夜襲2
この拙作を覗いてくださりありがとうございます。
主人公は否応なしに槍と剣で戦うことになりました。
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よろしくお願いします。
ガルバ達の奇襲部隊は本隊を離れてパルコ川の上流へと向かった。今夜は一つの月は雲に隠れたが、もう片方の月光は淡く夜を照らしていた。何とか足元を見ながら河原を遡った。
本隊が見えなくなるまで上流を進んだところで、部隊は浅瀬に辿り着いた。この浅瀬は地元の地理に詳しい者しか知られてなかった。
川の流れは急だったが脛くらいまでしか深くなかったので、皆無事に渡りきった。
部隊は遠回りしながら急ぎ足で突き進むと、大きな林へ着いた。
林の中には入らずぐるりと回り込むと、前方遠くに点のような火の明かりが見えてきた。
そのまま、林に沿ってソロソロと音を消して歩いていると、テントや兵士が見えるところまで来た。
ここまで来ると二つ目の月も雲に深く隠れて、辺りは真っ暗になってきた。夜はますます深くなり、視界は悪くなったが身を隠すには都合が良かった。
すると目が良いノバスコが兵士にある事を告げた。
「兵士様、前方の敵陣地から誰かこっちに来ている。」
「何っ?見えないぞ。」
「前方左手、槍を肩に担いで歩いて来ている。」
「むぅ、確かに人影がある。装備はどうだ?見えるか」
「鎧はつけておらず兜を被っているだけ。」
「よし、考えがある。皆、木の後ろに姿を隠せ!」
兵士の指示で全員林の中に入り息を潜めた。
敵陣地から歩いてきた男は、口笛を吹きながら林の中へ入ってきた。
そのまま一本の木の前に立つと、水の流れる音が聞こえた。小用を足しているようだった。
すると指示を出していた兵士が後ろから忍び寄り、油断しきった敵兵に襲いかかった。片手で口を抑えて声を出せなくすると、もう片方の手に握った小刀で相手の胸を刺した。
敵兵の口からくぐもった声が漏れたが、数度刺すことで声はなくなり体から力が抜けた。
兵士は奇襲部隊を素早く呼び寄せると、敵兵から兜を脱がした。そうして部隊の顔をぐるりと見回すと、ガルバを呼び寄せた。
「お前、この敵兵と背格好がよく似ているな。この兜を被って敵本隊に侵入しろ。中で兵糧に火を着けて騒ぎを起こせ。それを合図に我らは、その騒ぎに紛れ込み兵糧を焼き払う。行け!」
「えっ?」
「行け!」
兵士は兜を押し付けてきた。
倒れた敵兵を見ると、黒髪長髪で体格も確かに似ていた。兜を被って顔を隠せばパッと見は同じだった。
有無を言わせない緊迫が言葉に含まれていた。周りの兵士や奴隷兵達も無言で圧力をかけてきた。
ガルバは一瞬身体が固まったが、観念して命令に従った。
「………、分かりました。騒ぎを起こすのに、出来れば壺を2〜3個を分けてもらえるとありがたいのですが。」
「よし、そこのお前ら。壺をこいつに渡せ!」
すぐに3個の壺が渡された。ガルバはそれを受け取ると、懐に入れて兜を被った。
槍を担ぐと、そのままヨロヨロと敵本隊へ歩いて行った。
単独で侵入するプレッシャーからガルバは急に呼吸が荒くなり、息苦しくなった。
(何でオレなんだよ?!ああ、オレが上手くやらないと、仲間が死ぬかもしれない。その前にオレが殺される!)
