第三話
私は教室につくと本を取り出した。
クラス替えした教室ではあるが私に近づこうとする者はいない。
左京はどこかに行ってしまった。
右京は私の席の少し後ろに立っている。
もちろん自発的にだ。
前にも座ったら?とお願いしたが頑として聞き入れてくれない。
左京は聞いてくれるのでそこら辺は右京の方が頑固だ。
私が数ページ読み終わった時左京がどこぞから帰ってきた。
「ナターシャ様。件のやからの情報持ってきました。」
私が首をかしげていると
「今日ぶつかりました……。」
「あぁ。情報はやいですね。流石です。左京。」
私はできるだけ悪い感じになるように笑う。
「ありがとうございます。」
そういった彼女は私の前の席に座る。
そこはあなたの席ではないとは言いたいが言っても仕方ない。
さて、簡単に私怨交えた説明を簡単に詰めると……。
彼女の名前は立花六夏。
1年で特待生。クラスは1年3組。
家庭は普通の家庭。
珍しいですね。
「どこぞの名家のもの。という訳では無いのね。」
「そうなんですよ!いえ、たとえどんな家柄でもナターシャ様に!」
左京の再熱を諌めつつ私は思考する。
私から目をつけられた……と思われているのでしょうから。
「左京、一つお願いがあります。」
「はぁ。なんでしょう?」
「私以外にちょっかい出されては困りますわ。」
それだけで分かったのか。
「わかりました。私の情報ネットワークに流しておきます。」
とうなづいてくれた。
話が早くて助かる。
「右京。言伝頼めますか?」
振り返り右京に話しかけると右京もうなづいてくれる。
さらさらと簡単に文をしたためて右京に渡す。
彼女なら乱暴なことにならないだろう。
左京に任せると再熱して変なことしかねない。
「二人ともそろそろ。」
私は時計を指し示す。
「はい。では、ナターシャ様。」
そう言って二人は自分の任務を携えながら席に戻った。
持たせたの私だが。
「ナターシャ。元気か?」
一時間目も終わり移動教室。
美術室に移動する際声をかけれた。
私を呼び捨てにするのは一人くらいしかこの学校にはいない。
「なんでごさいましょう?皇樹様?」
振り返ると私の苦手な男子がいた。
学年トップの学力と運動神経。
それに、整った容姿。
やや粗暴な口調ではあるがそれが良いという声もあるらしい。
皇樹 紅とはそんな人だ。
ラングスペルスの学力と運動神経の人担当を超えるスペックを持ており、いわゆる万能超人である。
あの二人肩身が狭いだろうな。
もちろん彼もラングスペルスだ。
上の不作だった三年生は一人しか出してないことを考えれば私の代は豊作といえる。
その三年生も学力で皇樹に負けてしまった。
「いや、お前後輩とことかまえるだってな。」
そのことか。
「まさか、あの程度の娘。放置しても支障はないでしょう?もちろん、お遊びには付き合っていただきますが。」
遊び程度にはいじめを行う。
そう解釈してもらえただろうか?
彼は笑うと
「壊すなよ。」
それだけ告げた。
二時間目の休み。
飲み物を買おうとしていると今度は新しくラングスペルスに入った一年の子にあった。
名前は……。何だったかしら?
