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堕天転生戦記  作者: 里原 健
55/80

対面3

拙作を覗いてくださりありがとうございます。

主人公は色々と見られていたようです。

ご意見、ご感想をお待ちしております。

よろしくお願いします。

 ドルビーはガルバが寝入ったのを確かめると応接間へと戻った。スレイとリードが暖炉の前のソファに座って待っていた。夕食に使った食器やテーブル、椅子は家人によって片付けられていた。

「眠ったか?」

 スレイはドルビーに尋ねた。

「はい。深く眠っております。」

「ご苦労。奴をどう思う?リード?」

 スレイは部下に尋ねた。

「あの若さにしては温和で明晰な受け答え。マナーは知らなくとも丁寧に食べる所作を見ると、奴隷にしてはできた人物かと思います。更に、犬と会話できるのは珍重すべき能力です。落雷の話は凄く胡散臭いですが。」

 リードは率直に答えた。

「ドルビーはどう思う?」

 スレイは邸を司る執事に話を振った。

「扱い方に気をつけねばなりませんな。私の左目には、彼の戦闘に関する特性は『紅い』オーラが見えました。」

「『紅い』だと?赤いではなくて?」

「はい。かなり濃い赤い色でした。普通の赤色のオーラを持つ者は戦闘感覚が鋭いのが特徴的です。ですが、あの濃さは今まで見たことはありません。注意すべきです。」

 ドルビーは普段は魔法の片眼鏡をして力を抑えているが、裸眼にして人を見ると、彼の左目は人の特徴を示すオーラを見定めることができた。これまでスレイはこの能力の助けを得て、判断の難しい人材を見定めてきた。

「そうだな。敵ではなく我が直属の奴隷であるのを良しと見るか。」

「ワン!ワン!」《あの人を殺さないで!味方よ!》

 スレイの側に控えていたヴィンデルが吠えだした。

「フフフ、分かったよ、ヴィンデル。お前が奴に惚れているのは良く分かった。」

「ワウワウ!」《そんなんじゃないわ、勘違いしないでよね!》

「それを聞くと却って妬けてしまうな。ともあれリードよ、ガルバは朝に元の部署に送ってやれ。」

「はい。夜明けに起こして食事を与えた後に送り返します。」

「ドルビー、奴に合う鎧を邸から与えてやれ。懐の板切れだけでは心許なかろう。地味なものを選べよ。目立てば敵や他の奴隷に目をつけられるからな」

「はい。畏まりました。」

「それからリード、奴隷兵の装備状態を確認しておけ。ガルバの話だと不足しているようだからな。先日鹵獲した敵の装備を回して、全ての奴隷兵へ行き渡るようにしろ。」

「了解しました。」

 一息ついてからスレイは目を細めた。

「ところで、ジゾーなる人物が話に出たが、我は会いたくなった。どうだ?リード?」

「話のまま信じるならば有望な男かと。聞く限り、奴隷兵の統率や士気には欠かせぬ人物のようです。」

「ドルビーは?」

「そんな有能な者が何故奴隷の身分なのかが怪しいです。調べもせずに信頼なさるのは危険です。」

「そうだな。手駒は欲しいが、寝首をかかれるのは嫌だしな。リード、ガルバも含めて話に出た彼らの生い立ちや戦功などを調べてくれ。先ずは奴隷の記録から、もしあれば元雇い主達の証言もあるといい。」

「はい。明日の夕刻には報告できるようにします。」

「あと………、ドルビー。ムステフの奴隷のルと言う女も調べておいてくれ。軍から探りを入れると面倒が起きるからな、お前にしか頼めん。」

「フッ、ご酔狂ですな。面白そうです。居所と情報を掴んだらご報告します。」

「分かった。両人とも宜しく頼む。」

「「はい。」」

 指令を受けた二人は応接間から出て行った。

 スレイは椅子に深く座りながら思考に耽っていった。暫くそうしていたが、控えていたヴィンデルが寝息を立てたのを見ると静かに席を立った。

「まだまだ人とは分からぬものよな。」

 そう呟いて自分の寝室へと部屋を出て行った。


 ガルバは夜明け前に物音で目覚めた。

 彼は体を起こすとベッドにぼんやり腰掛けた。窓から見える空は薄い紺色を呈していた。

 深く眠れたので眠気はなく、滋養のある食事を摂ったので体の疲れはすっかり取れていた。

 ヒュン!ヒュン!ピュン!

