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堕天転生戦記  作者: 里原 健
34/80

初陣の翌日

 拙作を覗いてくださりありがとうございます。

 死闘の後の安息の時を書きました。

 ご意見、ご感想がありましたらお知らせください。

 よろしくお願いします。

 朝。

 スレイ将軍の本陣にて、レノクッス軍の定例の朝の軍議があった。そこで昨夜の夜襲の報告があった。

 兵士達の報告によると、奇襲部隊は明け方にて敵の兵糧に多数の火をかけた。少なくとも3分の2以上の兵糧に火をかける戦果を上げた。荷馬車にも放火して、荷駄馬も暴れさせて兵糧陣地に大きな混乱を引き起こした。

 詳しい損害の影響は斥候に任せるとして、夜襲部隊の働きは上出来だったと言える。

 昨夜の敵本隊を遠目に見ても、夜空が赤く染まっていた。ゲレノア軍の損害が大きいのがよく見えた。

 報告を聞いたスレイは上機嫌であった。

「フフフッ、諸君らの作戦は見事に上手くいったようだな!素晴らしい!」

 笑いながら口髭を弄っていた。更に彼は部下に問いかけた。

「報告からすると、最初に敵本隊に侵入した兵が大きな働きをしたようだな。その兵は?」

 報告に上がった兵士は姿を固くして回答した。

「それが、侵入に適した奴隷兵を咄嗟に選んだので、どの兵か特定できません。」

 スレイは、それを聞くと不満気に口角を下げたが、すぐに気を直した。

「ならば、全ての兵に褒美が必要だな。各部隊の指揮官は、奴隷兵であろうとも恩賞をケチらずに配ること!良いな?!」

 各指揮官は深く頭を下げた。

「また、ゲレノア軍が渡河した場合には決まった通りに動くこと!忘れるな!」

 スレイは付け加えて指示を下した。そうして軍議は解散となった。


 ガルバは奴隷の溜まり場からムステフ隊の陣地に向かっていた。仲間に生存報告をしたかった。

 陣地に着くとジゾーを見かけた。ジゾーもこっちに気付いて声をかけてきた。

「おおっ、ジゾー!」

「いやー、ガルバ!何とか生き残ったみたいだな?聞いたぞ、昨夜の夜襲は凄かったみたいだな!」

「ああ。ジゾー。死ぬかと思ったけどな。とにかく、ありがとうジゾー。」

 ガルバはジゾーの手を取り心から礼を述べた。

「おい?何だよ、その礼は?」

 ジゾーは訝しげにガルバを見た。

「ビーラーに言ってくれたんだろ?俺が弱すぎるって。それで、ビーラーが鍛えてくれて生き残れたんだ。礼を言うのは当たり前だろ?」

 ジゾーは大笑いしながら答えた。

「ハハハハハハッ!ビーラーには、へなちょこな仲間がいると困るって言っただけだよ!とにかく生き残れたんだ。喜ばねーと!」

 祝いの言葉とともにジゾーはガルバの背中を叩いた。

「ありがとう、心から恩に着る。」

 ガルバは心から告げた。同時にグーッと腹の音が鳴った。

「まあ、メシを食いに行け!話はメシの後だ。」

 ジゾーに背中を押されてガルバは飯場に向かった。まずは腹ごしらえから一日は始まるのだ。

 ガルバは盾と槍をムステフ隊の本陣の傍らに置いてから、いい匂いがする方へと足を向けて行った。

 ガルバが飯場に行くと、あの茶髪の女が配膳していた。いつもと同じで所々煤に汚れていたが、昨日の朝に見かけたままだった。

 相変わらず眉を(しか)めて仕事をしていたが、今朝はやけに美しく見えた。

 ガルバは順番通りに待って、配食をもらってから立ち止まった。

 そして彼女の顔をジッと見た。

「おいっ!早く前に進めよ!」

 後ろの男が苛立ちながら喚いた。

 すぐに、

「うるせぇ!黙っていろ!」

 ガルバは突如叫んだ。それを聞いた後ろの男は声に驚いて黙り込んだ。

「オ、オレの名はガルバ!君の名は?」

 ビシッと目を逸らさずにガルバは女に問いかけた。

 配膳の女は、まさか名前を聞かれると思わなかったのだろう、目を瞬かせていたが名を告げた。

「…ル。」

「ル?」

「只の、『ル』。』

「ル、かぁ!可愛くて良い名前だ!オレの名はガルバ!忘れないでくれ。」

 そう言うとガルバは前に進んで列から離れた。そのまま、飯場の隅で朝食を取ったが、今朝の食事はとても美味しく感じた。


 朝食後はガルバに役割はなく休憩となった。

 大抵の兵ならゴロゴロして体を休めるところだが、ガルバはまっしぐらにビーラーの元へ向かった。

 ちょうどビーラーは槍の穂先を手入れしているところだった。

