの場に的確過ぎて、まったく気にならなかった?」



 議会長は目を見開いて、そう言った。



「はい。特に気になりませんでした。それよりも早く申請をお願いします」



「わ、わかりました。いつもだったら、ここでこの見た目になった原因を長々と生徒に話すんだけど………」



 どうやら、彼が今の外見になったのには理由があるらしい。その理由が少し気になってしまった私は、彼にそのことについて話してもらうか少し三人で考えることにした。もしかしたら、思いもよらない収穫があるかもしれない。


(あの、彼すごく悲しそうな顔してますが、どうしますか?お話してもらいますか?)

(ボクはべつにそれでもいいよ!)

(かわいいから、話してもらおう)


(………まあ、デマルクスからの情報は受け取ったし、別に急ぐ必要もないか)

そう心の中で考えた私はお話をしてもらうことにした。



「では、そのお話をお願いします」



「え!話してもいいんですか!では、申請を行いながら語りますね!」



 身体を机から突き出し、目を輝かせながらそういうと、彼の虚機友導の瞳は光を放射して、彼の広げた紙に何やら文字を写し出した。



 そこからの彼の話は、想像の五倍は長かった……。申請の作業は物の数分で終わったようだが、彼の話はとどまることを知らなかった。『話が長すぎる!』と彼に向かって直接言ってしまおうかとも考えたが、彼はこの学園都市で一番偉い立場の人間、それは得策ではないという結論に至った。

 その結果、彼の話を立ちながら聞いていた私たちは、途中から横にある客人用のソファに座らされ、彼の話を延々と聞くはめになってしまった。



 彼の話を要約すると、まあ長すぎて途中聞いてない部分もあり、どの部分を要約すればいいかわからないが………。


 学園の最優秀パーティーのメンバーとして卒業した彼は、最速でダンジョンをクリアして、そのまま転拡者協会に入会。その後、いろいろな場所を冒険して強くなり、当時誰も倒せなかった赤鎧竜を倒した功績を認められ、女帝陛下から褒美として今の若々しい体をいただいたという話だった。

 この武勇伝を、三時間くらい聞かされた私たちは、へとへとになって議会長室を後にした。



「申請は完了したから、頑張ってください!【君臨少女】」



 議会長は満足げな顔で私たちを見送った。



「ごめんなさい。私が興味本位で彼に話を聞かせてくれなんて、言ってしまったせいで………」



 私は心の底から二人に申し訳ない気持ちで謝った。ほんとに申し訳ない。



「う、うん。まあ、あれはしょうがないよ」



「私、あのかわいいのは嫌い」



 二人はげっそりとした顔をしながら私の隣を歩いている。



「あ!午前中の授業ってもう終わってしまったのでは……」



 部屋を出て外の空気を吸い冷静になった私は、もうすでに正午を回っている時計を見て、そのことに気が付いた。



「あー、もう終わってるね。でも大丈夫、パーティー戦に役立ちそうな授業じゃないから………」



 そう言った彼女の顔はいまだにげんなりとしている。

 今日中にほかのパーティーメンバーに挨拶を済ませておきたがったが、予想外のハプニングに時間を取られてしまった。軽率な行動をしてしまったと反省する。


(どこの世界の校長も話は長いと………頭の中にメモしとこう)














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