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溺愛されすぎ公爵夫人の日常。強力な権力とコネを使って人の役に立とうと思います!  作者: 橘ハルシ
第三章 公爵夫人、落ちる。

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21/98

3−5

※エミーリア視点

 

 

「ママかパパ、いるかしら?」

 

 街の外れの大きな橋に着いたが、誰も居らず私はがっかりした。

 ライナーやフリッツのほうがもっと残念だとは思うけど。

 

 それにしても人の少ない場所ね。

 こんな所で子供を待たせるのは、どうかと思うわ。

 

 リーンは鋭い目であちこち見ている。そんな怖い目で周りを見なくてもいいのに。

 そういえば、デニス達が別行動しているから今、私達の側に護衛はいないのよね。それで警戒してくれているのかしら。

 

 橋の下は運河になっていて船が行き交っている。深そう、と欄干から身を乗り出して橋の下を覗いたら、慌てたミアに引き戻された。

 

「フリッツはこの街に住んでいるの? 家がわかるなら送っていくよ?」

 

 このまま待っていても迎えは来ないと思ったのか、リーンがフリッツに提案した。

 フリッツは焦ったように首を振る。

 

「旅の……商人で、仕事が終われば迎えに来るって」

「そうか。じゃあ、市場に行けば会えるかな?」

「ここで、待ってろって」

 

 ますます怪しい。

 

「ねえ、フリッツ。もし、もしもよ、お父様もお母様も来なければ、私達と一緒に来る?」

「え? 何言って……なんで貴族のあんたがそんなこと言うんだよ」

 

 思わずぽろりと口から出た私の台詞に、フリッツは目を丸くして、困惑した表情を浮かべた。

 

「あ、ごめんなさい! そうよね、フリッツたちのご両親は絶対来るわ! 一緒に待ちましょう」

 

 いけない、つい自分の考えだけで先走ってしまった。フリッツに詫びようと彼に近づいたその時、周囲の空気が一変した。

 

「エミィ、僕の後ろに! ミア、ライナーを頼む!」

 

 リーンが叫んで私の前に出た。ミアがさっとライナーを受け取り、私の横に来る。私も慌てて横にいたフリッツを引き寄せた。

 

 気がつくと橋の両側から、武器を持った人々が私達のほうへ近づいてきている。

 ざっと見ても十人以上はいる。

 物盗りにしては物々しい出で立ちで、あっという間に取り囲まれた。

 

 剣を構えたリーンが、首領らしき男に声を掛ける。

 

「目的は金か? それとも私へ言いたいことでもあるのか。それなら聞くから、武器を下ろせ」

「悪いね、旦那。どちらでもなくてよ、ちょっと頼まれてそこの女が必要なんでさ。そいつさえ、渡してもらえればおれ達は引くぜ」

 

 そこの女、と言ったその男と目があった。


 ……え?まさか、私?


 隣のミアを窺えば、同じように私を見ていた。


 何で私?突然、全く知らない男達にそんなことを言われたら、怖い。知らず知らず身体が震えて、隣のフリッツをぎゅっと抱き寄せていた。

 

「あんた、震えてる。怖いのか?」

 

 指摘されてはっとした。そうだ、ここで私が怖がっていたら、フリッツやライナーに余計に恐怖を与えてしまうことになる。しっかりして平気なふりしなきゃ。

 

「いいえ? 怖くないわ。だってリーンがいるもの。彼は強いのよ」

 

 そう言いながら、自分にも言い聞かせていた。


 大丈夫、リーンがなんとかしてくれる。……でも、人数が違いすぎるし、彼が怪我したり……命を落としたら? それくらいなら、私が最初から大人しく男達に引き渡されたほうが良くない?


 その後どうなるのか、さっぱりわからないところが怖いだけで、どういう理由で私が必要なのか聞いてみたらどうかしら?

 

「あの……」

「僕は大丈夫だから、エミィはそこから動かないで」

 

 声をかけようとした途端、リーンにぴしゃっと言われた。


 なんで、私の言いたいことがわかったの。

 

 続いてリーンは、大きくため息をついた。

 

「やれやれ。お前達、よりによって彼女が欲しいと? それは世界と引き換えにしても無理な話だよ?」

 

 リーンの声がもの凄く冷たい。私の聞いたことがない声だ。フリッツも固まっている。

 ミアだけは動じていなかった。


 もしや、このリーンを知ってるの?!

