第八話
それから二週間たった。
四月も半ばを過ぎて、そろそろクラスも落ち着いてくる時期だ。
私と初めて同じクラスになった人も私に何もしなければ何も起きないということを学んだのか、普通に談笑したりして休みを過ごしていた。
私は静かに本を読む。
しかし、少し飽きたので談笑の内容に少し耳を傾ける。
「そろそろ選定者選考会でしょ。」
「でも、決まってるようなものじゃん。」
「そうだけどもしかしたらってあるじゃん。」
そんな会話が聞こえた。
そのあと少し視線を感じたがすぐにそれは消えた。
ページをめくる。
選定者とはこの学園の文化の一つだ。
毎年女性が一人選定者に選ばれ各学期に王冠を優秀だと思った生徒に与える。
そして、年度末に最終的な王者を決め選定者と王者を婿、花嫁に見立てた式を執り行う。
卒業生でこの式を行った組み合わせの結婚率は高くかつ幸せになれるという話もあり、この選定者になるのは憧れの一つとなっている。
とはいえ、この選定者になるのは恒例として生徒会のメンバーかラングスペルスと決まっている。
厳密にいうと規定で決まっているわけではないから、会話通りもしかしたらはある。
が、日本という国はそういうふわっとした決まり事が重要視されると聞く。
それを踏まえると難しいだろう。
「あの…。」
消え入りそうな声で声をかけられた。
私はさして文が頭に入ってこない本から目を離す。
ひっ、っと小さな悲鳴とごめんなさいとまた消え入りそうな声が聞こえる。
「ご用件はなんですか?委員長さん。」
クラスの委員長たる彼女は気が弱いのかその役を押し付けられた。
そんな彼女は私の目のきつさに恐れるのはしかたないとおもっているので気にしないようにしている。
彼女はおずおずと
「あの、瀬名さんが呼んでいます。」
そう言われてドア付近を見ると確かに瀬名が見える。
そう、とそれだけ告げると私は席を立った。
正直心当たりはないが瀬名がわざわざ来るのは何か用事があるのだろう。
瀬名に声をかけると少し場所を変えませんかといわれたのでついていく。
休み時間は長くないので手短に終わるだろうか?
私としてはそれが気になってしまった。