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堕天転生戦記  作者: 里原 健
75/80

ジョヨー攻防戦勃発2

※修正のお詫び

第74話を投稿してから気付いたのですが、内容が少し多すぎました。

二分割して投稿します。

既に読まれた方々にとっては二度手間になってしまいますが、何卒ご容赦下さい。

よろしくお願いします。


ご意見、ご感想をお待ちしております。

よろしくお願いします。

 城門の上と地上の上に立つ二人の大将の間には、三百歩程離れた空間があった。二人の視線の間には何も無く、互いに相手の姿から目を離すことはなかった。

「あれが敵軍の大将、名将カトケインか………。」

 スレイは少し表情を硬くして呟きながら片手で合図を出した。隣に立っている武将が返しの口上(こうじょう)を述べ始めた。

「私はジョヨー防衛軍スレイ将軍副官のスティル・コモンだ!我らの返答は単純明快、下らない賠償など払うことなく貴軍と一戦交えるのみ!貴軍に負けることなく追い払ってみせる!他国にて無駄に屍を晒すことなど誰も望んでいないではないのか?!貴軍こそ今から夜までに撤退されよ!」

 ガイゼルほどの大声ではなくとも、コモンの低く良く通った声は一言一句カトケイン達の耳に届いた。

「ならば、心行くまで戦うまで!ジョヨーの兵士よ!いざ尋常に勝負!!」

「おおっ!正々堂々と戦い、ゲレノア国と雌雄を決しようぞ!!」

 互いに交戦の意思を伝えあって「戦の口上(こうじょう)」は終わった。戦争になれば「尋常」にも「正々堂々」にも則らずあらゆる手を使って戦うのだが、建前上の儀式としての締めの言葉を交わしあった。

 カトケインは黙ってスレイを見つめた。スレイもカトケインを見返していた。二人の視線はぴったりと合い外されることがなかった。

(あの白い兜は、あの男と同じもの。…。そうか、あれがフナガノ・スレイか。立ち姿は堂々としたものだな。父親に良く似ている。)

 カトケインはかつてのジョヨーでの戦場で華々しい活躍を遂げた一人の将兵を思い出してた。

 その時、突如東門から少し甲高い男の声が上がった。

「ゲレノア軍上級将軍、デレン・カトケイン将軍!貴殿とこの戦場で一戦交えることを喜ばしく思う。我らは屈することなく、貴軍を打ち破るだろう。」

 スレイがカトケインに直接に話しかけた。

 通常、戦の口上は大将が言葉を発することなく、黙って行く末を見守るのが慣習だった。これにはレノクッス軍だけでなくゲレノア軍の兵士達も驚いた。しかしカトケインは待ち受けていたかのようにスレイの掛け声を受け止めて大声で応えた。

「ジョヨーの守将、フナガノ・スレイよ!我が国まで貴殿の評判は届いている!こんな都市で貴殿の実力を埋もれさせて、挙句にその生首を私の前に置くのは惜しい。どうだ、いっそのこと私の元に仕えぬか?」

「アーーーーハハハッ!そのお言葉そっくりお返しします!多くの戦士を屠ってきた貴殿こそ我が国に投降されよ!厚遇しますぞ!」

 スレイはカトケインの覇気を受け止めて負けじと応えた。

「俺が貴殿の父を殺した男でもか?!」

 カトケインはスレイの不意を突いて切り返した。しかし、スレイは少しも怯むこともなく即座に返答した。

「なら、尚のこと!強き戦士を打ち破った勇者は我がレノクッス国にては尊敬こそされ、卑しめられることなどありません。いかがかな、我が国に来られよ!」

「それは叶わぬ戯言(ざれごと)よ!互いの意志はすでに分かり切っている!いざ、雌雄を決しようぞ!」

「言われるまでもない!いざ、勝負!」

 二人のやり取りを聞き終わった両軍の兵士は、勇ましい大将同士の口上に戦意が高まった。そして誰からともなく大きな喊声が上がった。城の中の兵士、外を囲む兵士の両方から湧きあがった。スレイとカトケインはその騒がしい大歓声の中でも視線を交わしたままだった。

「つまらぬ揺さ振りにも動じない肝の据わった武将だ。これが分かっただけでも、この口上には意味があった。………、フフフ、戻るぞ。」

 命令を出しながら、思わずカトケインは含み笑いを出していた。周囲の兵士達は自軍の将軍が笑い出したのを少し驚いたが、大将の余裕のある様子を見て頼もしくも思った。

 カトケイン達はゆっくりと馬首を返すと自陣に戻って行った。

「将軍、ジョヨーの兵士達はなかなかの威容でしたな。戦い甲斐があるというもの!やる気が湧いてきますな!ハハハッ!!」

 ガイゼルがカトケインと馬を並べながら戦意の高ぶりを声に漏らしていた。敵味方の主将同士のやり取りを見て気分が高まったガイゼルは白目を赤く血走らせて不敵に笑っていた。

「そうだな。今日一日はそのやる気を抑えて指揮に徹しろ。まずは投石で戦意を崩す。メッサーも弓矢の準備をして体力を温存しておけ。」

 カトケインはメッサーに顔を向けると、彼女は少し険のある顔つきをしているの気付いた。

「どうした、前線に出られないのが不満か?珍しいな。」

「いえ、そんなんじゃないですよ。将軍、気付きました?城壁沿いの塔の上にある幌を。何かを隠しているように見えました。ケンプスから何か聞いていますか?」

 ジョヨーには城壁に沿って十ほどの小塔が建てられているが、その屋上には一様に大きな幌が掛けられていた。その下のものを風雨から防いでいるように見えたのをカトケインも覚えていた。

