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堕天転生戦記  作者: 里原 健
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パルコ川の戦い3

拙作を覗いてくださりありがとうございます。

戦闘は激しさを増してきます。

ゲレノア軍の激しい攻撃に主人公はどうなる?

ご意見、ご感想をお待ちしております。

 パルコ川西岸、レノクッス軍とゲレノア軍の最初の衝突はレノクッス軍有利に動いた。

 スレイ将軍の『祝福』を受けた兵士達の戦意と攻撃力は凄まじく、ゲレノア軍の攻めを押し返す勢いだった。

 槍に刺されて吹き出す血。その刃を受けながら叩きつける剣。倒れた戦士の背を踏みながら敵兵を斬りつける。

 血と肉の優劣を競いながら前線は、膠着状態となっていた。

 その様をトアユムは冷静に見ていた。

(いくらレノクッス軍が奮戦しても、数の多い我が軍が有利なのは変わらない。)

 次の指示ををいつ出すか考えていると、伝達兵の一報に心が揺らいだ。

「敵の大将が前線にいるだと?」

 伝達兵はトアユムの質問に即答えた。

「ハッ!大将である白兜のスレイは敵軍中央の前線にて槍を振るっている模様!その姿を見てレノクッス軍全体で士気が上がっております!」

 暫く、その報告が信じられなかった。

 殿しんがりは敵の進出を防げば良い部隊。必要以上に大将が出てくることなどあり得なかった。

(スレイめはバカなのか?それとも、全軍が拠点都市のジョヨーに撤退できなくて必死なのか?)

 いずれにせよスレイが肌身を晒しているのは、討ち取る可能性が高まったことだとトアユムは判断した。

 彼は機敏に判断を下した。

「前衛と後衛を交替せよ。後衛に攻め込ませて前衛を休ませよ!角笛を鳴らせ!」

「ブオオオ、ブオオオ!」

 角笛が鳴り各部隊の前衛が下がりだした。

 代わって、後衛部隊が進出してきた。

 これまでの戦闘からレノクッス軍は強力に攻めてきたが、ゲレノア軍後衛部隊はその前衛よりも一段上の部隊だった。

 後衛部隊は装備が鉄製以上の防具中心になっており、奴隷兵を排除して一人一人が経験豊富な戦士で構成されていた。

 ゲレノア軍後衛の兵士とガルバは近接の戦闘を行った。

 ガシッッ!

 ガルバは重い槍の一撃を盾で受け止めた。仕返しに右手の槍を突き出すが、あっさり躱された。

(前の敵より強い!危険だ。)

 新手のゲレノア軍は、まず安々と体を曝さない。盾と鎧で守りながらジワジワと押してきた。そして戦意も高かった。

 それらに対してレノクッス軍も守りを高めながら押し返す形になっていった。そうしてチクチクと槍と剣を刺し合いながら前線は膠着した。


「ハッハー、流石に手強いな!」

 返り血を浴びながらスレイ将軍は馬上にて笑っていた。スレイはレノクッス軍の中央軍にて槍を振るっていた。

 ゲレノア軍の将兵は馬上の武将がレノクッス軍の大将だと気付き、積極的に攻撃を掛けてきた。

 スレイは敵兵の攻撃を躱しつつ、お返しに槍の強烈な一撃を与えていた。

 レノクッス軍は乱戦の中で大将を放っておくわけにもいかず、護衛の騎士や兵士がスレイを守っていた。だがスレイは部下の心配をよそに暴れ回っていた。

「ゲレノア軍の兵士は良い兵士だ!槍の突きも鋭く盾は硬い!戦う意思は明らかで逃げることはない。強いぞ!ハハハハハハッ!」

 歓喜の笑い声を上げながらゲレノア軍兵士を次々に刺し殺す。スレイはギリギリの戦いに喜びを見出す狂人と言っていいだろう。

 ボキリッ!