 

「一人のくせに吹かすねえ。旦那ならいくらでも女の替えがいるだろうに、大人しく渡して去ったほうが身の為だと思うぜ?」

「私がそれをしたら彼女の価値はぐっと下がるんじゃないかい?」

「試してみちゃどうだい?」

「断る」

「じゃあ、力ずくでもらうが、こんな不利な状況で、そのお綺麗な顔に傷がついても知らないぞ」

 

 リーンの背中が揺れた。……もしかして、笑ってる?

 

「それはこちらの台詞だよ。僕はこれくらいの人数なら一人で対処できる」

 

 そう言いながら、近くの男達をあっという間に地面に転がした。

 私には何がどうなったか、見えなかった。

 ミアは、流石、旦那様。と呟いていた。

 

「それに知ってる?護 衛ってのは側にいるのが全員じゃないんだよ。さっき別行動したのは妻の護衛。ハーフェルト公爵家当主の私に護衛がいないと思っていた?」

 

 リーンの早業を見、それを聞いた男達は、焦ったように周囲を見回した。

 私も顔を上げて周りを見て、安堵した。

 

 いつの間にかうちの騎士が三人、男達の後ろにいたのだ。

 普段は見える所にいるのに、今日は姿も気配もないから連れずに来たのかと思っていた。良かった。

 

「それから、もうすぐこの街の警備兵も来るよ。お前達、ずっと私達をつけてただろ。デニス達に呼びに行かせたんだ」

「え、ライナー達のお母さんを探しに行ったんじゃなかったの?」

 

 気が緩んで思わずぽろりと声を掛けた私に、リーンは振り向かずに答えてくれた。

 

「うん、まあ。君の安全が優先だし。それに、この街のことなら警備兵に聞いたほうが早いでしょ」

 

 そうかも? と私が首を傾げると同時に、

「まだおれ達のほうが数が多いんだ、警備兵が来る前にやっちまえ。女さえ手に入れたらこっちの勝ちだ」

 と大声が聞こえて男達が一斉にこちらへ襲いかかってきた。


 それはもう、破れかぶれっていわない?!


 

 応戦するリーン達の邪魔にならないよう、フリッツと欄干にくっついていたら、急に繋いでいた手を振り解かれた。

 

「フリッツ? 危ないから手を繫いでいましょう?」

 

 身を乗り出して川面を睨むフリッツへ声を掛け、もう一度手を繋ごうと差し出した私の手は払いのけられた。

 フリッツは怒ったような泣いたような複雑な顔をして、私を睨みつけてきた。

 

 「怒らないし優しいしお菓子くれたし、おれは、あんたのこと嫌いじゃない。何の恨みもない。でも、言うこと聞かないと食べ物もらえないし、生きていけないんだ。だから……ごめん!」

 

 彼の言っている内容を理解する前に、どんっという衝撃がきて、私の視界がくるっと回った。

 

「奥様っ!」

 

 焦ったミアがライナーを抱いたまま手を伸ばしてくる。私もミアに向かって手を伸ばしたけど、全く届かなかった。

 

「エミィ?!くそっ、ミアッ、フリッツを捕まえろ!」

 

 リーンの慌てた声も聞こえる。

 

 そうか、フリッツもあの男達の仲間だったのかもしれない。

 多分、リーンは色々分かってて警戒してくれてたのに、私が自分のやりたいことを優先してそれを台無しにしちゃったんだわ。ごめんなさい。

 

 でも、フリッツはまだ十歳の子供で、保護者の言うことは絶対だと思うの。やれと言われたら実行する以外に方法はなかった。


 だから、リーンにフリッツは悪くないと言わないと。

 

 

 私も子供の頃、父に学園に行く以外は部屋から出ないようにと言われて、それを忠実に守っていたわ。

 だって父が言うなら、そうしなきゃだめだと思ったのだもの。

 誰もそれをおかしいと教えてくれなかったし、私も思わなかった。

 

 今なら父にも母にもそれは間違ってると文句が言えるけど、子供の時には出来なかった。

 だから、リーン、フリッツを怒らないで。

 

 

 ところで、私は泳いだことがないのだけど、川に落ちたらどうすればいいのかしら?

 

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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