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堕天転生戦記  作者: 里原 健
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パルコ川の戦い4

拙作を覗いてくださりありがとうございます。

ゲレノア軍の猛攻で危機に陥ったレノクッス軍。

しかし新たな伏兵が現れた!

どうなる戦争の行方は?

ご意見、ご感想をお聞かせください。

よろしくお願いします。

「ヒュルルルルー!」

 レノクッス軍本隊から放たれた鏑矢を合図に、ゲレノア軍の背後にあった足止めの穴群に隠れていた兵士達が姿を現した。

 鎧を着た兵士達と、土まみれなローブを纏った沢山の魔導兵達であった。

 穴から出てきた兵士達は盾を並べて簡易な陣地を作った。その盾の後ろに魔導兵部隊がズラリと並んだ。

「よいか!手加減なし!魔法を叩き込め!歩きで前進!」

 魔導兵部隊隊長のイーライから指示が出た。魔導兵部隊の兵達は、前に並んで盾を翳す歩兵に守られながら、ゆっくりと歩き始めた。魔導兵部隊は歩きながら自分の最大の攻撃魔法をゲレノア軍にぶつけていた。

「…我が敵を焼き尽くせ………、火玉!」

「熱い!助けてくれ!」

 魔導兵が前に翳した掌から、数個の火の玉が発射されてゲレノア軍兵士2〜3人が火達磨になった。

「…眼前の敵に激しい稲妻を………、電撃!」

「アガガガガアガアガ………。」

 杖から生み出された雷を浴びた敵兵達は激しく痙攣して倒れ二度と立ち上がらなかった。

「…大地よ目覚め起きて貫け………、土槍!」

「ウゲっ!腹をやられた。」

 地面に幾つもの隆起が起きると、隆起が弾け鋭く硬く尖った円錐の土槍が飛び出し敵兵の無防備な足下から胴体を貫いた。

「…聖なる水よ敵の気道を塞いでしまえ………、水縛!」

「もがぁ、ぅぐあ。」

 空中に生じた数個の水の塊が敵兵達の顔にへばりついた。鼻と口から入った水で敵兵は、陸の上で溺れることになって藻掻き苦しみながらバタリと倒れた。

 レノクッス軍の魔法は次々にゲレノア軍兵士を攻撃し死に至らしめた。奇襲作戦の発動は成功した。

 この作戦が上手く行ったことには理由があった。

 まずこの戦の前夜、天気は月明りも差さない曇りの夜だったのを思い出して欲しい。昨夜は真の暗闇に近かった。ゲレノア軍本隊では警戒用に篝火を焚くが光はパルコ川の向こうには届かなかったため、レノクッス軍が掘った穴群近辺はゲレノア軍からは暗くて何も見えなかった。

 その暗い夜の中を、レノクッス軍200人が姿勢を低くして、足止めの穴群を目指して密かに移動した。ほとんど手探りで穴群に辿り着くと、体に合う穴に各々潜り込んだ。穴に入ると汚れた大きな布切れを体全体にかけた。

 更にレノクッス軍はゲレノア軍に作戦がバレない様に、幾つか目眩ましを行った。

 まずは、穴を掘った場所は先日の嵐の夜襲が行われた戦場の近くであり、まだ所々に死体が転がっていた。このことで生きている兵士を死体に擬装出来た。

 次に戦闘の初めのレノクッス軍弓騎馬隊による斉射、それに対してゲレノア軍は重装騎馬隊を投入して対応。レノクッス軍は算を乱して引いて行った。これによりゲレノア側には、敵が奇襲を掛けてくるのが騎馬隊のみであり、見事に追い払ったと印象づけられてしまった。

 そしてゲレノア軍が進行していくと、足止めの穴を横に見た時に、『討って出てきた』レノクッス軍本隊と開戦した。

 本来、殿しんがりは守備の有利な環境、今回で言えば柵の中で戦い機を見て後退する戦法が常道であった。

 しかしレノクッス軍が討って出てきたことにより、ゲレノア軍は戦闘することになった。左方側に穴群があるにも関わらず、意識は前方にのみに捉えられた。特にレノクッス軍指揮官スレイ将軍が前線に立っていたことも、ゲレノア軍の意識を大きく集めることになった。