 40人以上を突き殺して遂に槍が折れた。スレイは棒きれになった槍を捨て、背中のブロードソードを引き抜き、そばのゲレノア軍兵士の頭を叩き割った。

「勇敢なるゲレノア軍の兵士よ、天の召すままに昇天しますように………。さあ!戦いはこれからだ!かかってこい!」

 戦いを好み、敵兵の魂にさえ祈りを捧げる余裕のある大将は平時で見たら特異であったが、生死を賭けた戦場では心強い存在であった。

 事実、スレイの戦い方を見てレノクッス軍は激しく敵軍を圧迫し、武将や兵士は前線を維持していった。

 ゲレノア軍は後衛部隊が疲れた頃に、再度角笛を吹いた。

「ブオーン!ブオーン!ブオーン!」

 ゲレノア軍はたっぷり休んだ前衛と、戦った後衛を交換してきたのだった。

 対してレノクッス軍は朝から戦い続けて体力とスタミナが落ちてきていた。

 いくらスレイの法術で強くなっても、長い時間を戦い続けるのは難しい状況だった。

 明らかにゲレノア軍の優勢が目立ってきた。前線もジワジワとゲレノア軍有利に押し下げられた。

 ガルバは手練れの兵士と戦っていた。敵兵は切っ先鋭い槍を掲げ、ぶ厚いラウンドシールドを使い俊敏な動きでガルバに迫ってきた。

「クソっ!」

 ガルバは相手の攻撃を躱して槍を突き出すと、敵兵の盾が大きく外側に弾かれた。ガルバは相手の体がガラ空きになったと判断して、相手の首元を狙って力強く槍の一撃を繰り出した。しかし、敵兵の見せたその隙は罠だった。

 敵兵は半身になって攻撃を避けて、ガルバの体勢は少し前のめりになってしまった。敵兵はガルバの懐へ大きく一歩踏み込み、瞬時にガルバの鎧のない胸を目掛けて槍を突き刺してきた。間合いを詰めた素早い攻撃に対して、ガルバは盾で守ることが間に合わなかった。

(やられた?!)

 一瞬ガルバは死を意識した。すると彼は()()()()()()()盾と槍を手放した。同時に腰深く膝を曲げて素早く後方に跳び、一気にバク転して敵兵の攻撃を躱したのだ。

「何っ?」

「アレ?」

 ガルバが柔らかく着地すると、両者共、目の前に起きたことに驚いていた。

 敵兵はこんな形で攻撃を躱されたことに、ガルバはこんな動きが急にできたことに。

 一瞬虚を突かれた二人だったが、その刹那に敵兵は横から何者かからの槍の突きを横腹に食らった。

「うわっ!?」

 見れば傍らのドルトンが助勢してくれたのだ。敵兵はそのまま片膝を着いた。

(今だ!)

 ガルバはすぐに判断すると腰のショートソードを抜いて敵兵に駆け寄り、その首に斬りつけた。槍の痛みに襲われた兵士は剣を避けられず、首を刺されて血の動脈を割かれて倒れてしまった。みるみる内に赤い血が地面に広がり敵兵は死んだ。