「ビーラー、ありがとう。アンタの教えで生き残れた。本当にありがとう。」

 ビーラーはチラッとガルバを見ただけで、後は武器の方に意識を向けた。そうして黙ってガルバを傍らに招き入れると静かに諭した。

「生き残れたのは良いことだ。だがな、すぐ次には闘う準備をしなくちゃならない。ここが兵士の大変なところだ。」

 ビーラーはガルバの戦利品の槍をガシッと掴んで、穂先をガルバに見せた。

「自分の槍を見てみろ!血で汚れてすでに刃が丸まっているだろ。今は良くても、次の戦には役に立たない。いつでも刃先を磨け。」

 ビーラーは小さい石片を渡した。細かい砂粒が密に詰まった石だった。

「この石に似た石を探しに行け。見つけたら磨き方を教えてやろう。」

 ガルバはビーラーに言われて石を探しに行った。本隊は広く石を探すのは大変だったが、10個程拾い上げた。ビーラーに拾った石を見せると、1個だけ選んだ。

「よし、研ぎ方を教えてやる。」

 そう言うとビーラーは刃の研摩の仕方を教えた。

 まずは刃に付いた汚れを拭き取る。すでにビーラーは水の入った配食用の椀を用意しており、手拭いを湿らせて拭いていた。

 ガルバも真似て槍の穂先を拭いた。殺した兵士のことを少し思い出したが、こびり付いていた血が無くなり輝きが戻った。

 次に刃の研磨である。凹んだり歪んでしまった刃をそこらの石で叩いたり押し付けたりして元に戻す。ある程度修復できたのなら、砥石を刃に滑らせながら刃を鋭くさせる。

 仮に刃の尖端が欠けた場合は時間をかけて研磨するか、別の槍と取り替えるように教えてもらった。

 最後に再度布で穂先を拭ってお終いである。

「簡易であるが手っ取り早く研磨ができる。鍛冶場があればもっと楽に磨けるがな。この戦場では、これくらいが精一杯だな。」とビーラーに言われた。

 槍の後には、剣も同様に磨きをかけた。

 ガルバは勝った気になって少し浮かれていたのを意識した。ビーラーに言われて、常に次の戦のために準備することを心掛けようと気を引き締めた。

 ガルバは武器の整備を終えると、ビーラーから体を休めるように言われた。

「昨夜から寝てないのだろう?疲れの取り方を覚えると長く動ける。」

 しかしガルバとしては、手に入れたばかりの剣の使い方を教えて欲しかった。

「まだ気分が高まって寝れそうにない。簡単で良いから剣の使い方を教えてくれ。晩メシを分けるから、頼む。」

 頭を下げてビーラーに頼んだ。

「ハ〜。熱心なのは結構だがな、疲れが取れなくて後悔するなよ。」

 溜息混じりにこう言って、ビーラーはガルバに剣の扱いの基礎を教えた。ガルバは軽い素振りをして、斬りつけや突きの攻撃の型、払いと躱し方の防御の型を学んだ。

 一通り教わると、ガルバはビーラーの提案通りに体を休めることにした。奴隷の溜まり場に寝転び昼寝をした。

 陽が傾きかけた頃に目が覚めると、大分スッキリして疲労感はなくなっていた。少しの間ボンヤリしていると、ムステフ隊の奴隷兵に集合がかかった。

 奴隷兵達はムステフの陣地前に集まった。そこではスペックスが戻ってないことが伝えられた。そこで、スペックスを死んだ者として新しい奴隷のまとめ役が選ばれたことが知らされた。

 新しいまとめ役は元ハース隊のまとめ役だったノイズという男だった。昨夜の夜襲にも参加していた。体格はスペックスより少し小柄だったが、偉そうに周りを見るのは同じだった。

 ガルバは今でもスペックスを思い出すと腹が立ってきたが、何食わぬ顔で話を聞いていた。

(スペックスは誰に命令されたのだろう?)

 ガルバの指を持ち帰ると褒美があると言っていた。そんな権限があるのは兵士でも身分ある人間に違いない。身内に敵がいると思うと、改めて気を引き締めた。

 以上、兵士からの連絡が終わると、奴隷達は夕飯をとった。

 飯場ではルが夕飯を配っていた。ガルバは目が合うと笑顔になったが、彼女はちょっと困ったような表情をして目を逸らした。

(こりゃ避けられたな〜。名前を聞いたのはやりすぎだったかな?)

 夕飯を食べ終わると、とっぷり陽が暮れた。

 ガルバは暫く焚き火の周りで座っていると、大きな欠伸が出てきた。早目に寝ようかと考えていた時に、チェーザから肩を掴まれて呼び止められた。

「兵士様から招集だ。昨夜の褒美だとよ。」

 褒美とは良い響きだ。

 ガルバは眠たい体を起こしてチェーザの後について行った。

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