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8話:王城

城門に着くと早速、門番による手荷物検査が始まった。


王女様の乗る馬車はくまなく調べられた。そして、扉を開けた門番と目が合った。


「あの、王女様。失礼ですがこの綺麗な身なりの方は?奴隷商人から買った奴隷ですか?」


王女様が俺を宮廷魔導士候補のハロルドだと伝えると慌てて敬礼をした。


「し、失礼致しました。ハロルド様!!その、あまりにもひどい臭いでしたので・・・。」


「・・・研究に没頭していて体を何日も洗っていなかったものだからな。」


「異常はなかったかしら?」


「ハイ!異常ありません!おかえりなさいませ、王女様並びに御付きの方々。」


城門を馬車でくぐると、いつも家がある小高い丘の上から遠目で見ていた石造りの城が、目の前まで迫って来た。


「迫力に押しつぶされそうだ。」


「ふふ、ようこそ私のお家へ!それにしても、先ほどの言い訳はうまかったですわ。」


「ど、どうも。」


「お帰りなさいませ!ティアナ王女様。」


馬車を降りると、メイドたちが一斉に真ん中を開けて並び、眼鏡をかけた初老のメイド長の一言で一斉にお辞儀をした。


「ご苦労様。」


「もしや、後ろにいるお方は・・・。」


「ええ、次の宮廷魔導士にふさわしいと私が判断した御方ですわ。」


「ハロルド・レオン・マホウスキーです。ど、どうぞよろしくお願いします!」


やはりと言うべきか俺のフルネームにメイドたちがどよめいた。


「マホウスキーですって!」「王女様、どうしちゃったのかしら?悪名高い貴族のしかも無魔人を拾ってくるなんて・・・。」「もしかして王女様のあれはすでに・・・その・・・。」


「皆静かに!」


メイド長の一声で場は一斉に静まり返った。


「無礼をお許しくださいハロルド様。」


「いいんですよ。これぐらい慣れっこです。」


「ふあー・・・よく寝たのです。」


「ふぇ、フェンリル?!」


「ハイなのです。ソーニャはフェンリル。ご主人様はハロルド様なのです。」


「首輪もなしに服従させたですって。」


「なんと!まあ、まあ!い、今すぐに謁見の準備をなさい!早く!!」


「「ハイ!!」」


「それと、ハロルド様にソーニャ様。法王猊下に謁見する前に身を清める必要があります。」


「まあ、ですよね。」


そして俺は、大浴場で先ほどのメイドたちに体の隅々まで洗われていた。


「ちょっ!そこは自分で洗えますって!!」


「だめです!メイド長にあなたの体は私たちが問題ないと思えるまで洗ってあげなさいと言われているので。」


「それに、蔑んだお詫びと思っていただければ幸いです。何か問題でも?」


「いや、全員薄い布切れ一枚だから目のやり場に困るんです!」


「ふーん。」


「あ、あの・・・う、後ろのお姉さん!む、胸が!胸が!!」


「当ててんのよ。」


「や、やめてこれ以上やると俺の俺がアアア!!」


「ここも汚いからゴシゴシしましょうねー。」


「アアア!ダメダメ!そこは・・・あっ。」


・・・・・・・・


俺は身も心も綺麗になって法王猊下に謁見した。


「面をあげよ。」


俺は顔を上げた。法王猊下は、威厳のある顔つきで自慢の長い白髭をなでた。


「ハロルド・レオン・マホウスキー。そなたは、我が娘に宮廷魔導士としてふさわしい人物だと見定められたらしいな。」


「ハイ。」


「娘を疑うわけではないが、この場で魔法の試し打ちをしてほしい。」


法王猊下はそう言って手を2回叩いた。


後ろから音がしたので振り向くと、先ほどのメイドさんたちが人間サイズほどの藁人形を5体ほど持ってきた。


「火、水、風、錬金、錬成、光、どの属性でも良い。あの藁人形5体を魔法で『一撃で』破壊せよ!」


貴族たちはざわついた。その中には、俺の元家族もいた。


「無魔人にできるのか・・・普通の魔導士でも不可能なことを。」


「ふん、どうせ何も出来ぬさ。父であったこの私が保証しよう。」


俺は表情一つ変えずに深々と頭を下げて返事をした。


「仰せのままに。」


その言葉にさらにざわついた。これで後に引けなくなった。


魔法を重んずる法王猊下のことだ。もし破壊に成功しても威力が弱ければ彼の娘の威厳が地に落ちる。


そして俺とソーニャ、娘のティアナ王女様は、よくて国外追放、悪ければひどい拷問の末にさらし首だ。


「ご主人様・・・。」


ソーニャは、心配そうに俺を見つめている。俺は、不安を押し殺しながら優しく頭をなでた。


「心配するな。必ず成功して見せる。」


「うん!」


とはいえ、失敗すればここまで良くしてもらったみんなの努力が無駄になる。緊張するなと言われても無理だ!


「まずは手前の一体。」


俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、右手を思いっきり突き出して藁人形を包み込むように空気の膜を作り、その中の空気分子の動きを加速させて一気に温度を上昇させて火をつけた。


しばらくして火は消えて藁人形もすっかり焼け落ちていた。


「おおー!」


「次は、風です。」


俺は、城を壊さないように目標の後ろにある壁一面に真空の膜を作り、藁人形を右手から放出した真空の刃で切り刻んだ。


「え?!えー!?」


弱すぎて驚いているな。さすが、我が祖国マーゴニア。法王猊下も呆れて開いた口がふさがらないようだ。


「えーっと次は・・・。」


だめだ!氷魔法っぽいものを試したいがイメージが浮かばない!


「待て!も、もうよい!」


法王猊下は右手で俺を制した。


あ、終わった。俺の人生・・・。

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