 先程から窓の外で何かが鳴っていた。2階にある部屋の窓から見下ろすと誰かが舞うように剣を降っていた。

 まだ周囲が暗くて顔は見えないが、影の大きさから子供を連想させた。

 ガルバの目からは真剣か木剣かは分からなかったが、鋭い振りを示す高く風を切る音がしていた。その脇には大人が一人いて、側で見守っているようだった。

 コンコンコン。

 部屋の戸にノックが鳴った。

「はい。どうぞ。」

 ガルバが返事をすると戸が開き、スレイの邸の召使いの女が入ってきた。

「お早うございます、ガルバ様。朝食をお持ちいたしました。こちらのテーブルにてお召し上がりください。」

 まだ夜が明けていない薄暗がりである。

 女は部屋の中央にあった机に火をつけた蝋燭を置いて、そこへ朝食を運んできた。

「はい。」

 ガルバは素直に応じると机の前の椅子に座り朝食を摂った。メニューは野菜の入った温かいスープと柔らかなパンだった。

 味は薄めだったが、目覚めて間もない胃袋を優しく起こしてくれる朝食だった。

 食事中は召使いの女がチラチラとガルバを見てきた。

(ハッキリ奴隷の格好していたら気になるよね。)

 ガルバは見られていることを気にしないで食べた。食べ終わると彼女が食器を片付けてくれた。召使いが部屋を出るのと入れ違いに、男の召使いが入ってきた。

「ガルバ様。我らが邸のドルビーより指示を受けております。私の後に着いてきていただけますか。」

 ガルバは男の言うとおりに後に続いて部屋を出た。1階に降りて少し歩くと昨日入った応接間へ案内された。

 そこにはドルビーが待っていた。

「お早うございます、ガルバ様。仕事場へお帰しする前に、主のスレイから贈り物がございます。こちらへどうぞ。」

 彼の指し示す方を見ると、召使いが鎧を一領抱えていた。

 それは黒光りする革の光沢を持ち、控えめながら堅固な様子を持っていた。上半身と腰回りを保護していた。

 ガルバはドルビーの手を借りながら鎧を着た。その鎧は何層にも革を重ねて樹脂で固めていた。見た目よりも軽く丈夫そうな革鎧はガルバの体にフィットしていた。

「スレイ家の倉にあったもので、謂れは分かりませんが機能性はかなり高いものです。懐の木の板の話しを聞いたスレイ様からの『装備の配給』です。お受け取りください。」

「はい!ありがとうございます。こんな素晴らしい鎧を私には勿体なく思います!」

「よく似合っているぞ!ガルバ。」

 ガルバは新たに声を掛けられた方へ見ると、部屋の入口に微笑んで立っているスレイがいた。腰には剣を差しており、先程窓から見た大人の影と重なった。慌ててガルバは指を組んで深く礼をとった。

「恐れながらスレイ様には昨夜の歓待に続いて、鎧をいただきありがとうございました。」

 スレイは数歩ガルバに歩み寄って話しかけてきた。

「昨夜は面白い話しを聞けて良かった。後はリードが貴様を元の部所に送り返す。戦場での手柄を期待する!」

「はい!」

 ガルバは返事をしてからスレイに顔を上げた。

 見るとスレイの影に小さな人影がいた。スレイと同じ髪色をした目つきの鋭い少年であった。年は十歳頃か。こちらは外で剣を振っていた子供だろう。彼はジッとガルバを見たまま何も言葉を発さなかった。

「さあ、ガルバ。私とともに行こう。」

 リードが近づき出口へといざなった。

 ガルバはリードの後に着いていき邸の玄関から外へと出た。そこには昨日と同じ箱馬車が用意されていて二人は客車へ乗り込んだ。すぐに馬車は走り出して邸の門を潜って行った。

 ガルバは馬車に乗せられてジョヨーの街を駆け、二つの城門を潜り北側の城壁近くで止まった。

 そこでガルバとリードは馬車から降りた。

「この先の広間がムステフ隊の奴隷の駐屯場だ。」

「はい。何から何までありがとうございます。」

「スレイ様も仰っていたが、これからも手柄を待っているぞ。」

「はい。頑張ります。」

 ガルバは嬉しかった。この世界に墜ちる前の人生を含めても、家族以外の他人にこれほど歓待されて期待されたことは久方なかったからだ。

 ガルバは腰を低くしながらリードから離れてジゾー達のいる広間へと小走りに向かった。それを見送ったリードは一つ頷いてから馬車に乗り、自分の仕事場へと向かった。

 街の人々は未だ知れぬ戦乱を前にして眠っていた。

 新しい朝が明ける。空が白んでいき、人々の新たな営みが始まろうとしていた。

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よろしくお願いします。


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