夜襲の褒美1
拙作を覗いてくださりありがとうございます。
今回は主人公に夜襲の褒美が与えられるのですが、それがまた意外な内容でして…。
ご意見、ご感想をお待ちしております。
ガルバは褒美がもらえると聞いてムステフ隊の本陣に足を運んだ。ムステフのテント前にはガルバとチェーザ、ノバスコの他にノイズもいた。この四人が昨夜の奇襲の生き残りだった。
「全員揃ったか?入るぞ。」
四人揃うとノイズが先頭に立ち、テントの入口で両手の指を組みながら声を上げた。
「兵士様から呼ばれた奴隷でございます。」
「入れっ。」
許可が出て奴隷達は入口を潜った。
テントの中にはムステフが奥で椅子に座り、背もたれに体重をかけていた。片手には酒が入ったコップを持っていた。
ムステフの前には木製ののテーブルが置かれていた。上には丸まった書類が散乱し、大きめの陶磁器の瓶が置かれていた。
ムステフの隣には副官のマローズが立っていた。
「膝をつけ。」
マローズが命じると奴隷達は片膝を突いて座った。
それを見てからムステフが気だるそうに話し始めた。
「昨夜はご苦労。上々の戦果だったな。スレイ将軍から貴様らにも褒美を下賜せよと指令が出てな。テントの裏に用意してある。各自受け取るように。マローズ、こ奴らを裏に連れて行け。」
事務的に話し終えると、手を数度横に振って副官を促した。
マローズは奴隷たちを立たせてから、着いてくるように命じた。
全員テントから出るとムステフはおもむろにコップの中身を仰いだ。
「フン、『褒美』が安上がりで済んだな。よかった、よかった。………、それにしても、あの奴隷のまとめ役は死んだみたいだな。使えん奴め。たかが一本の指を落とすこともできぬとはな。まぁ、別の機会を狙うか………。」
何とスペックスを煽ってガルバを襲わせたのはムステフだったのだ。貴重な六本目の指を手に入れたかったが、自分から手を出せずにいたところをスペックスに命じたのだった。
だが失敗に終わった。こうなると死んだ奴隷兵には憐憫の情も湧かない。失敗をポツリと罵りながら、机の上の瓶の酒を注いでまた呑み始めた。
ガルバ達はテント裏に回った。月明かりが寂しく夜を照らすなか、そこには粗末な服を纏った女が四人いた。
皆、近付いてきた男達を値踏みするようにジロジロ眺めていた。
(あれっ?)
女達の中にはルも混じっていた。彼女は女達の後ろに隠れるように立っていた。
マローズは男達を連れて行くと、抑えた声で話し始めた。
「喜べ、お前たちの褒美はこの女達だ。ムステフ様の奴隷女達を一晩貸し与える。他の者達に見つからないように、近くの林の中でことを済ませろ。また、褒美の中身については口外無用とする。以上だ。後は好きにしろ。」
マローズは伝達事項を伝えると、テントの入口に向かった。
ムステフの褒美は奴隷達に自分の奴隷女を抱かせることだった。
スレイ将軍の言った褒美は金や宝、ご馳走を与えることを想定していたが、ムステフは奴隷に身銭を切るのを嫌った。代わりに物のように扱っていた自分の奴隷女達を抱かせることにした。四人の女達は元々、戦場の賄いや細かい雑用のために連れてきていたが、時折ムステフの肉欲を満たす相手にもしていた。今更、女達を奴隷に充てても懐は痛くも痒くもない。寧ろムステフは自分の財産を節約するお得な一手と思っていた。
そうとは知らないガルバは驚いていた。褒美に女を充てがわれるとは思ってなかったからだ。
左右を見ると奴隷の男達は目をギラギラと滾らせていた。よっぽど女に飢えているようだった。
「アンタは俺だ。」
早速チェーザが背の高い細身のブロンドの手を掴んだ。
「じゃあ、俺はアンタだ。」
ノバスコも恰幅の良い褐色黒髪を選んだ。
ガルバは出遅れてしまった。すぐにルの方へ目を向けると、ノイズがルの顎に手を伸ばしていた。そして、まるで物を品定めするように荒く彼女の顔を左右に振った。
(ヤバい、ルを取られる!)