一歩一歩の足が重い。不安の余り振り返ろうとした時に、前方から声が掛かった。
「オイっ!遅えぞ!持ち場を離れていたらオレが怒られるんだぞ!」
立哨の兵から声を掛けられた。苛立つ声にびっくりしたが、すぐに作り笑顔をした。
「すまねえ、小さい用のつもりが大きくなっちまった。」
「フン!あっちの持ち場に戻れ。」
敵兵は顎を振った。そこへ向けて歩いて行き、他の兵士がするように、篝火が焚かれている隣に立った。
外に向けて暫くの間は警戒するフリを続けていた。そうしてアクビをしてみたり、凝りを解す為に体を動かしながら、兵糧が置かれた陣地の様子を見た。
そこには大きなテントが少なくとも20程あった。傍には荷馬車数台と何頭もの馬が座って寝ていた。恐らくテントと荷馬車の中には兵糧があるのだろう。
警戒は素人目に見ても厳重だった。立哨は遠目に離れて等間隔に並んでおり、加えて歩哨も定期的に見回っていた。
ガルバは侵入はできたが手も足も出せなかった。長い間警備するフリをしていたが、内心は必死に考えていた。
(こりゃ隙がなさすぎだ。どうしたら………。あれ?空が明けてきたのか?)
見上げると右手の闇の向こうが微かに白んできた。この時、ビーラーが言っていた事を思い出した。
『朝が近づくと周りが明るくなり安心してしまうので、見張りが油断しやすくなる。』
(今がチャンスだ!動くぞ!)
静かに周りを見ると、立哨の兵は皆眠そうな顔をして背を丸めていた。歩哨も今通り過ぎたばかりで暫く来ない。誰もガルバを見ていない。
彼はなるべく何気ない風に篝火の脇に置いてあった予備の薪に火を点ける。火が着いた木片を見られないように持ちながら、ゆっくり歩き出した。
ビクビクすれば怪しまれる。
なるべく何気ない風にして陣地の中に入って行った。
陣地の内側は外側の警戒に比べて人はほとんどいなかった。暫く歩き、テントとテントの間の隙間に潜り込んだ。奥に向かってゆっくりと歩き槍を地面に立てると、空いた手で瓶を取り出す。導火の紐に火をかざす。紐に火が着いた。
テントに叩きつけようと思った時に、背後から声を掛けられた。
「おい!何してる?」
首だけ背後に向けると、鎧を着た兵士がすぐ後ろに立っていた。ガルバは火を点けることに意識しすぎたようだ。
「こんな所でコソコソしやがって、怪しい奴!手を上げてこっちに向け!」
言われたガルバは顔を伏せながらも、上目で周りの様子を見ていた。そして、ゆっくりと手を上げた。
「?何を持っている?クソッ、おい!ここに来てくれ!ここに………。」
兵士は剣を抜きながら、顔を外に向けて声を上げた。同時に、ガルバは素早く振り返り兵士に火炎瓶を投げつけた。
瓶は兵士に当たると派手に割れ、中の油が兵士の体に掛かった。同時に火種が油に引火し、兵士は全身青白い火まみれになって火柱が大きく立った。
「ウギャー!!!」
火が着いた兵士は火を消そうと藻掻いたが、ガルバは兵士を蹴りつけてテントにぶつけた。たちまちテントに火が着く。
ガルバは突き立てていた槍を持って、暴れる兵士を数回刺した。狙った首と顔にに刺さり、燃えている兵士は動かなくなった。
「何だ?何だ?」
さっきの兵士の呼び掛けを聞きつけた兵士が2人集まってきた。兵士達は火達磨になっている兵士と、燃え上がるテントに驚いていた。
ガルバは必死な気持ちを込めて兵士達に声を掛けた。
「よく来てくれた。ここに火付けの賊がいたんだ。今倒したところだ!オレはここで火が回らないようにする。お前はボヤが起きたことを周りに知らせてくれ!アンタは水を汲みに行け!急げ!」
「あぁ、分かった。」
機先を制せられ気を呑まれた兵士達は、散り散りになって火事を知らせていた。
ガルバは人を刺し殺した。辺りからの煙と共に肉が焼ける匂いを嗅いでしまった。急に気分が悪くなり、テントの裏に周ってから胃の中を吐き出した。
しかし、作戦は始まったばかりだ。男達の叫び声や怒号が聞こえてきた。ガルバは口元をグイッと拭うと精一杯足を踏み出して、その場を離れていった。
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何とか敵を倒すことができたようです。
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