 最後にゲレノア軍はレノクッス軍が陣地へ後退するのを見て総攻撃をかけた。各部隊、各兵士の行動方針は完全に前方に向かっていた。戦い高揚感に押されながら、ゲレノア軍はレノクッス軍本隊陣地と足止めの穴群の間に密集してしまった。ここでレノクッス軍を打ち破ればゲレノア軍の勝利だった。

 そんな状態において突如、ゲレノア軍の背後にレノクッス軍の魔導兵部隊が現れた。部隊長のイーライに率いれられた彼らは、背中をがら空きにしたゲレノア軍にありったけの魔法で攻撃した。

 魔法を食らったゲレノア軍兵士は何故攻撃を背後から受けるのか分かっていなかった。倒れる兵士の顔は、皆が驚きの表情で固まっていた。

 ゲレノア軍の狼狽を遠目で見たレノクッス軍本隊のスレイ将軍は、我が意を得たりとニンマリ笑った。

「本隊全体!隊列を整え直せ!方向は後方のゲレノア軍本隊とする。態勢ができ次第、総攻めしてゲレノア軍を駆逐する!急げ!」

 スレイは後退していた本隊の向きを、真反対に変えるよう指示を出した。

 本来ならそんな指示では向きを変えている内に敵からの攻撃を受けてしまう。しかし、日頃の訓練と、ゲレノア軍の混乱、また本隊が柵の内側にあるおかげで、ゲレノア軍の攻撃を受けながらも円滑に隊列の変更を完成させた。

 それを見て取ったスレイは剣を掲げて大声で命令を下した。

「レノクッス軍よ!これより我らはゲレノア軍に総攻撃をかける!ここが勝ち負けのきわよ!威勢を上げよ!

『勝って生きて喜びを分かち合おう、兄弟よ!』

 太鼓っ、打ち鳴らせー!」

 ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン

 これまでにないくらい激しく叩かれる太鼓の音。

 レノクッス軍は兵士や奴隷兵、魔導兵が心を一つにありったけの力で攻撃を開始した。対してゲレノア軍は隊列を乱しながらも必死に抵抗してきた。

 戦場は一気に乱戦模様を呈してきた。

「ワンッ!ワンッ!ワンッ!」

 その時、馬上のスレイの側に愛犬のヴィンデルが駆け寄ってきて吠えてきた。

「ハハハッ!お前も暴れたいか?!よし、行け!ヴィンデルよ!青い兵士を殺し回れ!」

「ガウッ!」

 スレイの命令が下された巨大な黒犬は、了解の一鳴きをすると、前線の敵兵に向けて走り出した。

 ヴィンデルは狙った敵兵の足に噛み付くと、ありったけの力で振り回した。その荒々しい体高は人間の腰よりずっと高く、その鼻先から尻尾の先に至るまで闘志が漲っていた。そんな巨大な獣の咬合力は桁違いに強かった。

 噛まれた兵士の足は噛み千切られてしまった。

「うわー!足が!足が!」

「何だコイツ?!化け物(モンスター)か?」

 ゲレノア軍はヴィンデルから距離を取るため一歩下がった。

「ガルルル………!」

 次の兵士に狙いを定めると、ヴィンデルは思いっきり襲い掛かった。

 戦場にまたもや新しい混乱が発生したのだった。

 レノクッス軍の反撃の合図が出る中、戦場でガルバは自軍の死体から槍と盾を拾って戦っていた。

 ドルトンを柵の内側へ運ぶ時に、元々持っていた槍と盾は放り出してしまい失くしてしまったからだ。

 最初はショートソードで対応していたが、ガルバの剣の技量は未だ拙かった。やはりリーチのある槍の方が性に合っているようだった。そこで一旦前線から引っ込んで武器を探して、成仏してくれと祈りながら死体から装備を抜き取った。