「敵軍の協力者の情報では、対攻城戦用の装備が置かれているらしい。詳細な軍事情報は把握できていないが、貴様は気になるか?」

「私がいた9年前には何も置かれていなかったはず。しかも城壁にある十数の塔の全てに設置されているわ。そこまで配備している以上は警戒した方がいいかも。私の気にしすぎならいいけどね。」

「………、分かった。メッサーは塔の監視をしろ。何か気付いたらすぐに知らせろ。」

「了解。」

 一行はそのままゲレノア軍の本隊へと戻った。カトケインは副官のケンプスに塔の上の装備について情報収集するように命じると、そのまま居並ぶ兵士達の前に立った。

 戦の口上を終えた将軍に向けてゲレノア軍の兵士たちは視線を集めた。カトケインは万を越える目線を浴びる高揚感を十分に堪能しながら敢えて長い間黙っていた。くしゃみや咳の一つも起こらず、時折、馬の嘶く鳴き声や荒い鼻息が却って沈黙を強調させていた。機が熟したと感じたカトケインは朗々と演説を始めた。

「諸君!敬愛するゲレノア国王の元に仕える、勇敢なる兵士諸君!遂にここまで来た。敵国レノクッス国の豊かなる都市ジョヨーへ。我々はこれからこの都市を攻撃し占領する!ここに至るまで友である兵士を数多く亡くしてきた。諸君は行軍の道すがらで彼らの無念の死に顔を見てきたであろう。しかし、諸君は彼らの尊い犠牲の基にここに立っているのだ。」

 カトケインは一層己の声に張りを持たせるために、胴体を震わせるように腹の底から声を発した。

「死んだ彼らと生きている我らの宿願は戦争に勝利することだ!敵は徹底抗戦してくるだろう。勝利に至るまでは多くの苦難が待ち受けているだろう。だが、我らは勝てる!意思の強い頑強なゲレノア軍の兵士ならば、この戦争に勝利できる!我らの旗をジョヨーの城に掲げ、ジョヨーの豊かな富を奪うのだ!ジョヨーの全ての男を奴隷に堕とし、女は貴賤貧富を問わず残らず売女(ばいた)にしてしまえ!勝鬨と共に吹かれる勝利の角笛を聞こうではないか!!」

「うおおおおおおー!」

 カトケインの演説は東門を囲む兵士全員に響き渡った。カトケインの勝利を求める熱意と貪欲さは兵士一人ひとりに伝わり、彼らは闘志を熱く滾らせた。演説に応えて上がった歓声は人を介して、風に乗ってジョヨーの東門周辺に沸き起こった。殺意と昂揚を生んだ興奮は、大将の正確な文言は伝わらなくとも大きな襞と波を生んでジョヨーをぐるりと囲むゲレノア軍全てに伝搬していった。湧き上がる興奮と闘争心が倍増して数万の人々に続々と伝わっていった。

 カトケインは軍の士気が限界にまで高まったことに満足すると、続けて硬く握った右拳を突き上げて命令を出した。

「投石車!全速前進せよ!」

 勢いよく手が振り下ろされると、それを合図にガレオリが攻撃開始の角笛を吹き上げた。

「ブオー、ブオー、ブオオオー!」

 ガレオリの角笛が鳴らされた。すると、それに呼応してゲレノア軍の各所で続々と角笛が吹かれた。カトケインの指示は角笛を通してジョヨー東側の本陣から真反対の西側まで大波のように伝達していった。角笛の音は地面を響かせて兵士の感情を大きく揺さぶった。人間の根本にある闘争心が濃い色を出してゲレノア軍を突き動かした。ジョヨーの周辺に隈なく並んだ投石車が走り出した。

 人の胸丈に近い高さの大きな四輪を持つ台車が十数人の人力で押されて城壁へと勢いよく動き出した。車輪は土を蹴り上げて大きな砂霧を生んでジョヨーの周辺を一気に曇らせた。

 投石車は周囲を盾と槍を構えた歩兵に守られながら進んで行った。ゲレノア軍の投石車の接近を察知したジョヨー側も投石車の前進を止めるために弓矢を一斉に放つが、台車の前方に展開された高く厚い防御盾に阻まれてゲレノア軍の兵士を射止めることはできなかった。投石車の射程距離に届くと投石車はその場に止まった。

投石腕(とうせきわん)を引けいっ!」

 投石車を命令する指揮官が指示を出すと、石弾を乗せる大きな木の軸が引かれた。投石車の攻撃は十数人による連携行動が大事だったが、投石車に付き従うゲレノア兵は全ての操作を習得してこの戦場に立っていた。

 数人がかりで投石腕が引かれると、植物の筋や動物の腱を練り合わせた弦に高い張力が生まれた。そして投石腕が金具に固定されると、すぐさま別の兵士が投石腕の先端に人の頭ほどの石を乗せていった。強い張力に投石車全体がキリキリと鳴り出した。

「放てぇッ!!」

 指揮者が号令を出すと同時に弦の緊張が解放されて石弾が高速の勢いで空高く放たれた。その投石はジョヨーを囲う全ての投石車で起こった。城壁を包囲する数十基もの投石車からゲレノア軍の数万人もの殺意が込められた石弾が一斉に天高く飛ばされた。

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