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6話:フェンリルの少女

フェンリルは俺を襲った盗賊たちをすべて平らげると、俺の前で伏せをして頭を垂れた。


「お腹すいて死にそうだったの。助けてくれてありがとなのです。」


「ど、どうも・・・。」


「私、ソーニャ!よろしくなのです。」


「ああ、よろしく。」


すると突然、ゴーという音とともに雪が横殴りに降ってきた。


「吹雪いてきたな。」


ソーニャの方を向くと、彼女は震えていた。


「フェンリルでも寒さは感じるのか?」


「ううん、私は寒さに弱いフェンリル。だから、寒くて死んじゃいそうなのです。」


可哀想に思った俺は、自分たちを包み込むようにドーム状の空気の膜を作り、ドーム状の空気の分子を活発に動くようにイメージした。


突っ立ったままだと、客観的に見て違和感があると思ったので、さりげなく両手を上にあげてみたりして・・・。


すると、みるみるうちに体が暖かくなっていくのを感じた。


ソーニャは、嬉しそうにワンワン言いながら跳ね回った。


「すごいのです!こんなスキルを持った優しい人間に出会えて私幸せなのです!これからはあなたをご主人様と呼ばせてほしいのです!」


「大げさだなぁ。俺はハロルドだ。呼び捨てで良いよ。」


「・・・ご主人様じゃダメなのですか?」


うるんだ瞳で俺を見るな!


「わ、わかった。しばらくはその呼び方でいいよ。」


「わーいなのです!」


その時、ソーニャが鼻をピスピスさせた。


「どうしたソーニャ?」


「ご主人様とはまた違う人間の匂いです。」


「どんな人間だ?」


「馬の匂いもするから馬車に乗る偉い人?なのです!」


「俺の家族か?」


「うーん・・・馬車の中にいるのは少女と初老の男性、あとは外に大人の男性が3名ほどいるのです。」


「と、すると俺とはまた違う別の貴族か。」


「この吹雪の中です。おそらく寒すぎて馬が動けなくなっているのです!」


「よし、助けに行くぞ!」


「ハイなのです!」


もちろん、ただの人助けではなく、助けたお礼に町まで送ってもらおうという魂胆だ。


ソーニャの言う通り、吹雪の中で雪に埋もれかけている馬車と馬、護衛たちがいた。


馬と護衛たちはうずくまり今にも凍え死にそうだ。


俺は自分たちを覆っている空気のドームを、馬と護衛ごと馬車を包み込むように広げた。


「あれ?寒くねえ!」「ホントだ!ここは天国か!?」「わからねえ。」


護衛たちはひどく驚いた様子だった。


「ブヒ?ブヒヒヒーン!!」


馬が嬉しそうに嘶いた。


すると、馬車の扉が開いた。


「なんだか暖かくなってきましたわ。じいや。・・・!」


「そのようですな。それにしても、護衛と馬が騒がしい・・・なあっ!」


中から出てきたのは、ピンク色のドレスに身をまとった色白で金髪碧眼の美少女と黒のタキシードに身を包んだオールバックの銀髪老人だった。


少女はどこかで見覚えがあるが気のせいだろう。


二人とも、目の前の光景に信じられないと言わんばかりに目を見開いている。


そりゃそうだろう、目の前にいるのは伝説の魔犬と呼ばれるフェンリルを連れた身なりがボロボロの貴族の男性でその周りでは、ドーム状の何かが吹雪を防いでいるのだから。


俺は怪しい人に見えないように精一杯の笑顔で話しかけた。


「大丈夫ですか?」


「あ、ああ・・・この暖かいのは君がやったのかい?」


「ハイ。」


「しかも、気高い精神を持つことで有名なフェンリルを、隷属の証となる首輪もなしに使役するなんて・・・。じいや!すぐにでもこの人を!」


「そ、そうですな。」


「失礼ですが、あなたはそのような身なりでどちらへ?」


「実は親に捨てられて行く当てもなく・・・。」


「なんと!このような優秀な息子を捨てるとはけしからん奴らじゃ!」


「お嬢様方はどちらへ?」


「私たちは宮廷魔導士なるものを探していたのです。この間のスキルギフトの儀式でも、条件に合う人物はおりませんでしたので・・・。」


「あの空位になっている?」


「積もる話もあります。さあ、お二方どうぞ馬車の中へ・・・。」


「失礼します。」「ワン!」


言われるままに俺たちは馬車に乗った。


「ところで、あなた方の御名前は?」


「あー、失礼。私はハロルド、今は廃嫡されてしまいましたがマホウスキー家の長男です。」


「わたし、フェンリルのソーニャなのです!よろしくなのです!」


「よろしくね。ハロルドさん、ソーニャさん。」


笑顔が可愛いお嬢さんだ。


「ハイなの!」


ソーニャも負けてないな、姿はまんま犬だけど。


「それにしてもマホウスキーか、上級貴族の中でもいけ好かない連中だと思っていたが、こんな優秀な息子を、しかも家督を継ぐはずの長男を捨てるとは・・・。」


「じいや!あんなのでも彼の家族です。そんな言い方ハロルドさんに失礼ですわ。」


「ああ!すまん!ハロルド君!!」


「いいんですよ。もっと言ってやってください。ところであなた方はいったい?」


「これは失礼!私は、ティアナお嬢様に使える執事、ルノワールと申します。そして、こちらが・・・。」


「マーゴニア法国の法王エルグランド・グリフ・マーゴニアが娘。ティアナ・カルバンクライン・マーゴニアです。」

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