「こんにちは。あなたここは二年フロアよ?」
学年ごとに移動する階がだいたい決まっている。
例えば一年は一階。二年はニ階と言った具合だ。
あまりほかの階を行き来するのは目をつけられるので推奨されない。
まぁ、彼なら大丈夫かもしれないが。
「こんにちは。先輩。ここの自販機にしかこれなくて。」
爽やかな笑顔を見せる彼。
手には栄養を補完できるあのお菓子みたいのがあった。
あとは、スポーツドリンク。
「そう。」
私は疑問を解決したので自分の飲み物を買う。
ちなみに、右京と左京は基本的に朝とお昼、放課後しか合わない。
あとは、休日に遊ぶこともなくもないがまれだ。
お互いお嬢様ともなると習い事などがあるので仕方ない。
ちなみに、私はないけど……。
誘ってくれたら行きますのに。
あぁ、思い出した。
「そういえば斎藤一君は皇樹様と勝負させられたんですって?」
なぜフルネームという顔を一瞬だけうつしたがすぐに消え、少し情けないと感じてる笑顔で
「全く勝負にならなかったですけどね。」
そう笑う。
確か種目は1000メートル走だったか。
皇樹相手に50センチしか差がつかなかったのは流石だ。
「大丈夫ですよ。彼がおかしいのです。」
私はそう笑う。
「先輩って……。」
「何かしら?」
私が聞き返すと
「いえ、何でもないです。」
そうあの爽やかな笑顔で流された。
三時間目の休憩時間。
今日は本当にラングスペルスに会う日だとあきれてしまう。
今度は同じ女性の花開院瀬奈だ。
由緒ある呪術師の一族だ。
呪術師というと聞きは悪いがざっくりいうと占い師である。
ちなみに、彼女の愛用は藁人形である。
呪う気にしか見えない。
ここで、豆知識だがそもそも藁人形とは願いを叶える道具である。
願い事を書いてそれと一緒に釘で打つ。
その様はあんまり良くないので呪いとなった……らしい。
彼女の受け売りだ。
「こんにちは。ナターシャ様。」
「こんにちは。瀬奈様。」
「もう友達ですので瀬名でいいですわよ。」
ふふ、と彼女は笑うがその記憶はない。
会合で会うが話したのは全く記憶にない。
あの藁人形の豆知識くらいか。
会合で持ってた藁人形に聞いた時に言われた。
正直こわい。
私が困惑していると
「こちらを差し上げます。」
そう差し出されたのは藁人形だった。
丁重にお断りをした。
四時間目の休憩時間。
もうあと一人でラングスペルスすべてに会えるなと思った。
呪術師の次は超能力である。
「こんにちは。神宮寺君。」
また二階に一年生神宮寺翔真がいた。
「どうも。」
またそんな挨拶をと思うが私もまた飲み物を買いに行く途中だから。
手短に話そう。
「あなたそんな挨拶にしていると皇樹様に怒られるわよ。」
「まぁ、そうっすね。」
「えー。」
私が呆れていると彼はくすくす笑うと笑い出す。
「なにかしら?」
そう睨みつけると彼は
「いや、その。」
どもり出した。
やっぱり目つき悪いとこういう時楽よね。
嬉しくないけど。
「その。ちょっと先輩って聞いてるよか優しいんだなと。」
「下手に敵を作る必要ないので……。ただ……。」
そこでわざわざ言葉を切り彼の耳元で囁く。
「あまりおいたはいかがなものと思いますよ。」
ニコッと笑うと彼も引きつって笑う。
彼がむかうとしていた方向はさぼりによくつかわれる自習室がある方向だ。
あくまで予測だが釘は刺しておこう。
時計を確認すると飲み物買う時間はなさそうだった。
お昼休み。
右京と左京には先に食堂に行ってもらって私は図書館で本を返却していた。
そして、ラングスペルスコンプである。
「花開院様。こんにちは。」
「やあ、ナターシャ君。元気かい?」
花開院誠。
苗字で分かる通り花開院瀬奈の兄である。
ただし、花開院家は不思議と呪術師の才能は女性に宿る男性はそういう意味ではハズレ扱いだ。
そんな彼がスペシャルズに入れた理由は学力である。
まぁ、皇樹がことごとく破ったわけだが。
可哀想などと言っても彼を傷つけるだけだろう。
そう思って私はいつも通りを心がけている。
「ええ。おかげさまで。そういえば瀬奈様とも本日お会いしましたよ。」
「聞いたよ。瀬名も君と仲良く出来て喜んでたよ。」
にこやかにいう誠様。
申し訳ありませんが仲良くした記憶がございません……。
「さっきもナターシャ様と楽しくお話してましたと僕に話してくれてね。」
「そうなのですか。」
外堀が埋められているのを感じる。
いえ、完全に仲良くしたくない訳では無いのだけど。
ちょっと……ねえ。
「僕からも妹と仲良くしてくれると嬉しいよ。」
そう言われてはもう逃げ道はないだろう。
今度休みにどこか行ってみようか。
私の悩みが増えてしまった。
そして、放課後へと話は移る。