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第四話

放課後。

さて、私のマイルームの掃除しないといけないので教室を出るとわいきゃいと声が聞こえる。

廊下を塞ぐように人だかりができてる。

邪魔ね。

真ん中にいる人を助ける義理はないけど…。

私はため息をつくとわざと少し大きめの足音を立てて歩き出した。

「皇樹様。こんなところでお戯れとはよもや私との約束をお忘れではありませんか?」

私の声にぴたっと止まる周りの女子達。

そして、その女子に囲まれ抜け出せなくなった阿呆。失礼。皇樹は私の顔を見て少し固まった。

これで、合わせてもらえないと助けようがないのだけど。

「あぁ、そうだったな。」

とりあえず乗ってくれたようだ。

「早く皇樹様のルームに参りましょう?」

ルームとはスペシャルズに与えられてる部屋である。

言えば何でも取り揃えてくれるが私はあまり利用していない。

多分ホコリがあるだろうから。早めに行きたかったが。

私が人混みに向かって歩き出すとまた人の海は割れていく。

よもや神話になってしまうのだろうか。

「では、皆様ごきげんよう。」

私の一言に顔を歪ませませていく女子達。

いらぬ恨みを買ってしまったか。

この代償はどう払って頂こうか?

私は隣で難しいかおをしている皇樹を睨みつける。

彼は気付いてないかもしれないが。



さて、彼のマイルームは適度には使っているのか。

それなりに綺麗でまた勉強道具などが整頓されて陳列されていた。

「何のつもりだ?」

「あんなところで人混み作られては迷惑でしたので。」

彼の質問に私はさらっと返す。

力関係は彼の方が上だがあくまで私たちはラングスペルス。

能力はさておき立場は対等だ。

へたに下手に出て付け込ませるわけにも行かない。

それに、今回のは貸しになってるはずだ。

まぁ、彼に恩義という概念があればたけど。

「それで、このあとどうする気だ?」

要求があると思っているのだろうか?

残念ながら力を借りないとどうしようもない案件はまだ抱えてない。

「特にはありませんよ。それでは失礼します。来客がありますので。」

掃除する時間は……ぎりぎりか。

私が皇樹のルームを出ようとすると

「おい!本当にないのか?」

と念を押されてる。

そこまで信用されてないのか。

私は少し腹が立った。

「ええ。もちろん。」

それだけ返すと私は部屋を出た。



このくらいでいいかしら?

部屋をざっと見渡す。

掃除や洗濯、料理など基本的なことは仕込まれている。

もちろん普段やることは無いが使用人達が体調を崩した時何も出来ないのはまずいと習ったのが役に立った。

とはいえ、不安にはなるが。

私は紅茶を入れるとソファーに座り一息ついた。

少ししてドアのノックのおとがする。

約束の五分前。

まぁ、常識の範囲内だろう。

「どうぞ。お入りください。」

私が一声かけると控えめにドアが開いた。

招かれた彼女、立花立夏は部屋の隅っこでこちらを見てる。

「どうしたの?こちらに来なさいな。」

私はニヒルな笑顔になるように笑った。

彼女はおずおずと前に出る。

気圧されているのだろう。

気持ちはわかる。

「さて、なにから……。」

「申し訳ありませんでした!」

深々と頭を下げる彼女。

「あら、何をかしら?」

私はそうとぼけて見せた。

すこし驚いたように彼女は顔を上げた。

「座りなさい。」

私が促すと彼女はぎこちなくソファーに座る。

それを確認した後、

「あなた、私をだれか知っているかしら?」

私はそう切り出した。

「えと…」

言い淀んだ彼女。何回か目線が移動していく。

上に下に。

「知らないのならそう言いなさい。」

呆れた私はそう呟いた。

「ごめんなさい。あっ。」

ため息をつく。

「も、申し訳ございません。」

再度謝る彼女。悪いと思ているのだろうか。

「何に対して謝罪してるのか。分かっています?」

「えと…。」

また目線が少し上に向く。

「今朝ぶつかってしまって…。私の不注意で。」

私としては別にぶつかったことを怒ってはいない。

私もボーとしてたのだから。過失はあると思う。

だから、それはどうでもいいのだが。

彼女の態度に少し腹がたった。

「私は別にぶつかったことは怒っていないんですよ。」

可能な限り冷静に私は言う。

少し意外そうに彼女はこちらを見る。

「私が今怒っているのはあなたが私を見ないで謝罪をしていることよ。何を見ているの?」

わたしの言葉に彼女は困ったように笑った。

何が面白いのだろうか。

この子とは性格が合わないのだろう。

「なんで、笑ってるの?」

「あ、いえ。その…。」

私は紅茶に口を付けた。

静かに言葉の続きを待つ。

「私の癖…なんだと思います。」

絞りだすように彼女は言う。

しぐさ、声色から察するに嘘ではなさそうだ。

とはいえ、全部でもない気がする。

「わかりました。お話は以上です。」

私は聞き出すのを諦めた。

私は席を立つと彼女の耳元でそっと呟いた。

「一週間ほど学校を休みなさい。」

「え?」

「何言われても理由は話さないで。休みなさい。」

私の言葉に彼女はゆっくりと頷いた。

私はそれを確認するとゆっくりと彼女から離れて扉を開ける。

「では、おかえりなさい。」

彼女は部屋から出るときこちらを少し見る。

私は彼女をにらみ返す。

彼女は頭を下げると走り去っていった。



彼女が去った後、私はソファーに座り込む。

そして、あまり使ってないルームの天井を見上げた。

私は私というキャラを演じている。

もちろんそのキャラを利用している時もあるし、そのキャラだから。しなくてはならないという時もある。

「私は何やってるんだろう。」

そのつぶやきは何度目か。

数える気にもならない位はあるかもしれない。

スマホを操作して迎えを確認する。

あと少しで着けるらしい。

今度はベルに連絡を入れる。

まだ学校にいるらしい。

「あら、珍しい。」

思わずそう呟いた。

彼女は私と同じこの白鷺高校に在籍している。

1年の彼女は私のメイドということは隠して1年の様子を見るようにしている。

つまるところ密偵だ。

というのは、名目で本当はベルと同じ学校に通いたかっただけなのだけど。

私は思わず笑ってしまう。

私が車で学校を出て、途中でベルを拾う手はずで話し合い私はルームを出た。

施錠しきちんとかかってるか確認する。

家に帰ったらベルの紅茶が飲みたいな。

私のお茶はやはり美味しくない。

そう考えながら帰路についた。

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