 ガルバは急いで剣を仕舞い、自分の槍と盾を拾ってドルトンに声を掛けた。

「ありがとう!ドルトン!」

「気にするなっ!グアッ!!」

 見れば今度はドルトンの太腿に槍が刺さっていた。

 ガルバはドルトンを刺した相手を見つけると、槍を相手の顔に突き出した。

「アギャッ!」

 ドルトンに意識が向いていた兵士は不意を突かれて頭に槍を受けた。そのまま痛みのあまり気絶して地面に倒れた。

 しかしドルトンは深手を負い、尻もちをついて動けなくなっていた。

 それを見たガルバは、槍と盾を放り出してドルトンの太腿から槍を抜いた。そのままドルトンを肩に抱え上げた。後方に下がろうとした時に太鼓が鳴った。

「ドンドーン、ドンドーン、ドンドーン、ドンドーン」

 二拍子の音は退却の合図だった。

「どこに退がるんだ?」

 ガルバは慌てたが、その肩に抱えられているドルトンは落ち着いていた。

「先ずは柵のある所まで逃げろ!そこから先は、そこで考えればいい!」

 ガルバはそう言われてレノクッス軍本隊があった柵まで駆け出した。

 他の兵士も合図を聞いて、レノクッス軍の戦場は駆け出して柵まで下がる兵士でいっぱいになった。

 ガルバは男一人抱えるのは重かったが、無我夢中で駆け出した。そして柵の内側までたどり着き、更に奥までドルトンを運んで下ろした。

「痛むか?」

 ガルバはドルトンに尋ねた。

「ああ、動き回るのは無理みたいだな、イテテテ………。」

 傷口は赤黒くドルトンの太腿を抉っていた。血も流れて滴っていた。ガルバは懐の手ぬぐいを取り出して、素早くドルトンの傷に巻いた。

「済まない、今はこんなことしかできない。」

 ガルバは申し訳無さそうに言葉を落とした。

「いや、助かる。こんなことまでしてくれた奴隷兵は、今まで会ったことがない。ありがとう。」

 ドルトンは手を差し出してガルバの手を握ってきた。ドルトンの手は疲労で震えていたが、ありったけの握力で感謝の意を示してきた。

「気にしないでくれ。オレはお前をここに置いて柵に戻る。そこで攻撃してくる敵を防ぐ。お互い生き残ったら、その時に自分の運を称え合おう!『勝って生きて喜びを分かち合おう、兄弟よ!』」

「ああ、そうだな………。」

 ガルバはゆっくり手を離すと、肩を翻して前線の柵へと駆け出していった。

 その後ろ姿を見てドルトンは呟いた。

「もう、一人前の男の顔をしているな、ガルバよ。ふふふ、生意気な。」

 ドルトンはそう言いながら上半身を起こして座って前線を見守った。

 その時に、ゲレノア軍から角笛が鳴った。

「ブオ!ブオ!ブオ!ブオオオー!」

 ゲレノア軍の総攻撃の合図が鳴った。レノクッス軍が本隊の陣地まで後退するのに合わせて、前衛と後衛併せてレノクッス軍本隊を総攻撃しろとの指示だった。

 足止めの穴群を背後に置いていき、ゲレノア軍は総掛かりで進軍した。レノクッス軍はあっという間に後退し、本隊の柵まで下がった。

 ゲレノア軍は勢いに乗り前進した。元々の作戦の目標はレノクッス軍の陣地を奪うことだった。ここまで優位になると、勝利を確信した全軍がレノクッス軍陣地に殺到した。

 そうしてゲレノア軍が破壊の顎を開け、牙を立てた。

 その時、甲高い笛のような音がレノクッス軍本隊から発せられた。

「ヒュルルルルー!」

 一本の鏑矢が戦場の空を突き抜けた。その矢はゲレノア軍の後衛、トアユムの左脇の地面に刺さった。

(………、何だこれは?)

 一瞬、ユアトムは戸惑った。

「ヒュルルルルー!」

 もう一本同じ矢が放たれて、トアユムの右脇の地面に刺さった。

 鏑矢を放った射手を遠目で追うと、そこには白兜を半分近く赤く染め上げた男、スレイが弓を手に三射目を放とうとしていた。

「ヒュルルルルー!」

 三射目は綺麗な放物線を描きながらトアユムの目前の地面に刺さった。

 トアユムは単眼の望遠鏡を懐から取り出して片目で覗くと、スレイは左手で弓を脇に抱え、右手で髭をイジリながら前をじっと見ていた。一瞬トアユムはスレイと目が合った様な気がした。そしてスレイが不敵な笑みを浮かべた。

(ハッ!?見られているのか?)

 トアユムは望遠鏡をさっと離して、嫌な予感のせいで激しくなった動悸を抑えていた。鏑矢の意味を必死に考えた。

(騎馬隊への指示か?それとも別部隊に向けたものなのか?)

 途端に歴戦の戦士トアユムの体中に悪寒が走った。

(この感覚!?まさか?!)

 彼は咄嗟に後ろを振り返る。

 何と誰もいないはずの足止めの穴群から次々に赤い鎧を着た兵士達が立ち上がった。

(しまった!?!)

 トアユムは驚くが後の祭り。穴に隠れていたレノクッス軍兵士がゲレノア軍背後に攻め立てた。しかも、彼らは唯の兵士ではなかった。

 それぞれローブを纏い呪文を唱えながら手を翳す。

「…我が敵を焼き尽くせ………、火玉!」

「…眼前の敵に激しい稲妻を………、電撃!」

「…大地よ目覚め起きて敵を貫け………、土槍!」

「…清き水よ敵の気道を塞いでしまえ………、水縛!」

 レノクッス軍が抱える魔道兵部隊の攻撃魔法がゲレノア軍の背後へ攻撃を仕掛けたのであった。

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