ガルバは行動を起こそうとした時に、ノイズは突き離すように手を離した。
「目つきの悪い女だな。お前はいらねー。オイ、そこの女。お前がこっちに来い。」
ノイズはルの隣にいた中肉のブロンドを手招きした。ブロンドの女は呼ばれるままに前へ進み、ノイズに手首を掴まれた。そして二人は林の方へと歩いて行った。
ガルバとルは残された。どちらからともなく、無言のままに見つめあっていたが、ルから声をかけた。
「………、行く?」
ガルバは彼女の少し小首を傾げる素振りにドキンとした。
「あぁ、アッチでいいか?」
ルに尋ね返すと彼女はコクリと頷いた。
自然とガルバは女の手を取りながら、テント裏から林に向けて歩き出した。
林の中へ進むと、そこは篝火もなく月光のみが木の葉の間を縫って地上を照らしていた。光が当たらないと細かい顔の表情も見えにくかった。
足元をカサコサと落ち葉が鳴った。
ガルバとルは口をきかずに歩いていたので、葉の鳴る音もやけに大きく聞こえた。
ふと人間の荒い息遣いと嬌声が遠くにあった。もう誰かが男女の交わりを始めたようだった。
ガルバは少し気まずく思いながら歩いていると、二人は林の中で木のない開けた空間に出た。倒木があったから、その木が倒れた分だけ夜空が見えるのだろう。
上方は木が無いので夜空は見え、下方には草が生え茂っていた。
雲もない夜空には2つの半月が天に佇んでいた。そう、この世界には月は2つあったが、天の川も2本あった。2筋の銀河は二人の真上の一点で重なっていた。
今夜の空は2つの星と広がる銀河の彩る美しいアートであった。
「月が綺麗だね………。」
ガルバは星の輝きを見てルに話しかけた。月と星の美しさはとてもロマンチックな光景だったからだ。
しかし、
「………、何を言っているの?あんなの只の明かりじゃない。」
眉にしわ寄せて言い放つと、ルはガルバの元を離れて倒木の上に腰掛けた。
「早く済ませましょ。寝てする?立ってする?」
サバサバした口調でガルバに話しかけた。
(こういう経験を何回もしたんだろうか?あっさりしているなぁ………。)
思いも寄らない反応にガルバは拍子抜けしたが、黙って彼女の隣に座った。ルは戸惑いながら不思議そうにガルバの目を見た。
エメラルドグリーン。月明かりの下でも彼女の瞳の色は綺麗だった。
無言で目を見つめていると、フワッと風が通り抜けた。彼女の香りが鼻をくすぐり、動悸が一気に上がった。
(ええい、行ってしまえ!)
ガルバは彼女の肩を抱くと引き寄せて口づけをした。
彼女はキュッと身じろぎして体を硬くしたが、間もなくガルバに体を預けるようになった。
ゆっくりと唇を離すと、少しルの呼吸が浅く早くなっていた。
「………、寝てする?立ってする?」
彼女は同じ質問をした。
「………、寝よう。」
ガルバは装備を急いで解き、上着を脱ぐと地面に置いた。そのままルの手を取り、草の上へと導いた。押し倒そうと両肩を掴むと、ルは小さく呟いた。
「土で汚れるのはイヤ。せめて私の服を下に敷いて………。」
「あぁ、分かった。オレのを敷こう。」
自分のズボンも脱いで衣服を敷き伸べて寝床を作った。その間にルも衣服を脱いで倒木の上に掛けた。
月明かりと星明りの下で、彼女は自分の胸と下腹部を隠すように少し俯いて立っていた。胸元には使役の紋様が見え隠れしていた。細めではあったが、そこには女としての魅力に溢れた裸体があった。
自分の鼓動がうるさい。
ガルバはゆっくりルに近づくと、その体を引き寄せて口づけをした。細い腰に手を回し、体が潰れるくらい抱きしめた。二人の温かい素肌が触れ合い、擦れ合うことで愛おしさが溢れてきた。
そしてガルバはルを自分の衣服の上に横たわらせて向き合った。彼女は目を逸しながら、ガルバの誘導されるがままであった。
(綺麗だ。美しい。)
ガルバは眼下の艶のある体を見て感嘆すると、意を決して体を前に押し出した。
と、その時、彼女の胸に黒い影が乗ってきた。
「はっ?」
「キチキチキチキチ。」
奇怪な鳴き声を出したそれとガルバは目線が真正面に合った。それは、大人が抱えるほどの大きさの、後ろ足が発達したバッタだった。
「キチキチキチキチ。」
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