 再度前線に戻ると、レノクッス軍の全ての兵士から色様々なオーラが盛んに湧き上がっていた。皆、勝利を信じて迷いなく戦っていた。

 ガルバは劣勢からの逆転勝利を目指して、目の前にいた若い青い兵に槍を力強く突き上げた。ガルバの槍は敵兵士の鎧に覆われてない脇の下を突き刺していた。

「ぐふっ、おのれ!」

 素早くガルバは槍を引き抜くと敵の面に狙って槍を突いた。

「ガシッ!」

 堪らずゲレノア兵士は盾を上げて槍の攻撃を弾いたが、今度は腹部に隙が出来た。

 ガルバは強く早く踏み込み、丸出しの脇腹にある鎧の境目に狙いをつけて攻撃した。

 グシュッ!

 見事に槍が内臓深くにまで届いた。次いでガルバは槍を持つ手を捻って敵兵の腹を抉った。

「ウシュウウウー。」

 胸の息を全て吐き出しながら敵兵は倒れ込んだ。

 ガルバは槍を引き抜くと、盾で身を守りながら次の敵を探した。

 彼は戦いながら強くなっていく実感があった。意気が高く昇るにつれ身体中から力が湧いてきた。

 ガルバは気付かなかったが、彼の赤いオーラが徐々に濃く染まってきていた。ガルバの感覚と身体が更に強くなっていくにつれて、沸き上がるオーラの色が少しずつ濃くなっていった。

(負ける気がしない。次はどいつだ?!)

 ガルバは勇敢に戦い続けていった。

 このように局所戦ではレノクッス軍が優位であったが、しかし戦場の全体から見ると、まだまだゲレノア軍の兵士数が依然レノクッス軍を上回っていた。

 兵士数の有利なゲレノア軍。対して敵を挟み撃ちにして意気軒昂なレノクッス軍。

 正に一進一退であった。

 ゲレノア軍指揮官のトアユムは必死に情報を集めて命令を下し、軍の平静を保とうとした。

「敵の魔導兵部隊は我が軍の右翼後衛と中央後衛を攻めているぞ!右翼と中央の両後衛は連携して敵の魔導兵部隊を迎え撃て!数なら我らが勝っている。左翼の後衛は我ら中央後衛を守るように伝達せよ!」

「ハッ!」

 伝令は素早く後衛へと指示を伝えに走った。

「対して前衛は敵軍の中央に力を注げ!スレイを討ち取るのだ!」

「ハハッ!」

 別の伝令が前線へと走っていった。

「騎馬隊を呼び戻せ!我が軍左翼前衛と当たっている敵の脇を攻めよと伝えろ!」

「ハッ!」

 と側仕えの騎馬兵をゲレノア軍の騎馬隊へと走らせた。

 トアユムは迫りくる敵に向けて鋭く目を向けていた。

(まんまと敵の策にハマってしまったわ!ならば、ここで勝敗を決して見せようぞ!賭けに勝って見せる!)

 暫くすると、レノクッス軍の魔導兵部隊に当てていた後衛が盛り返し始めたとの報告があった。また、馬上から見る限り前衛も混乱から回復して互角に押し合ってきたみたいだった。

 その時、一つの報告が上がった。

「報告!我が軍左手遥か後方に砂塵が発生!騎馬隊によるものです!」

(よし、勝てる!ここで我が軍の重装騎馬隊が参戦すれば勝てるのだ!)

 振り返り目を凝らすが、砂塵のせいでよく見えなかった。トアユムは望遠鏡を取り出して覗き込んだ。

 そこで目に入ったのは赤い革鎧に赤い兜。先頭の騎馬兵が剣に突き刺して掲げているのは、先程ゲレノア軍騎馬隊へと伝令に出した騎馬兵の青い兜の頭だった。

「しまった………!」

 思わず声に出してしまい、驚きの余り手が震え望遠鏡を取り落した。

 遂にレノクッス軍の策が効を成し、ゲレノア軍は三方から攻められることになってしまった。

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